女子校だからこそ、女子は伸びる…広野雅明<23> – 読売新聞

女子校だからこそ、女子は伸びる…広野雅明<23>-–-読売新聞 基本問題

 今回は人気の女子校を2校ご紹介したいと思います。女子校が良いか共学校が良いか?あるいは進学校が良いか大学付属校が良いか? お悩みの方も多いかと思いますが、どちらかが良いというものではありません。どちらにも良い面が多々あります。お子様の性格や各ご家庭の教育方針に合う学校をお探しになる一助となれば幸いです。

幅広い学びで多様な進路へ 鴎友学園女子

 小田急線「経堂駅」から徒歩8分、あるいは東急世田谷線「宮の坂駅」から徒歩4分の閑静な住宅地の真ん中に鴎友学園女子中学高等学校(東京都世田谷区)はあります。女子校には校地が手狭な学校も多く、校舎に隣接したグラウンドがない学校も多いですが、同校には土のグラウンドがあり、施設も十分に整っています。

 鴎友学園は1935年に東京府立第一高等女学校(現:東京都立白鴎高等学校)の同窓会「鴎友会」によって、設立されました。その府立一女の校長を長くつとめた市川源三先生が初代校長です。市川先生は、「女性である前に、一人の人間として社会に貢献せよ」と教えていました。良妻賢母教育が当たり前だった当時、時代に先駆けた教育方針でした。市川先生はまた、「学習者中心主義」を提唱しており、教科横断型の授業や、現在のアクティブラーニングを戦前から実践していました。

 第2代校長は、キリスト教思想家の内村鑑三と女子教育の先駆者の津田梅子に薫陶を受けた石川志づ先生です。石川先生は、戦時下でも英語教育を続け、国際社会で活躍する女性の育成を目指すなど、まさに時代の先覚者でした。

イギリスの名門女子校チェルトナム・レディース・カレッジでの研修旅行。鴎友学園は国際交流が盛んだ
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 同校はミッションスクールではありませんが、キリスト教精神による全人教育を心の教育としており、今でも中学では週1時間の聖書の授業があります。このほかにも同校の授業にはさまざまな特徴があります。まず、「園芸」の授業が必修で、中1で週2時間、高1で週1時間あります。創立以来、校内にある園芸実習園で、1人ずつ自分の小さな畑で野菜や花を育てます。都会に住むと土に触れる機会はなかなかありませんから、実際に自分で育てることで、さまざまなことを発見します。

 この園芸の授業は、さまざまな野菜や花を実際に観察し、構造を理解する意味で生物の授業に、実際に育てた野菜を食べることによって調理の授業にも結び付きます。現在、盛んに教科横断型・合科型の授業が話題となっていますが、同校では戦前からこのような授業が実践されています。昨年度のコロナ禍の休校期間中も、園芸のキットをそれぞれの生徒の自宅に配送し、生徒は配信した動画を見ながら、自宅で栽培し、観察したそうです。同校が最も大事にしている授業の一つだということがよく分かります。

 同校は体育もまた重視しています。保健体育の時間に実施される、音楽のリズムで身体のリズムを訓練するリトミックは特徴的なものです。同校のWEBサイトによると、「太鼓のリズムと指導者の声などによって、目と耳から与えられた刺激を、手足を中心とする全身で表現します。脳の中枢からの指令が神経から筋肉へと速く正しく伝わるようになるため集中力が増し、身体を美しく能率よく動かせるようになります」とのことです。同校は運動会も盛んで、土のグラウンドで実施される学年対抗の運動会は伝統的な競技も多く、皆が熱心に参加しています。

 最近は英語4技能を重視し、オールイングリッシュで授業するなど、英語の授業を核としたグローバル教育がどの学校でも盛んですが、本校は第2代校長の石川先生の時代から他校に先駆けて実践しています。

 同校の英語の授業はオールイングリッシュでの授業から始まります。日本語を介さず、直接英語で学びますので、最初は戸惑うお子様もいらっしゃいますが、すぐになじむようです。自分の好きな英語の本を選んで読む多読の授業もあり、辞書を使わずに読むことで、英語で内容が頭に入るようになるとのことです。また、中1からネイティブスピーカーの先生の授業もありますので、まさに英語漬けであり、同校の生徒は英語に強いということも納得させられます。国際交流も昔から盛んで、学校独自の交換留学、サマースクールなどのプログラムも用意されています。

 良好な進学実績も同校の魅力の一つです。国公立大学や難関私大を中心に現役で進学する生徒は非常に多いです。さらに昨今では医学部・海外大学を目指す生徒もおり、特筆すべきは東京芸術大学など芸術系を目指す生徒が毎年のようにいることです。多様な価値観を認める同校ならではの特徴と思います。

 最後に入試に触れると、少し前までは2月1・2・4日と3回の入試でしたが、現在は2月1日と3日の2回入試になっています。3回入試の時は併願校として受験するお子様が大勢いましたが、最近は第1志望として2回とも出願するお子様が増えています。また、同校の校風に引かれ、この数年は倍率も上昇しています。

 同校の特徴を大井正智校長先生に伺うと、「本校は一流の素材を集めて作った『幕の内弁当』のような学校です。聖書や園芸など、幅広い教科を学ぶことができます。生徒は偏ることなく、さまざまな学問や部活、行事などに取り組むことで、調和の取れた総合力のある人材に成長することができます」と答えました。価値観が多様な現在だからこそ同校のような学校は存在価値が高くなると思われます。

「他流試合」や音楽で人間を育てる 洗足学園

 東急田園都市線「溝の口駅」とJR南武線「武蔵溝ノ口駅」の周辺は近年再開発が進み、町が一新されつつあります。両駅から徒歩約8分の南武線沿いに洗足学園中学高等学校(川崎市)の校地はあります。幼稚園から音楽大学までが同じキャンパスにあり、線路沿いに大きな人工芝のグラウンドもあります。異年齢の幼児・児童・生徒・学生が集まる空間は非常に魅力的です。斬新なデザインの校舎には各種の施設が整い、生徒のさまざまな興味や学習に十分に対応できる空間になっています。

 洗足学園は1924年に前田若尾先生が自宅に開いた裁縫塾を淵源とし、26年に洗足高等女学校と改名して設立認可を得ました。創立者は(けい)(けん)なクリスチャンであり、校名も聖書の逸話から取っています。46年に現在地に移転、その後、幼稚園、小学校、短期大学、音楽大学と開校し、総合学園となっています。現在は、併設の小学校からの内部進学や系列大学・短期大学への進学は少数ですので、実質的には中高6年間の一貫校となっています。

 同校の特徴の一つは音楽教育です。中学校の音楽の授業では、バイオリン、チェロ、フルート、そしてクラリネットのうち一つの楽器を選択します。中学3年生でクラスごとの合奏があります。希望者は中高のフィルハーモニーオーケストラに入ることもできます。「これは、音楽に満ちあふれた心豊かな学園生活を送ることで心豊かな人物を、という創立者の強い思いから生まれた取り組みです」と宮阪元子校長先生は強調します。

 女子校の中には、どちらかというと閉鎖的であまり他校との交流がない学校もありますが、同校は逆に他校との多様な交流が盛んで、「他流試合」が推奨されています。模擬国連、各種のコンクール、コンテストに大勢の生徒が出場し、たくさんの生徒が入賞しています。こうした経験を積むことで人間的に成長するという考えのようです。

 同校は、これからの先行き不透明な時代にも対応できる汎用(はんよう)的な能力、態度、思考を身に付けさせるために、主体的・対話的な学びを展開しています。総合学習では、中3、高2で研究論文を執筆します。中1から高2まで毎年行われる宿泊研修では、哲学的対話などを中心としたカリキュラムが組まれています。また、土曜日には、研究施設の研究員や著名な識者などを招いて、希望者制の「教養講座」も開かれます。

 授業時間は1コマ65分という長めの設定で、英語のレシピで調理をするなどの教科融合型授業も実施されています。

 洗足学園はこれからの時代を見据え、グローバル教育にも力を入れています。帰国生入試を実施しており、毎年30人以上の帰国生が入学します。アメリカの中高のカリキュラムに準じるELLの授業と大学受験に必要な文法などの授業は日本人教師が担当し、高い英語力をさらに伸ばす体制が整っています。海外留学や研修制度も学校独自で多数用意しており、短期の語学研修から長期の留学まで多数のプログラムがあります。

 帰国生入試のA方式は英語・英語面接、B方式は英語・国語・算数・英語面接で合否が決まります。帰国生入試の中でも人気のある入試の一つで、毎年大勢の児童が受験します。面接に不安のあるご家庭もかなりあるかと思いますが、事前に予約制で面接の練習ができるようになっていて、受験生・保護者への優しさを感じます。

 一般入試では2月1日と2日の午前入試は2科4科選択制、5日の入試は4科目入試になっています。難関校のほとんどが4科目入試になっている中で、あえて2科目で受験ができるようにしていることも多様性を重視する同校らしさの表れと思います。

 情報公開に熱心なのも同校の特徴の一つです。入学試験の平均点や合格最低点・入試問題の解答例などが非公表の学校も多いなか、同校はWEBサイトや学校説明会でほとんどの情報を公表しています。この情報を基に過去の入試問題を解くと、合否の目安も立ちやすいかと思います。

 今年度の大学入試では同校から東京大学10人、京都大学3人など国公立大学に100人以上が合格し、人気の医学部医学科にも50人以上合格しています。さらに海外大学にも約30人合格しており、進学実績も良好かつ多彩です。この結果は先生方の指導が良いのはもちろんですが、すでに述べたさまざまなプログラムの中で生徒の皆さんが実力を伸ばし、それぞれが自分の意志でチャレンジした結果かと思います。

 昨今は女子校不人気の声もありますが、まだまだ国内には多数の魅力的な女子校があり、その中で過ごす6年間は共学校とはまた違う魅力があります。お子様の受験校を選択する際にお子様の学力(偏差値)ももちろん大事な要素の一つですが、私学には一校一校それぞれ固有の魅力があります。コロナ下ではございますが、可能な範囲で一つでも多くの学校に足を運び、各校の魅力を感じていただければ幸いです。

プロフィル

広野 雅明(
ひろの・まさあき

 サピックス教育事業本部本部長。サピックス草創期から、一貫して算数を指導。算数科教科責任者・教務部長などを歴任。現在は、入試情報、広報活動、新規教育事業を担当。


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