海外大合格者は前年比3倍近くに
「200人を突破するとは、正直言って私も驚いた」。同校の金子暁副校長は話す。9月入学が大半の欧米など海外大の合格状況は、6月末までにほぼ判明する。20年の合格者数は79人だったので、3倍近い伸びだ。
同校のデータを見ると、米東部の名門、プリンストン大学のほか、米西海岸のカリフォルニア大学バークレー校や同大ロサンゼルス校など有名大に続々合格。世界大学ランキング上位の常連校、カナダのトロント大学には実に10人が合格している。「大半が米国やカナダ、英国など欧米の大学だ」という。
広尾学園の17年の海外大の合格者は18人だったが、18年に82人に跳ね上がり、今年はさらに飛躍を遂げた。金子副校長は「うちにはネーティブの教員が20人以上いる。彼らが海外大とのパイプを太くし、毎年多くの海外大がうちに入試説明会に来るようになった。ここには高校生のみならず、中1から参加できる。しかも海外大に進学する先輩も増え、たびたび来校してくるので、生徒の意欲が高まっている」と説明する。
同高校の1学年の生徒数は約300人。このうち国語などを除いてほぼ全教科を英語で学ぶインターナショナルコースは50人程度だが、本科や医進・サイエンスコースの生徒も海外大を積極的に受験する。校舎は都心にあり、ガラス張りで豪華オフィスのような大型建造物。米国大学の統一テストにあたるSAT(大学進学適性試験)などの試験会場になっている。「わざわざ中国や韓国の高校生がうちに受けに来るので、非常に刺激になる」という。
ただ、東京大学への合格者数は3人でここ数年はほぼ横ばい。東大よりも医学部や海外の有名大に目が向いているようだ。
金子副校長は、「国内の大学だと、東大志向というよりも医学部を狙う生徒が増えている」という。広尾は受験のための偏差値教育ではなく、グローバルに通じる自立型の人材育成を目指し、07年にスタートした新興校だ。理系人材養成のため、最先端の実験や研究用の機器をそろえ、米グーグルの協力でITインフラが整備され、全生徒がネット対応していることでも話題になった。
米国の大学入試は日本とは大きく異なる。高校時代の成績やエッセー、推薦状、野外活動、面接、そしてSATのスコアなどで合否が決まる。コロナ禍でSATの試験が困難になり、米有名大ではスコアの提出要請を相次ぎ取りやめた。面接もオンラインのため、現地の大学に赴く必要はほとんどなく、日本からの受験は不利ではない。むしろコロナ下で米国外の生徒が受験しやすかった面があるかもしれない。現地の一部報道では米有名大でのアジア系などのマイノリティー(少数派)の合格率が上がったという。
コロナ禍の中、昨年、欧米の大学は次々閉鎖に追い込まれ、オンライン講義などに切り替えた。わざわざ海外に留学する意味合いも薄れたとの指摘もあった。しかし、実際に広尾学園などの生徒の海外進学の意欲は衰えていなかった。金子副校長は「コロナとの関係性はよく分かりませんが、うちの海外大の合格者が大幅増になったのは、受験者が増えたという以上に合格率が上昇したのが主因だ。今後は数より質を向上させる必要がある。米ハーバード大学など世界トップランクの大学の合格者を増やしたい」と話す。
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