山陰中央新報社|振り回されるのは子ども – 山陰中央新報

 いつの時代でも受験制度をいじると、必ずと言っていいほど批判が噴出する。昭和の共通1次試験はマークシートの解答では「記述に弱い学生が増え、考える力が落ちる」。今年始まった大学入学共通テストはその逆で、記述式の導入が「公正な採点はできるのか」と集中砲火を浴び、見送られた▼島根県教育委員会が今春、高校入試の制度を変えた。松江市内の普通科3校(松江北、松江南、松江東)について、居住地で受験校を制限する「通学区」の廃止に踏み切った。山陰両県で松江だけの制度だったが、少子化で受験生が減る中、3校をガチンコで競争させて特色ある学校づくりを進め、近年低下が懸念される子どもの学力向上につなげるのが狙いだった▼優秀な子は難関校への進学実績が高い松江北へ集まり競争が激化するとの見方もあった。だが、いざふたを開けると競争率は0.83倍。ほぼ1学級分の定員割れを起こした▼制度改正で一番振り回されるのは当の受験生。合格のボーダーラインは前例がないので、学校も塾も確たる数字が示せない。ならば冒険は避けて安全な道を選ぶのは、自然な流れかもしれない▼学校の先生や塾にとって受験は毎年のことだが、子どもには一度きりの人生にかかわる大問題。子どもは制度改正元年に当たった不幸を恨むしかないが、制度を変えた大人たちは、果たしてどれだけの覚悟があったのだろうか。(示)

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