性犯罪や性暴力の根絶に向けて、文科省は内閣府と協力して、子供たちが性犯罪や性暴力の加害者や被害者、傍観者にならないための「生命の安全教育」の教材を作成し、文科省のホームページで4月16日、公開した。今年度中に各地の教育委員会などに委託して10数校の授業で使用し、指導モデルの開発を進める。萩生田光一文科相は同日の閣議後会見で、「全国の学校や大学などで活用して、性暴力の防止につなげたい」と呼び掛けた。
「生命の安全教育」は、政府が性犯罪の厳罰化の流れを受けて昨年6月にまとめた「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」の中で推進していくことが打ち出された。性犯罪・性暴力の根絶のために、子供たちや社会に、加害者や被害者、傍観者にならないための教育や啓発が重要だと強調している。
これを受けて文科省と内閣府は、教育現場で性暴力防止に取り組んでいる学校やNPOなど、14の団体や専門家からヒアリングを行うなどして実態調査を進め、専門家の助言も受けながら教材と教員向けの指導の手引書を作成した。
教材は、発達段階に応じて「幼児期」「小学校低・中学年」「小学校高学年」「中学校」「高校」「高校(卒業直前)・大学・一般」の6種類を作成。このうち幼児期向けでは、イラストを使って「水着で隠れるところは大事なところ。他人に見せたり触らせたり、また、他の人のところを見たり触ったりしないように」などと、自分がされて嫌なことは他の人にしないように――と呼び掛ける内容になっている。
スマホの所有率が高まる小学校高学年向けでは、SNSをテーマに取り上げ、やり取りしている相手が信頼できる人かどうか注意を促しつつ、怖い思いをしたときの対応をみんなで考えることを呼び掛けている。
さらに中学生向けでは、恋人同士で起こる暴力「デートDV」など、性暴力の種類を例示しているほか、性暴力を受けたり目撃したりしたときに相談できる支援センターの連絡先なども掲載している。
合わせて「生命の安全教育」の授業を行う際に教員が留意すべきことをまとめた指導の手引書も、発達段階ごとに作成した。
文科省は、幼稚園では遊び時間の合間などに、学校では保健体育や道徳の時間などに、この教材を活用してほしいと呼び掛けている。今年度は各地の教育委員会などに委託して指導モデルの開発に取り組み、2022年度はさらに地域を広げて実践事例を増やし、23年度から全国の学校で授業を行うよう呼び掛けることにしている。
萩生田文科相は会見で、「性暴力・性犯罪は、被害者の尊厳を著しく踏みにじる行為で、心身に長期にわたり重大な悪影響を及ぼすもの。根絶に向けて教育や啓発を強化する必要があり、全国の学校や大学で教材を活用してほしい」と述べた。
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