小学校高学年の教科担任制導入や35人学級の小学3年生への適用に伴う教員定数の改善などを盛り込んだ2022年度予算案が2月22日、衆議院本会議で採決され、自民・公明両党と野党の国民民主党の賛成多数で可決された。一般会計総額107兆5964億円で、このうち文科省関連は総額5兆2818億円。予算案は今後、参議院で審議されるが、衆議院の優越を定めた憲法の規定により、3月23日までの成立が確定した。
政権運営の柱となる当初予算案に、野党が賛成するのは異例。国民民主党の玉木雄一郎代表は賛成討論を行い、「予算案は100点満点ではない」としながらも、「コロナ禍で早期成立が求められていること、賃上げや人づくりを重視する方向性が同じこと、ガソリン価格高騰の際に1リットル当たり約25円を減税できる『トリガー条項』の発動について、岸田文雄首相が検討を明言したこと」を賛成の理由に挙げた。
これに先立ち、末松信介文科相は2月22日の閣議後会見で、参議院での予算審議について、「充実した審議となるよう、引き続き丁寧に慎重に、しっかりと対応していきたい。文科省が担う行政分野は、わが国の未来を切り開くための中核になる。衆議院での審議では『未来への先行投資』『人への投資』という言葉がたくさん使われていた。こういうことを念頭に置きたい」と述べた。
衆院を通過した22年度予算案には、新型コロナウイルス対策や、看護や介護、幼稚園や保育所などの現場で働く人たちの賃上げに必要な費用などが盛り込まれている。一般会計の総額107兆5964億円は、当初予算として過去最大の規模となった。
学校関連の予算として、文科省はまず「子供へのサポートの強化」を強調している。いじめ、不登校、自殺者数の増加への対応として、スクールカウンセラー(SC)を全ての公立小中学校(2万7500校)に週1回4時間配置。さらに、より支援が必要な学校に週1回8時間(終日)以上の配置を可能とする重点配置を、21年度の3600校から22年度は5400校に増やす。また、虐待対策やヤングケアラーへの支援も念頭に、スクールソーシャルワーカー(SSW)も全ての公立中学校区(1万校区)に週1回3時間配置した上で、週2回や週3回の配置を可能とする重点配置を同じく3900校から6900校に増やす。こうした重点配置で、過去最高となる77億円を計上した。
次にポイントとして挙げているのが、教職員の働き方改革の推進を念頭に置いた教職員定数の改善や、教員への支援体制の充実。文科省は「教師の指導環境が変わる」とアピールしている。4月にスタートする小学校高学年の教科担任制では、外国語・理科・算数・体育の専科指導を行うため、4年間で3800人を改善することで財務当局と一致しており、その初年度分として950人を加配定数として計上した。文科省では、小学校高学年の担当教員の授業持ちコマ数は、この4年間の措置を通じて、週3.5コマ程度少なくなると算定している。今年度に始まった小学校全学年の35人学級に向けた計画的な整備では、22年度に小学3年生を実施。このために教職員定数の基礎定数を3290人改善する。
教員への支援体制では、スクール・サポート・スタッフから名称を変更した教育業務支援員を21年度の9600人から22年度は1万650人に拡充。中学校の部活動支援員も、21年度の1万800人から22年度には1万1250人に増やす。
学校のICT環境整備では、デジタル教科書の実証事業を22年度中に全国全ての公立小中学校に広げる。実証事業は少なくとも1教科でデジタル教科書を使うもので、21年度に全国の小中学校のほぼ4割で実現している。これを全ての小中学校に広げるため、21年度補正予算の65億円に加え、22年度予算案には前年度比1億円増の23億円を計上した。
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