インターハイ元Wリーガーが率いる龍谷富山…初戦敗退も村中CAPは「冬は上位を目指したい」 – バスケットボールキング

基本問題

3年ぶりのインターハイ出場となった龍谷富山[写真]=バスケットボールキング編集部

取材歴17年目でミニバス、中学、高校、大学、トップリーグに日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

高校時代にインターハイ優勝に輝いた指揮官

 8月10日、新潟市を舞台に「令和3年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の女子が開幕。初日は3会場に分かれて1回戦が行われた。

 亀田総合体育館で大阪薫英女学院高校(大阪府)と対戦したのは富山県代表の龍谷富山高校。試合は、序盤から大阪薫英にリードを許し、苦しい展開となる。ゾーンディフェンスなどを駆使し、攻めては澤知央(2年)が20得点、村中のあ(3年)が11得点をを挙げたものの、大阪薫英の得点ペースに付いていくことができず。最後は51-110で敗退した。

「やってきたことを出そうという姿勢がすごく見えたので、それは良かったと思います。その上で、一つ一つのプレーの精度がうちの方が低いし、走力や強さが全国で勝っていくには足りていなかったと感じました」と試合を振り返ったのは龍谷富山の有山景子コーチ。

 この名前を聞いてピンときた人もいるかもしれない。有山コーチは2011~2018年の7シーズン、日立ハイテククーガーズでプレーした元Wリーガーなのだ。

 さらに言えば、東京成徳大学高校(東京都)時代には高校1年生からスターターとして活躍。2年生のときには、一つ年上の吉田亜沙美(東京医療保健大学アシスタントコーチ/元日本代表)らとともにインターハイ優勝にも輝いている。東京成徳大学中学校時代から全国のトップでプレーを続けていたことから、記憶に残っているバスケットファンも多いだろう。

 2018年に現役としてのピリオドを打った有山コーチが富山龍谷高校の指導にあたったのは昨年の7月から。アイスホッケー部の宇野澤太一コーチが女子バスケットボール部を兼任をしていたこともあり、有山コーチに声がかかった。とはいえ、現在は東京での社業もあり、指導は週末のみ。それでも、今春からは佐藤肇アシスタントコーチが同校に赴任したため、現在は、佐藤Aコーチとともにチーム作りを行っている。

龍谷富山の指揮を執る有山景子コーチ[写真]=バスケットボールキング編集部

自らも経験してきた「選手が考えるバスケット」を目指す

 指導し始めた昨年は、宇野澤コーチが2つの部を兼務で、バスケットも未経験だったこともあり、平日は選手たちが主体で練習を行っていた。「私が週末しか行けない中、選手が自分たちでバスケットを理解して、指摘し合って、高めていくという状況でチームを作ってきました」と有山コーチ。だが選手たちに自主性を促しているのは、何も有山コーチの指導時間が限られているからという理由だけでなはない。「高校のときも玉川大学のときも、自主的に考えて、コートもベンチも選手みんなでバスケットをしていました」という自身の経験が大きい。

 その理由をこう話す。「自分たちで考えてやった方がバスケットって楽しいと思うんですよね。もちろん、こちらの言うことをやってもらいたいときもありますが、その中で疑問に思ったことは質問できるような環境にしています。結局、やるのは自分たちなので」

 今日の結果は大差がついたものの、「以前なら、点が離れたときに落ち込むというか、しゃべれなくなってしまうことが多かったのですが、今日はちゃんと自分たちで話し合って、どうにかしようという姿勢がすごく見えました。そこは成長したかなと思います」と指揮官は笑顔を見せる。

 その思いは選手にもしっかりと伝わっているようで、キャプテンの村中は「選手たちが中心になってコミュニケーション取るようにということは日頃からやっているので、試合の中で最後までコミュニケーションを取るようにしました」と言う。

 さらに村中は、「自分たちで考えながら、有山コーチにも教わってバスケットを深めていくというのが、すごく楽しくて。全国で勝てるチームを作ってる最中なので、今回はその一つのステップになったと思います」と目を輝かせた。

 指導者として戻ってきたインターハイを「楽しかったです!」と声を弾ませた有山コーチ。「コーチとしてはキャリアもないし、実績を残しているわけでもないので、私も学んでいきたいと思っています」とも語った。

「個の力は徐々についてきましたが、大阪薫英さんのような強いチームと対戦したとき、個で足りないところをチーム力で打開できるようにしたいです。ウインターカップに向けていろいろとバスケットの楽しさを教えていきたいと思います」(有山コーチ)

「足りないところが浮き彫りになった試合でした。富山に帰って、1人ひとりがもっとスキルを上げて、ウインターカップでは上位目指してやっていきたいです」(村中)

 冬に向けて気持ちを新たにした龍谷富山のコーチと選手たち。見る者も、プレーする者も「楽しい」バスケットを冬に披露するため、これからも選手たちの自主性、個性を生かしたバスケットに磨きをかけていく。

取材・文・写真=田島早苗

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