【特集】「打越祭」のバトンを次代につなぐ中学体育祭…浅野 – 読売新聞

【特集】「打越祭」のバトンを次代につなぐ中学体育祭…浅野-–-読売新聞 基本問題

 浅野中学・高等学校(横浜市)は今年、本格的なクラス対抗「中学体育祭」を開催した。「密」を避けるために昨年初めて高校生と分離開催したが、まだ急ごしらえだった内容を今回はブラッシュアップし、保護者も招待して大いににぎわった。また、中学生だけでの運営を経験する中で、生徒たちに大きな成長が見られたという。「中学体育祭」の成果と今後の発展などについて、担当教師と生徒に話を聞いた。

「言われてやるのではなく、できることは自分から進んでやる」

初めての本格的なクラス対抗「中学体育祭」
初めての本格的なクラス対抗「中学体育祭」

 同校は5月26日、中学生だけの初めてのクラス対抗体育祭を実施した。例年は9月に文化祭と体育祭を合わせた「打越祭」が行われていたが、昨年は新型コロナウイルスの感染防止のため、文化祭と体育祭の時期を分けて実施し、さらに中高一体で行っていた体育祭も中学と高校で分離開催となった。中学生だけの初の体育祭であり、準備の時間も限られていたため、内容は春に予定していたスポーツ大会をベースとした球技中心となり、クラス対抗で盛り上がる種目を含んだ例年の体育祭とは趣が異なっていた。

 今年の中学体育祭では、玉入れや綱引き、大玉送りなどのクラス対抗種目が復活し、300人までの制限付きながら保護者も観戦できて大いに盛り上がったという。

 この体育祭を成功に導いたのが、中学の各クラスを代表する約90人の体育祭実行委員たちだ。例年なら、前年度の体育祭で活躍した委員たちの中から選出した委員長を中心に、その年の体育祭の準備を進めていくが、昨年が異例の体育祭だったこともあり、本格的な「中学体育祭」作りは実質的にゼロからのスタートとなった。

 そうした厳しい状況の中で、今年初めて体育祭実行委員となり、「僕が委員長をやります」と手を挙げたのが、中3の濱田蓮太郎君だった。「中3の僕たちは、一昨年の打越祭で浅野の体育祭を経験した最後の学年です。僕たちが先頭に立って今年の体育祭を盛り上げ、今の中1、中2にも、それを下の学年に伝えていってほしいと考えました。言われてやるのではなく、できることは自分から進んでやる。浅野はそういう学校なんです」

 濱田君は、先頭に立ってまとめ役をこなすのが得意だという。これまでにクラスの級長や副級長を務めたこともある。部活ではボクシング部に所属しており、皆の練習メニューを自分から率先して作っているそうだ。

「生徒が主体となって、中学体育祭をさらに盛り上げていってほしい」と話す齋藤先生
「生徒が主体となって、中学体育祭をさらに盛り上げていってほしい」と話す齋藤先生

 体育祭でも、委員長としての選手宣誓や閉会式のあいさつの文言は自分で考えた。「慣れないことも多かったのですが、皆、高い意識を持って体育祭を終えることができたと思います。飲み物を提供してくださったPTAの方々にも、閉会式で感謝の気持ちを伝えました」

 保健体育科で中学体育祭担当の齋藤
琢斗(たくと)
先生は、「中高合同の場合、どうしても高校生が中心となり、中学生はその手伝いをする役割になりがちです。今年は中2、中3が『僕たちがやらなければ』と意欲を見せ、中1も自分の責任をしっかり果たそうとしていました。中学生だけで実施したことの意義は大きかったと思います」と話す。

 もっとも、体育祭数日前のリハーサルを見た時は、「これでは当日うまくいくはずがない」と齋藤先生も悲観したそうだが、蓋を開ければ大きなトラブルもなく、体育祭は見事に進行していった。「本番になると底力を発揮する。本当に頼もしい生徒たちです」

体育祭を経て、クラスの雰囲気が明るくなる

 この体育祭は、中1生にとってクラス全員が一緒に取り組む最初の行事でもあった。1クラス45人前後の生徒たちは、互いに交友関係を広げつつあるという段階で、クラス全体でのコミュニケーションが取れるにはもう少し時間がかかる。

 1年C組のクラス担任でもある齋藤先生は、1年生たちが一緒に体育祭の練習に励む様子を見てきた。「細かいところで対立することがあっても、『勝つためには何をしなければならないか』を、真剣に考えて協力し合っていました。運動が得意な生徒たちが、苦手な生徒たちに進んで声をかける様子も見られました」

 齋藤先生のクラスの
手嶋(てしま)
優太君は、「『台風の目』のようにチームで協力し合って取り組まないといけない競技があって、あまり話をしたことがない人同士でも、お互いに声を掛け合うようになりました」と言う。

 「台風の目」は、5人1組で
竹竿(たけざお)
をもってカラーコーンを回る種目で、竿の内側を持つ生徒と外側の生徒が協力し、うまくバランスを取る必要がある。このほか、2人3脚から5人6脚まである「何人何脚」、クラス全員が1人ずつ縄を飛んでいく「大縄跳び」など、チームごとまたはクラス全体で参加するさまざまな競技があり、手嶋君たちは本番で「他のクラスに負けるな」と励まし合っていたそうだ。

 同じクラスの佐藤
宏亮(こうすけ)
君は、体育祭実行委員に立候補し、競技の様子の実況などを行う「放送部門」を担当した。「それぞれに役割があったので、自分がやるしかないんだと思って頑張りました。実行委員になって、ほかのクラスや学年など、いろいろな人とコミュケーションを取る機会があってよかったです」

 2人とも、体育祭の練習と本番を経て、「クラスの雰囲気がさらに明るくなった」と感じている。手嶋君は「同じことに興味がある人以外とも、話がしやすくなりました」と言い、佐藤君は「仲が良く活発で、にぎやかなクラスになっています」と話す。

 齋藤先生は、今年の中学体育祭の成功に、大きな手応えを感じている。「中学生だけで実施したことで、内容が凝縮され集中して取り組むことができました。今年は応援団は設けなかったのですが、来年以降中学でも応援団を作り、『実行委員長』『応援団長』など、中学のうちにリーダーとしての役割を体験してほしいと思います」

 今年は初めてということもあり、体育祭のマニュアルは教師が作ったが、来年は実行委員たちに任せるつもりだという。「自分たちで新しい種目を取り入れてもいい。生徒が主体となって、中学体育祭をさらに盛り上げていってほしいですね」

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:浅野中学・高等学校)

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