【上海=南部さやか】中国上海市の教育当局が、小中高生に自殺について直接的な質問を行うアンケートを実施し、保護者の非難を受けて謝罪に追い込まれた。子供の自殺の深刻化の主要な原因となっている受験競争の過熱をもたらしてきた教育政策にも、親たちから厳しい視線が注がれる。
警備員や保護者に見守られながら登校する北京の児童(10日)=片岡航希撮影
中国紙・新京報(電子版)などによると、アンケートは子供の健康心理を理解することを目的に実施された。100問余りのうち約40問が「自殺の準備をどの程度したか」「自殺を試みたか」「遺書を書いたか」など、自殺に関する設問だった。
保護者からは「子供の心を深く傷つける」「自殺への誘導だ」と批判が殺到し、当局は19日、「学生を困惑させ、保護者を心配させた」として謝罪の意を表明し、調査中止を発表した。
心理士は新京報の取材に、「自殺したい子供は隠すものだ。こうした調査は精神疾患がある成人を対象に、医師の指導下で行うものだ」として、子供に直接問うのは不適切だと指摘した。
政府が言論の統制を強める中、当局にこうした直接的な批判が浴びせられるのは、子供の自殺が大きな社会問題となっているからだ。
北京大学と協力して研究を行う医療機関によると、毎年約10万人の青少年が自殺しているとされる。年齢別では、4割を占める12歳、14歳、11歳、13歳の順に多く、原因の約半数(45・5%)が「学習圧力」だった。今年は江西省や陝西省、河南省などで小中学生の飛び降り自殺が相次いだ。子供らは「努力しても永遠に終わらない宿題がある」「毎日毎日、宿題宿題。私はあなたたち(両親)が憎い」といった遺書を残した。
中国政府は危機感を強め、教育省は7月、小学校高学年や中高生に毎年、心理検査を実施するなど、うつ病予防の強化を指示する通知を出した。政府は今年、小中学校の宿題の量を減らすなど、家庭の教育負担軽減策も打ち出している。
それでも、「現代の科挙」とも呼ばれる過酷な大学統一入試「高考」の制度は継続している。高校受験を控える中学生を抱える母親は「高考がある限り、何も変わらない」と言い切る。
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