Well-beingの根幹要素「運動」 | 日経ESG – 新公民連携最前線

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運動と聞くと、「健康のための習慣」という程度に捉えている人が多いかもしれない。しかし、運動は情動の安定や困難に直面した時の自己変容を支え、より良く生きる基盤をつくる。

 新型コロナウイルス禍の中、自宅で座って過ごす時間が長くなった人も多いかもしれません。ところが、4万8000人を対象にした大規模調査において、運動をしていない人は、している人に比べて新型コロナ感染による死亡率が2.5倍高く、ICU(集中治療室)に入る確率が2.25倍高いとの報告もあります。

 運動は、人間のあらゆる機能に影響していると言っても過言ではありません。適応的知性(変化や困難に対応する能力)に影響する要素をひも解くシリーズの3回目。前々回は睡眠前回は食事について見てきましたが、今回は働く世代が軽視しがちな「運動」に焦点を当てましょう。

学力1位の理由は「運動」

 米国イリノイ州ネイパービルの中学校で起きた実話をご紹介します。特に学力の高い学校ではなかったそうですが、1999年、TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)という世界的な学力テストで、この学校の中学2年生が理科で世界1位、数学で6位という成績を取ったのです。

 「ネイパービルの奇跡」と呼ばれて全米の注目を集め、ハーバード大学がその理由の調査に入りました。すると、始業前の生徒に最大心拍数の約80~90%の負荷がかかるランニングを課していたことが分かりました。これが成績向上に影響した根本的な要素であると、調査チームは結論づけています。

 最大心拍数の約80~90%というのは、かなりきつい強度の運動です。理科と数学は、この運動直後の授業科目でした。運動直後の3時間程は、記憶力が20%近く向上することが研究で分かっています。

 実はこうした効果は、高齢者でも確認されています。60~75歳の修道女を対象とした研究(※1)で、週3回20~30分の有酸素運動をしたグループでは、そうでないグループに比べて、3~6カ月後の国語と算数の成績が約25%高く、社交性も高まりました。ただし、運動習慣をやめたところ、約3カ月で元に戻ってしまったそうです。

 これらの知見を踏まえて、丸井グループでも2016年、全社員を対象に集団分析を実施しました(※2)。すると、14年度の健康診断時の調査において、「1回30分の汗をかくような運動を週2回以上、1年以上実施している」群は、15年度の業績評価が統計学的に有意に高く、14年度と比べても有意に上昇していることが分かりました。

※1 修道院の疫学調査は、皆がほぼ同じ生活習慣で暮らしているため、介入要素の影響分析において信頼性が比較的高いと言われる。

※2 正規分布が確認された4160人について重回帰分析を用いて検定した。年齢、職務グレード、性別による偏りを補正し、個別氏名を除いた集団データに基づいて委託先の外部機関が解析した。

丸井グループが役員・管理職を対象に実施しているレジリエンスプログラムの様子。人と組織を活性化する支えとしての運動の知識を学び、1年間かけて習慣化する。写真は2019年撮影<br /><span class=(写真:鈴木 愛子)” height=”367″ src=”https://cdn-project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00014/110100013/01.jpg?__scale=w:550,h:367&_sh=090bf030ae” width=”550″>

丸井グループが役員・管理職を対象に実施しているレジリエンスプログラムの様子。人と組織を活性化する支えとしての運動の知識を学び、1年間かけて習慣化する。写真は2019年撮影

(写真:鈴木 愛子)

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