【入試ルポ】神奈川の中学入試スタート、実質3.3倍の激戦…中大横浜 – 読売新聞

【入試ルポ】神奈川の中学入試スタート、実質3.3倍の激戦…中大横浜-–-読売新聞 花のつくりとはたらき

 神奈川県の私立中学入試が2月1日解禁され、中央大学附属横浜中学校・高等学校(横浜市)でも同日、第1回試験が行われて、前年度より20人多い492人が受験し、147人が合格した。実質倍率は前年より0.3ポイント高い3.3倍となった。入試当日の様子をリポートするとともに、柴田峰行教務部長と寺戸哲也広報部長に同校の教育理念や望む人物像などを聞いた。

緊急時のために空き受験教室を三つ用意

午前7時30分の開門を待って列をつくる受験生と保護者
午前7時30分の開門を待って列をつくる受験生と保護者

 この日は早朝から気持ちの良い晴天に恵まれた。午前7時過ぎ、横浜市営地下鉄を学校最寄りの「センター北駅」で降りると、駅外の芝生広場に沿って並ぶ10人ほどの塾関係者らしい姿が見えた。駅から出てくる受験生の中に教え子が現れる度に、健闘を祈るかのように無言でアイコンタクトしていく。コロナ禍の影響で学校への立ち入りや応援を自粛するよう厳しく要請されているためだ。

 駅と同校をつなぐ遊歩道は10分ほどの距離だが、ところどころにプラカードを掲げた警備員が配置されて案内に当たっている。やがて同校に到着すると、すでに10組ほどの保護者と受験生が校門の前に待機していた。午前7時半の開門直前には、それが長い行列となり、開門と同時に整然と学校の敷地に吸い込まれていった。コロナ対策のため、保護者は校舎の正面玄関前までしか付き添えない。ここで受験生からスマホを預かるついでに持ち物の最終確認をしたり、別れ際に肩をたたいたりして激励する保護者の姿が見られた。

試験室は、入室者数を制限し、机と机の間隔も空けて配置されていた
試験室は、入室者数を制限し、机と机の間隔も空けて配置されていた

 正面玄関から入った受験生たちは手指の消毒を済ませたあと、検温器が設置されている体育館を経由しておのおのの教室に入った。感染対策のため、通常定員40人の教室への入室を30人に制限し、机と机の間隔も空けて配置してある。さらに、試験中に体調を崩した受験生が
嘔吐(おうと)
した場合でも、教室を移して試験を続行できるよう予備の教室を三つ設けた。また、面談室を空けて、体調不良の受験生が個別受験できるようにした。こうしたコロナ対策は昨年度入試の対策を引き継いだものだといい、柴田峰行教務部長は「最悪の想定をして臨んだ前年の経験を基本的にはそのまま踏襲しています」と話す。

 教室に入った受験生たちは、出欠確認が行われる午前8時20分ギリギリまで参考書やノートに目を通したり、机の上に筆記用具を整えたりと、最後の確認に余念がなかった。試験監督から注意事項の説明があり、予定通り8時50分に1時間目の国語の試験が始まった。試験は国語(50分、150点)、算数(同)、社会(35分、100点)、理科(35分、100点)の4科。受験生たちは試験が終了する午後12時40分まで、力を振り絞って答案に取り組んだ。

受験生の中でも女子人気が高い傾向

「内部進学という受け皿があることで、生徒たちは受験勉強だけに追われることなく、成長する機会を得ることができます」と語る寺戸広報部長
「内部進学という受け皿があることで、生徒たちは受験勉強だけに追われることなく、成長する機会を得ることができます」と語る寺戸広報部長

 同校は2010年に横浜山手女子学園と中央大学が合併して誕生し、13年に現在地に移転した。同大付属中学・高校の中では最も新しい学校で、施設も真新しい。グラウンドは全面に人工芝が敷き詰められ、全天候型の直線トラックが配置されている。校舎は白を基調とし、大型のガラス窓が多用されていて、まるで近代的な美術館のような外観だ。校舎内部は、天然木の床材が敷き詰められており、中心に設けられた大きな中庭から優しい自然光が差し込む。前身が女子校だったこともあってか、大切に利用されてきた印象だ。

 寺戸広報部長によると、受験生の傾向でも女子の人気が高めだという。年々男子の占める比率が高くなってはいるものの、今年も出願者1578人のうち54.8%にあたる865人が女子だった。

 学校説明会で実際にダンス部やバトン部といった部活の紹介で女子が活躍する姿を見て、あこがれる受験生が多いのだそうだ。また、閑静な住宅街に立地していて、駅からの遊歩道が整備されているなど、学校のロケーションも保護者の安心につながっているのではと寺戸広報部長は話す。「暗くなってからの下校などの点で安心感があるのではないでしょうか」

入学試験から始まる「学びのモチベーションを高める」教育

「自分の可能性を広げる中高6年間にしてほしい。そのための仕掛けをたくさん用意して待っています」と語る柴田教務部長
「自分の可能性を広げる中高6年間にしてほしい。そのための仕掛けをたくさん用意して待っています」と語る柴田教務部長

 この日の入試の狙いについて、柴田教務部長は「本校で学ぶ上で必要な基礎的な力を問うような問題を偏りなく出題しています」と説明する。例えば、入学後に方程式を学んだ際、「入試で出たあの問題を解くのにも方程式は有効だったんだ」と生徒自身が気付けるような、学びのつながりを意識しているという。「中学校の学習はそれまでの学びを深め、高校、大学への土台となる大切な学習となります。そのような力を持った生徒が入学後の授業などで学びのモチベーションを高め、希望の進路実現につなげてほしいと考えています」

 「学びのモチベーションを高める」という教育方針は、入学後の生徒の学習意欲の高さにつながっているという。例えば、同校には中央大への内部推薦入学制度があるが、例年1学年のうち3割近くが中央大以外の大学に進学する。同大付属校の中で他大学への進学率が最も高いそうだ。20年度は横浜国立大(13人)や東京工業大(3人)、東京都立大(同)など卒業生317人中79人が他の私立大や国公立大に進学した。

 生徒のさまざまな志望に応えるために、学校としても中央大にない学科を進路として選択できるようさまざまなカリキュラムを組んでおり、受験科目として必須の英語、数学、国語の授業時間も他の付属校よりも多く設けている。さらに、進路選択の視野を広げようと、さまざまな業界の人を講演会に招いたりもしている。

 その一方、「内部進学という受け皿があることで、生徒たちは受験勉強だけに追われることなく生徒会活動や部活、学校行事といった勉強以外のことから学び、成長する機会を得ることができます。これも本校の良いところです」と、寺戸広報部長は話す。文化祭や体育祭は高校2年生が中心となって企画・運営し、中学の宿泊行事や校外行事といった課外授業も、生徒が中心となって実行する。こうした活動が協調性や責任感の醸成に役立っているという。

 この日の試験は、出願者数が前年より25人多い516人、受験者も20人多い492人となり、147人が合格した。実質倍率は前年より0.3ポイント高い3.3倍となった。柴田教務部長は「自分の可能性を広げる中高6年間にしてほしい。学校はそのための仕掛けをたくさん用意して待っています」と話した。

 (文:江澤岳史 写真:中学受験サポート)

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