大学入学共通テスト、「2年目は難化」のジンクスはいかに – 日経ビジネスオンライン

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前回は、コロナ禍の影響が残りそうな2022年の入試戦略を取り上げた。今回のテーマは、大学入試センター試験に代わり、21年入試から新たに始まった大学入学共通テスト。改革の柱だった国語・数学の記述式と英語民間試験の導入が頓挫し、コロナ禍も重なって受験生を混乱させた。それでも初めての共通テストは、教育関係者の予想に反して高い平均点が出た。その結果から、22年の共通テストでは問題がレベルアップして難化するのではないかと見られている。21年の結果も踏まえながら、22年の動向を探ってみたい。

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 2021年に始まった大学入学共通テストには、現在の高校3年生も「振り回された」という印象を持っているのではないだろうか。大学入試改革の一環として、それまでの大学入試センター試験に代わって導入されたが、改革の柱ともいえる試験の内容が19年12月、つまり高校1年生のときの冬になって変更されたからだ。

 1つは英語の民間試験の導入について。民間の検定試験を課すことに対しては、受験生の経済格差や地方での試験会場の少なさなどが問題視されていた。そこに萩生田光一文部科学大臣が19年10月、テレビ番組で「身の丈に合わせてがんばって」と発言したことから批判も高まり、同年12月に見送りが決まった。20年は多くの民間の検定試験がコロナ禍で実施を見送っていて、もしも導入が強行されていたら、さらなる混乱に陥っていただろう。

大学入学共通テストの国語と数学への記述式問題導入の見送りを表明する萩生田光一文部科学大臣(2019年12月)(写真:共同通信)

 もう1つは国語と数学の記述式問題の導入だ。採点を民間業者に委託することになり、ベネッセグループ傘下の学力評価研究機構(東京・新宿)が、24年3月末までの契約で、約61億6000万円で落札していた。しかし、アルバイトによる採点が想定されたため、採点の公平性への疑問が高まり、こちらも19年12月に導入見送りが決まった。21年入試の受験生は、国に振り回された形だ。

 こうした曲折を経て、新型コロナウイルスの感染拡大が重なる中で、21年1月、初めての大学入学共通テストが実施された。思考力、判断力、表現力を重視するという改革方針と、プレテストの問題傾向などから、教育関係者の間ではセンター試験よりも難化し、平均点は前年よりも下がるのではないかと予想されていた。

 ところが、ふたを開けてみると、教科によっては問題量が増えるなど、確かに難化はしたものの、国語・数学・英語の合計の平均点は前年のセンター試験を上回った。主要科目のうちほぼ半数で前年を上回る「予想外」と言える結果だった。

英数で問題量増加も平均点はさほど下がらず

 教科別に見てみよう。最も傾向が変わったのは英語だ。センター試験の「筆記」が「リーディング」に変わり、配点が200点から100点になった。発音・アクセント・語句整序を問う問題がなくなって読解問題だけになり、英文の分量が1000語以上増加した。平均点は100点満点換算で58.80点。前年比+0.65点だった。

 一方、リスニングは配点が50点から100点になり、問題数が増えて読み上げ音声が400語程度増加した。第3問から第6問では音声の読み上げ回数が2回から1回に減ったことから、難化したと言える。それでも平均点は100点満点換算で56.16点。前年からのマイナスは1.4点に留まった。

 記述式問題の導入が見送られた数学は、出題傾向が変わった。数学Ⅰ・数学Aはセンター試験よりも解答時間が10分延び、問題のページ数も増えた。条件や設定についての説明が長い問題や、グラフを読み解く問題などが新たな傾向と言える。ところが、問題量も傾向も変わったにもかかわらず、平均点は57.68点で前年より5.8点アップ。さらに数学Ⅱ・数学Bは59.93点で10.9点も上昇した。

 同じく記述式が見送られた国語は、平均点は200点満点で117.51点。前年より1.82点ダウンした。センター試験の時より読解力が求められる問題になり、この特徴は22年以降も続くとみられている。

 選択科目による得点調整は今回、2科目で行われた。1月20日発表の中間集計時、公民では倫理が71.76点、政治・経済が51.32点と20点以上開いたほか、理科②では生物が73.14点、化学が52.80点とやはり20点以上開いたため、それぞれ得点が調整された。

 全体的に見て、国語、数学、英語の平均点がそれぞれ6割に近く、5割を下回る科目がなかった。出題の傾向が変わったにもかかわらず、センター試験と点数はあまり変わらない結果となった。新たなテストの導入に対して、多くの受験生がしっかり対策をしてきた結果ではないかと考えられる。

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2021.9.9更新

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