予算議会となる長野市議会3月定例会が2月24日から3月22日までの日程で開かれます。
議会に先立ち、長野市は16日、総額1,622億7,000万円の2022年度一般会計当初予算案を公表しました。21年度当初予算比で69.9億円、4.5%増で過去3番目の財政規模となります。
国の補正予算を活用し、22年度に予定していた事業を前倒しする3月補正予算案分31億9,000万円とあわせ、22年度の実質的な予算規模は1,654億6,000万円になります。➡3月補正予算案のポイントは別途。
長野市全体の予算規模は、一般会計のほか、国民健康保険や介護保険、市民病院事業債管理など8つの特別会計783億9,000万円(対前年度+27.1億、+3.6%)、上下水道事業など4つの企業会計381億2,000万円(対前年度+△11.0億、△2.8%)で、総額2,787億8,000万円にのぼります。
新年度予算案のポイント
一般会計の特徴は、➊必要な社会保障関係経費を確保したうえで、喫緊の課題である新型コロナ感染症対策や台風災害からの復興に対応、➋市長が掲げる「健幸増進都市」の実現に向け、子育て・教育・福祉、善光寺御開帳を契機としたまちの賑わい創出、スマートシティや行政DXの推進、公共施設の老朽化対策の着実な実施に重点配分、➌市債残高(借金)を減少させ、財政調整基金(貯金)の取り崩しを抑制し、健全財政を維持の3点があげられています。
【主な歳出】では、新型コロナ感染症対策に121.3億、災害復興に9.7億、まちの賑わい創出に76.6億、スマートシティや行政DXに4.2億、公共施設の老朽化対策にとして「枠」を設け35.8億、社会保障関係費(扶助費)に494.4億を見込みます。
【主な歳入】では、基幹収入である市税(個人市民税・法人市民税・固定資産税)が、新型コロナの影響で減収を見込んでいた法人税等が実際には落ち込みがなく、R3年度当初予算に比べ+53.1億の588.7億(R3年度決算見込みに比べ+8.7億)を見込み、国・県支出金359.9億、地方交付税191.7億、市債(借金)138.4億などを見込みます。
市債(借金)は新たに138億4,000万円(前年度比+12.5億)を発行、貯金にあたる財政調整基金は24億7,000万円を取り崩します。新たな借金は抑制し、市債残高は前年度と比べ22.7億減少し1,490億円に。8年ぶりに1,500億円を下回るとされます。また、財政調整基金(貯金)の取り崩しも前年度と比べ1.7億円減少、7年ぶりに25億円以下に抑えたとします。しかし、2022年度末での基金残高は73億円で長野市規模で必要とされる基金の半分以下にまでに落ち込みます。
いずれにせよ、極めて厳しい財政運営が求められることなります。
市長…「新市政始動・創造予算」と命名
初めての当初予算編成となった荻原市長は、記者会見で「予算のテーマ・名前」を問われ、「新市政始動・創造予算」と述べました。「新しい市政がスタートし、ここから未来を創っていく、目指すビジョンである健幸増進都市を創造していく」との想いを込めた命名としました。
「新市長による新たな予算編成」とごく当たり前の意味合いしかないのでは?と思ってしまいます。会派に予算案を説明した財政部長は「予算の特徴を一言で言い表すことは余り意味がないと思うが、あえて言えば、“健幸増進都市を実現する予算”」と述べました。内容的な施策の豊富度はともかく、まだ、この方が特徴を言い表すのではないかと思います。
因みに今年度予算は「希望ある未来につなげる安全・安心予算」がテーマとされていました。抽象的ではありますが、市民の皆さんに税金の使い道の重点は伝わります。税金等が何に使われ、市民生活の向上につながるのかを示すことは重要でしょう。
➡「新市政始動・創造予算」というテーマ・命名は、少なからず、「独りよがり」で「手前みそ」に聞こえてしまいます。市長の掲げる「施策・事業のアップデート、バージョンアップを図る」という視点が、どのように具体化されているのか、より吟味が必要です。
コロナ対策に121億円…真水の感染防止策・支援策は約60億円
喫緊の課題である新型コロナ感染症対策は、ワクチン接種やPCR行政検査等の予防対策と飲食推し店プラチナチケットやプレミアム付商品券などの地域経済活性化・事業者支援策を2本柱にして121.3億円が盛り込まれています。
予防対策では、ワクチン接種に12億(国庫負担)、PCR行政検査や濃厚接触者等の健康観察、入院医療費の公費負担等に5.8億、保育所や学校保健・社会教育施設の感染防止経費約1億、緊急小口資金や総合支援資金の特例貸付の限度額に達している生活困窮者への市独自の自立支援金に7,550万円など計約20億円。
経済活性化では、飲食店支援の「飲食推し店プラチナチケット」(発行総額6億円・7月から)に2億9,400万、プレミアム付商品券(発行総額30億円・11月)に31億7,300万、キャシュレス決済ポイント還元に3億1,300万、感染症対策資金利子補給金4に3,140万など約38億円。
➡総額121億円とされますが、この内、感染症関連資金制度融資預託金に62億を見込んでいますから、真水のコロナ対策約60億円ということになります。
3月補正予算で、地方創生臨時交付金を活用し、地域鉄道や路線バス、タクシーの運行支援に計1億1,500万円余が計上されていますが、新年度における感染拡大時の特別事業者支援は、感染状況を見て判断することになるのでしょう。
➡ともかく、PCR無料検査の拡充や幅広く厚みのある事業者支援に市独自の財源を投入させたいものだと考えます。
まちの賑わい創出に76.6億円…感染防止最優先で社会経済活動とのバランス求めたい
新型コロナ対策で消費喚起による景気刺激策が盛り込まれることに加え、コロナで落ち込んだ市内経済回復の「起爆剤」と位置付ける善光寺御開帳関連事業やまちのにぎわいづくりを重視した予算編成になっていることも大きな特徴です。
善光寺御開帳2022には「日本一の門前町大縁日」の経費1.2億、御開帳時の渋滞対策に1.5億、観光客受け入れ環境整備に7,000万円など3億4,450万円余が投入されます。
➡市長は「感染状況を見ながらではあるが」としつつ、善光寺御開帳を皮切りに、景気刺激策や賑わい創出につながる事業にも力を注ぎ、傷んだ経済の支援を継続したい」と強調します。傷んだ経済の支援はもちろん必要です。感染第6波の収束が見通せない中、また第7波への備えも問われる中、感染予防と社会経済活動のバランスをいかに図るのか、極めて難しい問題といえます。しかし、善光寺御開帳をはじめとする観光事業による賑わい創出の施策展開には、慎重を期したいと考えます。新たな感染拡大を誘引しかねないからです。
➡市長自身も「善光寺御開帳を市の元気を取り戻す起爆剤にしたい」と述べつつ、「市民の皆さんをしっかり守らなければならない一方で、社会経済活動を止めることもできない。非常に厳しい判断を迫られることもあると思う」と記者会見で発言していますが、市民の命と健康、暮らしを最優先に、アクセルの踏み込む過ぎに警戒しつつ、ブレーキの重要性を提唱・指摘していきたいと考えます。
35.8億円…公共施設長寿命化枠を設け重点配分
公共施設等総合管理計画に基づき、公共施設の縮減・長寿命化の取り組みが進みます。施設の老朽化対策の一環で施設を維持し長寿命化を図るため、特別枠として35.8億円を計上。
新年度では、小中学校19施設の大規模改修・中規模改修に17.6億、市営住宅10施設に2.4億、障害福祉センターや3保育園の改修に4.36億、エムウエーブの大規模改修や長野オリスタ等の体育施設6施設分に1.27億、市役所第2庁舎や支所等9施設の改修に8.18億を充当します。
また、1998年の長野冬季五輪施設のうち、エムウェーブ・ビッグハット・ホワイトリング・長野オリンピックスタジアム・アクアウイングの5施設について、6年後の2028年に開かれる「信州やまなみ国民スポーツ大会(国体)」の競技会場に予定されることから、それぞれの施設の大規模改修を本格化させる計画を明らかにしました。
➡冬季五輪施設を含む公共施設の維持管理の問題は、改めて論点整理しますが、特別枠を設け、財政負担の平準化に具体的に着手することは評価するものです。公共施設維持管理基金の今後の在り方を含め、中長期的な見通しについて課題の整理が必要です。
スマートシティや行政DXに4.2億円
長期戦略2040に基づくスマートシティの取り組みや行政DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も新年度予算の柱の一つとなっています。カタカナや英語で、施策の中身がピンと来ないのは私だけではないと思いますが、国をあげて自治体に求める施策の柱となっています。
「スマートシティ」は、一般的に、循環社会をめざし、デジタル技術を活用して都市インフラ・施設や産業、運営業務等を最適化し、企業や生活者の利便性・快適性の向上を目指す都市と解され、広い意味では行政デジタル化も含まれるものとなっています。
具体的には、気候変動に伴う「ゼロカーボン社会の実現」やSDGsの取り組みも、この施策範疇に含まれているのですが、とてもわかりづらいものになっています。
➡新しい産業・企業の創出支援、気候変動対策・ゼロカーボン実現、SDGsの推進というふうに、市政運営の柱、政策の重点目標が分かりやすい予算編成、予算案の特徴の打ち出しが必要なのではないでしょうか。
3月議会の焦点・論点として、今後、豊富化して報告・提起していきたいと思います。
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