神奈川県大和市は、不登校の中学生を支援する「不登校特例校」の分教室を来年4月に開校すると発表した。市立引地台中学の分教室となり、同中の近くに設置する。文部科学相が指定する不登校特例校は、不登校の児童・生徒に配慮した特別な教育課程を編成する学校で、県内の公立校では初の設置となる。

 文科省によると、不登校特例校は全国に公立8校、私立9校の計17校あり、県内には横浜市の私立星槎中学校と星槎高校がある。2017年施行の教育機会確保法で整備を国や自治体の努力義務としている。

 大和市では年間30日以上欠席した中学生が2010年度は183人だったが、19年度は過去最多の238人で増加傾向という。これまで不登校生に対して、不登校生徒支援員の全中学への配置や教育支援教室の設置などで対応してきた。ただ、これらは通っている学校への復帰を視野に入れた支援で、特例校は復帰を目標とせず、引地台中に転籍して分教室で授業を受ける形をとる。

 開設場所は市立柳橋小内の教育研究所理科センターで、6教室を設ける。生徒数は30人で、1学年10人程度。一人ひとりの状況に合わせた学習計画を作り、自立を目指す。登校できない日でも自宅でオンライン学習やカウンセリングを受けられる。事業費は備品や工事費など4300万円で、25日に開会した市議会に関連予算案を提案した。

 市が特例校の設置に動いたのは、1人1台のパソコンやタブレット端末を配備する「GIGAスクール構想」で生徒に端末が配布され、オンライン学習などができる環境が整ったことも背景にあるという。大木哲市長は「時代が後押ししてくれて、受け皿を作ることができる」と話す。市教育委員会の柿本隆夫教育長は「学校に来られなくても端末などを利用して様々な支援を届けたい。学校に来た場合は自分なりに取り組める空間にしていきたい」と語った。(上嶋紀雄)