通学荷物 中学生は平均10キロ超 小学校低学年は体重の4分の1 重さ「負担」が9割に – 熊本日日新聞

 児童生徒の通学荷物に関し、熊日の「SNSこちら編集局」(S編)の公式LINEで重さを量るなどのアンケートを実施したところ、平均で小学生は5キロ、中学生は10キロを超えた。ほぼ9割が「負担」と過重感を訴えており、大型化している教科書を学校に置いて帰る「置き勉」などの改善を求める声も相次いだ。

 S編では「通学時の荷物が重すぎる」との複数の声を受けて、1~25日にアンケートを実施。熊本県内中心に277人が回答した。

 重さの平均は、小学生の低学年が5・6キロ、高学年が5・3キロ、中学生が10・9キロ、高校生では10・1キロだった。荷物の個数は全年代で2個が最も多かった。

 国立病院機構熊本医療センター整形外科の橋本伸朗副院長(61)によると、適正な荷物の重さは体重の10~15%程度といわれ「子どもでも継続的に負担がかかることで腰痛などを発症する可能性がある」と指摘する。

 学校保健統計調査によると、小学校低学年に当たる6~8歳の平均体重は男子21・4~27・3キロ、女子20・9~26・5キロ。同年代だけを見ても、回答結果は体重の20~26%に相当し、過度な負担となっているようだ。

 実際、荷物の負担感について「負担」(68%)、「どちらかといえば負担」(21%)との回答は計89%。自由意見でも「後ろにひっくりかえることが多々ある」(多良木町・小学校低学年女児の保護者)、「肩が凝るし、痛くなる」(熊本市・女子中学生)などの訴えがあった。

 荷物の過重対策でもある「置き勉」について、熊日の取材に県内14市は「容認」としたが、具体的な対応は学校に一任されている。

 保護者の声は「禁止されている」(菊池市・男子中学生)、「チェックが不定期にあり、没収される」(八代市・男子中学生)、「認められているが、棚に制約があり実際は持って帰らざるを得ない」(熊本市・女子中学生)など、学校の判断や実態によって温度差があるようだ。

 一方、学校の指導とは別の要因もあるようで、保護者から「家庭学習で必要になるかもと不安で持ち帰っている」(八代市・男子中学生)、「時間割をせず全教科入っている」(宇土市・小学校高学年女児)との声もあった。(原大祐、福井一基)

■「置き勉」容認 教育現場に変化も

 終業式を翌日に控えた23日の放課後の東部中(熊本市)。教室入り口近くに「学校に置いてよいものリスト」がはられていた。主要5教科のうち理科、社会、英語は資料集やファイルなど、国語と数学は教科書含む全てが対象となっている。瑞穂達也校長は「今年は『置き勉』を認める対象を増やした。うちは多い方ではないでしょうか」と説明した。

 学校に教科書などを置いて帰る「置き勉」について、文部科学省は2018年9月の通知で、児童生徒の携行品の過重対策として例示。国の事実上の「容認」姿勢を受けて、熊本県内でも広く呼びかけられるようになった。

 市中学校生徒指導委員会会長も務める瑞穂校長によると、過去に「置き勉」が禁止された背景には生徒指導上の側面もあった。「学校が荒れていた時代はかばんすら持ってこず、他人の教科書を勝手に使ったり、落書きしたりする生徒もいた。それなら一律に持って帰らせようとなったのではないか」と振り返る。

 同校は本年度、学年ごとでばらばらだった「置き勉」ルールを教科ごとに話し合って決めたという。校内研修研究部長の柳邊桂三教諭は「時間割を確認せず教科書などを忘れてくる生徒もいる。学校に置いていた方が授業が成り立つという側面はある」と話す。

 「置き勉」を教育委員会主導でルール化した自治体もある。愛知県犬山市は18年6月、教育長名で「思い切った提案」として、教科書や副教材を原則、学校保管とすることを各校長に通達した。

 学校現場の一部に抵抗もあったが「子どもの健康を第一に考えて一律の対応を進めた」と同市教委。保管場所として、教室に簡易ロッカーも配置した。対策前後で荷物を量ったところ、小学校で17%、中学校で30%軽くなったという。

 熊本県内でも、家庭学習を理由に教科書などの持ち帰りを促していた考え方に、変化が生まれている。「置き勉」容認派の熊本市内の中学女性教諭は「予習復習が全て必要だとは思わない。発展的・補充的な学習のため、子どもが自分で考えて判断することが重要。それに対して、『本当にそれでいいのか』と問い掛けるのが教師の役割だ」と強調する。

 熊本市では、11月から児童生徒への一人一台のタブレット端末配備も始まった。持ち帰りが必要で「荷物がさらに重くなった」との声も多数あるが、市教育センターは「配備に合わせ、不要な教材を置いて帰るよう学校現場に求めている」と説明。国もデジタル教科書の普及を進めており「将来的にはタブレットでの宿題や予習復習がさらに進み、荷物の負担軽減にも貢献できるだろう」と見通した。(福井一基、原大祐)

学校に置いて帰っていい教材が並ぶ東部中の教室の棚。学期末を迎えたため、生徒たちが少しずつ持って帰り、数は少なくなっていた=23日、熊本市

【教科書の大型化】 教科書協会によると、「脱ゆとり」で学習量が増え、小学1~6年生の教科書のページ数合計は8520ページ(2020年度)、中学1~3年は合計6684ページ(21年度)と、「ゆとり教育」だった05、06年度からそれぞれ75・4%、50・9%増加。B5判中心だった大きさも、半分強がA4判とAB判に。荷物が重くなった一因にもなっている。近年は道徳に続き、小学校英語の教科化もあり、教科数自体も増えている。

◇アンケートに寄せられた意見の一部は、「クロスくまもと」で公開しています。


https://crosskumamoto.jp/article/19193/

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