入試シーズンが始まります。コロナ下で頑張る受験生たちへ、校長からのメッセージをお届けします。
【写真】「バカ同士教え合え」ドラゴン桜監修の東大生語る受験術
■校長から受験生へ:駒場東邦中学・高校校長 小家一彦さん
受験生の皆さん、コロナ下での受験は不安も大きいでしょう。この2年間、ニュースでは感染状況やワクチンの話だけでなく、自粛警察や誹謗(ひぼう)中傷などの問題も取り上げられました。学校でも家庭でも、日常と違う様々なことが起きる中に身を置き、自分の有りようをどう考えましたか。
自分の有りように思い巡らすということは、自分の五感をもって世界のあらゆる現象を感受し、自分の頭すなわち自分の言葉で考えることです。それは受験勉強に直結します。大学受験にしても中学受験にしても、入試においてはこの「自分で考える力」が問われます。様々な情報や知識を結びつけ、そこからどれだけ何を考えることができたか。そこを自己評価できるのが我が校の生徒であり、我が校の学びです。
教育の世界では、探究学習、理数重視、などと叫ばれています。でも、私はどれも新しいこととは捉えていません。主体性をもって深く考え続けること、身のまわりの現象を自分の感受性をもって捉えることは、学習において必ずある姿勢と考えます。我が校では、創立以来、それをただ愚直に追求し続けてきました。
ただ、コロナ禍で学校をめぐる状況は難しくなっていると痛感しました。生徒や親が不安を抱いた時に、それを受け止める場が、学校以外になくなっている。
休校や時差登校になって、ゲームやSNSに没頭して睡眠が足りず、学習への集中力が持続しない生徒も出てきました。目的意識がなくなり浮遊するような生徒もいます。思春期で親の言葉にはなかなか耳を傾けないため学校に望みを託す保護者もいます。コロナ禍で家にいる時間が増えた父親からのご相談も目立つようになりました。それだけ切実なんだと思います。
昨春の長期休校時は、後援会費から家庭の通信環境を整える一部として全生徒に1万円を支給し、オンライン授業を続けました。おかげさまで、休校明け初日は全員出席でした。ただ、時間がたつと登校しない子も出てきた。感染が不安な家庭には、授業のオンライン配信もしましたが、オンラインではやはり学力差がついてしまう。
そこで、卒業生や東邦大学医療センターの医師らの意見も聞きながら、対面授業を優先し、行事もひとつひとつ復活させました。医療面の講演もしていただき、PCR検査をして修学旅行も実施できました。医療機関と連携できる環境があることは、本当にありがたい。
受験生の皆さんも、この2年でいろいろなことを乗り越えてきたと思います。中学受験は「親子二人三脚」とされますが、大学受験は1人の勝負です。ぜひ自分のしてきたことに自信を持ち、目標を持って入試に臨んでください。(聞き手=編集委員・宮坂麻子)
◇
〈おいえ・かずひこ〉 1965年、山形市生まれ。早稲田大教育学部を卒業し、90年に駒場東邦中高に国語科教諭として着任。学年主任、教科主任、校務主任などを歴任し、2020年4月から校長を務める。
★駒場東邦中学高校
・所在地:東京都世田谷区池尻4丁目
・創立:1957年
・生徒数:男子校 中学716人、高校689人
・合格実績:東京大56人、京都大6人、医学部歯学部81人、早稲田大・慶応大各109人
・1978年から交換留学制度を始め、現在も米国私立スティーブンソン校、台湾の国立台南第一高級中学と実施。渡航費は留学生基金から負担
・入学当初からリポート課題も多く、自分の頭で考え、物事を探究する姿勢を養う教育をする
朝日新聞社
【関連記事】
Powered by the Echo RSS Plugin by CodeRevolution.