【入試ルポ】志願倍率2倍、新たにプログラミング入試も…箕面自由学園 – 読売新聞

花のつくりとはたらき

 関西2府4県の私立中学入試が1月15日に解禁され、箕面自由学園中学校・高等学校(大阪府豊中市)でもこの日、午前には同校を専願とする「MJG入試」と「2教科型入試」、午後には「2教科-選択型入試」が実施された。全体で50人の募集枠に対し、103人の志願者があり、志願倍率は約2倍となった。「プログラミング」を試験教科に取り入れたユニークな「MJG-S」入試の様子を中心に、この日の入試風景を紹介する。

体調崩した受験生の姿はなく、午前午後で三つの入試

校門から試験会場へと向かう受験生と保護者

 この日は前日までの強い寒気が弱まり、穏やかな朝となった。午前8時から始まった受験生の受け付けもスムーズに進み、試験開始20分前の8時40分には受験生の入場もほぼ完了した。コロナ禍のため、「密」となる恐れのある保護者控室は前年同様設けられず、保護者たちは受付や校門の前で受験生を送り出すと、エールを送って学校を後にした。

 受付では、田中良樹校長を始め、多くの教職員が出迎えに立っていて、受験生の中には「おはようございます」と教職員にあいさつする元気のいい姿も見られた。教職員たちは、受験生に寄り添うように丁寧に、検温や消毒の声掛けや試験教室への誘導などにあたり、受験生たちは落ち着いた様子でそれぞれの試験会場へ向かっていた。なお、受付には保健の先生も待機していたが、この日は体調を崩した受験生の姿はなく、特段の対応は発生しなかったという。

 この日は、午前に「MJG入試(専願のみ)」と「2教科型入試」、午後に「2教科-選択型入試」が行われ、受験生たちは、それぞれ午前9時、午後3時から2教科の試験に取り組んだ。

プログラミングを取り入れたユニークな「MJG‐S」入試

MJG‐S入試で、作成したゲームについて試験中に意見交換する受験生たち

 同校は3年前から「理数探究コース」と「グローバルコース」の2コース制を取っており、受験生はあらかじめ、どちらのコースを志望するか選択して出願する。

 「2教科型入試」はオーソドックスに国語と算数(各50分・100点満点)。「2教科-選択型入試」では、学校の指定する2教科(各50分・100点満点)の組み合わせから選ぶ。どちらの入試も高得点だったほうの教科の得点を2倍にして合計300点満点で判定する。

 「MJG入試」は、志望するコースと試験内容によってさらに三つに分かれ、「グローバルコース」の選択者は、国語及び口頭試問が課される「MJG-J」と、英語及び英語の口頭試問が課される「MJG-E」のいずれかを受験する。「理数探究コース」の選択者は、「基礎学力テスト」と「学習力テスト」が課される「MJG-S」という入試方式を受験する。いずれの入試方式も試験結果に、志望理由や小学校での活動についての「書類」を加味して総合的に判定する。

 「MJG‐S」の「基礎学力テスト」は計算力と
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力を測るものだが、ユニークなのは「学習力テスト」で、Scratch(スクラッチ)というプログラミング教材を使ってゲームを作成するワークショップを行う。その作業を通して、授業を聞く態度(集中力・理解力)や、自分で考える力(思考力)、仲間と協働する力(コミュニケーション力)、伝える力(表現力)を見るという。2021年度募集までは、「理科」「算数」の2教科だったが、今回からプログラミングに変更した。

 この日の取材では「MJG‐S」の「学習力テスト」を見ることができた。この試験に挑んだ受験生は9人。まず、驚いたのは、数十台のパソコンが並ぶ試験教室にBGMが流れていることだ。受験生がリラックスして普段通りの力を発揮できるようにする工夫だという。さらに意外だったのは、受験生たちが、試験監督の先生に分からないところを聞いたり、他の受験生と話し合ったりしながら、ゲームをプログラミングしていく光景だ。こうした行動が許されるのは、コミュニケーション力を見ることもこのテストの狙いだからだという。

 プログラミングが終了すると、それぞれ自分がつくったゲームについてプレゼンテーションを行う。受験生たちは、この日の入試に先立つ11月13日に、同校が実施したオープンキャンパスでの入試体験で、同様のゲーム作成に取り組んでいる。この時は数人のグループでの発表だったが、この日の入試本番では、一人一人が全員の前でプレゼンテーションを行った。入試体験の時より、成長が見られた受験生もいたそうだ。なお、事前の入試体験は「MJG‐S」の出願条件ではなく、入試体験に参加しなくても受験できる。

 大手学習塾「日能研関西」の森永直樹取締役は、「入試選抜方法として、教科の学力以外を重視する選抜試験は、どちらかというと自己推薦入試が主流で、探究型の入試は塾が対策を取りにくい。箕面自由学園のMJG‐Sのような入試形態は関西ではかなり珍しいです。他校にはない、かなりユニークな入試といえるでしょう」と話す。

ダイヤの原石を選ぶためのMJG入試

「自分の好きなこと、今やりたいことに勇気をもって取り組める。そうした生徒を育てたい」と話す田中校長

 田中校長は、「MJG入試は2019年のコース制導入と同時に開始しました。理数探究コースもグローバルコースも生徒自身の学習への興味を尊重し、少人数クラスでのきめ細かな指導を心がけています。両コースを引っ張るリーダーとなる『ダイヤモンドの原石』を選ぶために、入試形態も『とがらせよう』と考えたのがこの入試です」と話す。

 この日は、「理数探究コース」の募集枠20人に対して58人、「グローバルコース」の枠30人に対して45人と計103人の志願者があった。そのうち三つのMJG入試の志願者は27人で、受験者27人、合格者21人となっている。特に「MJG-S」の志願者数は前年度の6人から9人に増加し、5人が合格と、注目の高まりを感じさせる。

 田中校長によると、これまでにMJG入試で入学した生徒は、中学校生活でも入試の狙い通り、リーダーとして活躍しているケースが目立つという。「生徒会の役員として他の生徒をまとめたり、外部のスピーチコンテストに参加したり、さまざまな活動に積極的に取り組んでくれています。また、クラシックギターが好きで、大人も聞きほれてしまう演奏をする生徒もいます」

 「自分の好きなこと、今やりたいことに勇気をもって取り組める。そうした生徒を育てたいと考えています。それに共感できる生徒に入学してもらいたいですね」と、田中校長は、同校を目指す受験生に対してメッセージを送った。

 (文・写真:石上元)

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