EXILE TETSUYA(40)が学長を務めるEXPG高等学院が、開校して1年半を迎えた。同校は、LDH JAPANのダンススクール「EXPG STUDIO」が通信制学校法人「角川ドワンゴ学園N高等学校」と提携して高卒資格が取得できるという、業界でも斬新な取り組みとして注目を集めている。現役パフォーマーでもあるTETSUYAは、アーティストだけでなく踊れる東大生や医師、政治家など多彩な人材育成を目指し、日々奮闘している。(取材・構成=畑中 祐司)
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TETSUYAが「学長」になってから、まもなく1年半になる。
「何とか今日まで来られたなというのが現状。無事に開校できたけど、コロナ禍で、やはり予定していたものとは違った。でも、理想としていた学校像、生徒への接し方、カリキュラムの作り方とか、そういうところはものすごく順調。いいものを作り上げてこられたと手応えを感じています」
ダンスを本格的に学びながら高校卒業資格が取得できるEXPG高等学院。TETSUYAも特別講師として“教壇”に立ち、学長自らが今の地位を築き上げた経験を伝える。
「夢のかなえ方の講義だったり、夢の広げ方、自分の可能性の見つけ方を」
実際に夢をつかんだプロセスは、最高の教材でもある。EXILE HIRO(52)も一度、TETSUYAと対談という形で教べんを振るった。ほかにAKIRA(40)や白濱亜嵐(28)らGENERATIONSメンバーらが参加。学生とともにアーティストも成長できる場を創り出そうとしている。
「僕の中で一つ、目標にしていたのは、LDHアーティスト全員が“高校の先生”になれることを証明すること。ゲストスピーカーとして、もう何人も僕と一緒に特別講義を行って、すごく理想としていたものに近付けている」
09年のEXILE加入前は、高等学院の基盤となったLDHのエンターテイナー育成スクール「EXPG STUDIO」のインストラクターだった。
「自分が初めてレッスンを受け持ったとき、すごく楽しかったというか、この感じ好きだと思った」
13年に自身が講師を務める日本初のダンス教育番組「Eダンスアカデミー」(Eテレ)がスタート。14年、さらに「教育」への道を加速させる出会いがあった。オランダの名門サッカークラブ・アヤックスでセミナーを受講。そこで元オランダ代表FWデニス・ベルカンプ(52)の姿に触れた。
「アヤックスで育って(英プレミアリーグのアーセナルで)スーパースターになった後に『すべてを注ぎ込むために』とアヤックスに帰ってきた。『残りの人生をここで過ごしているんだ』という話にしびれた」
17年に早大大学院スポーツ科学研究科の社会人修士課程1年制に入学。ダンスを学び直し、学長として“古巣”に帰ってきた。
「自分もEXPGに対して、ベルカンプのような愛がもてたらいい」
EXILE TRIBEの“三男坊”GENERATIONSは、グループ全員がEXPG出身。他にも多くの逸材を輩出してきた。
「その後輩たちもEXPGに還元できるような“循環システム”を今後作れたら、EXILEは多分、100年先まで続いていくんじゃないかというのは、そこで学びました」
高等学院では、ダンスをひとつのきっかけに多彩な人材を育てようとしている。
「僕らがやる学校なので、最初はアーティストになりたいとか、そういう夢が一番多いけど『トレーナーになるのが夢という夢も持ちました』という学生もいる。学生たちに最初に僕が伝えたことは『アーティスト以外にも夢を持っていいんだよ』『自分の可能性をもっと見つけようよ』と。どんどん、みんなの夢が増えている感じがします」
インストラクターとして、挫折する人を多く目にしてきた経験も、今生きる。
「夢がかなわないから、スクールを辞めてダンスもやめる人もいた。ダンスって、やめるものじゃない。踊れるアパレルの人がいても、踊れる照明さん、踊れるカメラマンがいてもいい。エンターテインメント業界にはたくさんの仕事がある。“踊れる〇〇”という人を育てていきたい」
ダンスは12年から中学校の保健体育で必修となり、今年、世界初のプロダンスリーグ「Dリーグ」が誕生。24年パリ五輪でブレイクダンス(ブレイキン)の初採用が決まるなど、ダンスを取り巻く環境は激変している。
「もちろんアーティスト、オリンピアンも育てたいけど、これから高等学院の中から踊れる東大生が出てくるかもしれない。踊るお医者さん、踊る政治家だって何でもいい。夢を持ったダンサーがいて、ダンスの心を持ちながら、いろんな業界で輝く人たちを輩出するのが、この学校での夢」
学長という肩書きも、今はしっくりくる。
「この前、生徒がすごくナチュラルに『あ、先生』って言ってくれた。そのときは、すごく胸キュンしました(笑い)。自然に『先生』と思ってくれているんだとうれしかった。とはいえ、教員免許を持っているわけじゃない。『教育者』とは言えないけど、自分のできることを精いっぱい伝えていきたい」
“踊れる学長”の道のりは始まったばかり。
「自分の中では、いつか『EXILEユニバーシティー』のような大学みたいなものを作れたらいいな…みたいな夢をいまだに持っている。夢を壮大に持ちながら進んでいけたら」
27日にEXILEがデビュー20年
〇…TETSUYAが現役パフォーマーとして在籍するEXILEは、27日にデビュー20周年を迎える。同日には「EXILE20周年メモリアルMUSIC&MOVIE CARD」を発売。20年間で発表してきた200曲以上の楽曲からメンバー14人が厳選した、それぞれのプレイリスト5曲や特別映像を収録した大作として送り出す。
◆EXILE TETSUYA(エグザイル・テツヤ)
▼生まれ 1981年2月18日、神奈川・横須賀市生まれ。40歳。
▼パフォーマー 2007年に二代目J Soul Brothersのメンバー、09年にEXILE加入。現在はEXILE THE SECONDとしても活躍。
▼踊るコーヒー屋さん 13年にコーヒーマイスターの資格を取得。15年「AMAZING COFFEE」1号店を東京・中目黒にオープン(現在は大阪含む5店舗)。
▼学歴 18年に修了した早大大学院スポーツ科学研究科では青山学院大陸上競技部の原晋監督らと同期。修士論文で優秀論文賞を受賞。論文を映像化したダンス教材「中学校の現代的なリズムのダンス授業」はアーティスト監修として初めて「文部科学省選定」に認定された。
◆EXPG(EXILEプロフェッショナル・ジム) 2003年10月に東京校が開校。09年9月に台北校、14年9月に米ニューヨーク校、19年1月に米ロサンゼルス校が開校。国内12校、海外3校を展開。EXPG高等学院は東京、大阪、名古屋、福岡の4校。在校生は1期生110人、2期生130人。
◆N高等学校 インターネットと通信制高校の制度を活用し、2016年4月に創設。ネットコースと通学コース(全国19キャンパス=来年4月に33キャンパスに拡大)がある。20年度は4人の東大合格者が誕生。
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