中学校で理科を教えながら、2年生の担任を務めているSさん。

 昨年4月に初めて教壇に立った時、生徒たちから「先生」と呼ばれて驚いた。

 「大学を卒業したばかりの自分も、黒板の前に立てば無条件で先生なんだ」と自覚したから。

 教師になってわかったことは、その業務の幅広さだ。

 毎日の授業やその準備、教材研究にテスト作成。

 登校指導、日誌記入、提出物の確認、欠席や遅刻の連絡が来ていない家庭への確認。

 時期によっては指導要録や通知表の作成もある。

 どれから手をつけてよいかわからない中、「教育のプロ」としてたくさんのことを求められた。

    ◇

 教師になって10カ月が経った今年1月末。

 「自分のやってきたことは間違いじゃなかったんだ」と思えた出来事があった。

 その日の給食は焼きそばパンで、窓側の席の女子生徒が焼きそばをこぼした拍子に、箸を落としてしまった。

 それに気づいた前の席の男子が、さっとティッシュを差し出し、代わりの箸を取りに行くのが見えた。

 自分が顧問をしている部活のメンバーで、いつも周りに気を配ってくれる男子生徒。

 「食べてる途中だったのに、素敵な行動だね」と褒めたら、思いも寄らぬ言葉が返ってきた。

 「でも、これって……先生が…

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