鹿野利春 京都精華大学教授
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情報科については、大学入試センターが2025(令和7)年度に「情報Ⅰ」を入試科目として実施することを決定し、これを受けて国立大学協会が従来の5教科7科目から、「情報Ⅰ」を入れた6教科8科目にすることについて検討を行っている。私は、「情報Ⅰ」の内容は国民的素養として設定したものであり、これは大学においても必須の能力となるはずのものであるから、結節点としての大学入試でこれを問うことは極めて自然なことだと考えている。
また、「情報Ⅱ」を大学の個別試験に入れることで、入学者全員がデータサイエンスなどの素養を持った状態から出発することができる。入試科目として何をどれだけ取り入れるかは各大学の判断になるが、その判断は高校だけでなく、産業界からも厳しい目で見られることになる。情報科の入試をどう扱うかについては、大学経営といった視点からも議論されなければならない。
私は21年3月に教科調査官を退官し、同年4月から京都精華大学メディア表現学部に教授として勤めている。文科省を離れたこともあり、大学の情報科教員養成課程用の書籍や情報科の入試問題集を出版社と協力して作成したり、Web教材を作成する会社に協力したり、高校の先生向けの研修会の講師を務めたりしている。これらの動きを加速させることが、「情報Ⅰ」を円滑に実施し、「情報Ⅱ」の準備を進めると同時に、情報科の入試についてもプラスに働くと信じている。
さて、情報科という教科について述べてきたが、実はこれでは十分ではないと思っている。例えば、1年で「情報Ⅰ」を学習したならば、「総合的な探究の時間」や他教科等でも、情報デザイン、プログラミング、データの活用など、「情報Ⅰ」で身に付けた資質・能力を存分に生かすべきであり、それが大学入試の準備にもつながる。他教科も含めて、そういったカリキュラム・マネジメントを行うことが大切である。
また、パソコン部のようなデジタル関連の部活動に所属する生徒、地域のそのようなクラブ活動に所属する生徒、授業の中で収まりきらない才能を有する生徒については、産業界や学会が協力して、その力を最大限伸ばす仕組みが必要ではないだろうか。
教科横断的な学習については、STEAM教育という観点から文科省視学委員として、生徒の才能を伸ばす仕組みについては、経産省の「デジタル関連部活支援の在り方に関する検討会」の座長として取り組んでいる。大学の仕事も含めて多くの方と協力しつつ、次の時代を創っていく仕事に従事できることに感謝の意を述べて連載を終える。
(おわり)
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