毎年2月25、26日に行われる入試は一般選抜だけではない。外国学校卒業学生特別選考の試験も同日に行われているのを知っているだろうか。外国学校卒業学生特別選考第1種は日本の永住許可を得ていない外国人を、第2種は日本人および第1種以外の外国人を対象とする。この記事では、いわゆる「帰国生」と呼ばれる、外国学校卒業学生特別選考第2種で入学した学生3人を集め座談会を行い、受験生時代の過ごし方や帰国生の強みなどについて話を聞いた。(取材・米原有里)
知識と経験で東大に挑む
まずは自己紹介も兼ねて、それぞれのバックグラウンドを教えてください
Tさん 生まれも育ちも米国のカリフォルニア州で、受験科類は文Ⅰです。
Yさん 三重県出身ですが、親の仕事の都合で14歳から4年間、米国のケンタッキー州で過ごしました。受験科類は文Ⅱです。
Oさん 私は約9年間、親の転勤の都合で中国の北京で過ごし、インターナショナルスクールに通いました。受験科類は文Ⅲです。
高校時代はどのように過ごしていましたか。受験に生きてきたことや感じたことがあったら教えてください
Tさん 高校最後の年に、日本で暮らしてみたいと思って日本の大学を受験することを決めましたが、それまでは特に受験を意識することもなく学校生活を楽しんでいました。米国の学校では人前で発表することが多く、プレゼンテーション能力が鍛えられたので入試の面接に生きてきたと思います。また、土曜日に日本語の補習校に通って日本語で勉強していたのが日本語の実力の維持につながりました。
Yさん 僕は最初は英語が全く話せなかったので、本をたくさん読んだり、テレビを観たり、クラスメートと積極的に話したりして英語の勉強をしました。英語の実力は受験に直結するので努力して良かったですね。本をたくさん読んで得た知識は入試の面接の受け答えや小論文を書く際に役立ったと思います。何よりも、現地の生活を満喫しさまざまな経験を積んだことが良かったと思います。
Oさん インターナショナルスクールに通う傍ら日本語で大量の読書をしていたのが日本語の実力の維持につながりました。高校生の時に日本や中国の読書作文コンクールや小論文コンクールに積極的に応募して、文章力を磨いたことは受験に生きてきましたね。
東大を受験することに決めた経緯は何ですか
Tさん 現地の高校を6月に卒業した後、日本に来て帰国生向けの予備校に通い始めました。その時に予備校の先生に東大を勧められたのがきっかけです。
Yさん 僕もTさんと同じく高校卒業後日本の予備校に通い始めた際に、予備校の先生に勧められたのがきっかけです。ずっと京都大学と迷い、書類選考は両大学に応募したものの京都大学に落ちてしまい、それ以降は東大だけを目指して勉強しました。
Oさん 高2の時、多くの人が米国の大学への進学を希望する中で、尊敬する先輩が東大に入学したと知ったのが東大を目指したきっかけです。
東大受験に向けての対策を教えてください
Tさん 9月に私立大学の受験が終わって以降東大の対策を本格的に始めました。予備校での授業や面接対策に加え、小論文でどのような問題が出されても対応できるように、ニュースを熱心に勉強しましたね。
Yさん 僕も東大の勉強に本腰を入れ始めたのは私立大学の受験が終わった9月以降でした。英語の試験は過去問を10年分近く解き、日本語の小論文は1日1篇くらい解いていました。また、小論文のために多く読書し、知識を付けました。
Oさん 英語の試験や小論文に関しては20年分の過去問を繰り返して解きました。また、ひたすら本を読んで知識を蓄えました。自分が専攻したい領域の学術書を多く読んだことは、書類選考で提出する志望理由書の学習計画を具体的に書くことにも役立ちました。
東大第2次選考当日の思い出はありますか
Tさん 予備校の仲間と一緒の受験だったので落ち着いて受験できたものの、手応えは全然ありませんでした。その分受かった時はうれしかったですね。
Yさん 筆記・面接ともに落ち着いて臨めました。筆記試験の小論文は書きやすいテーマで、これはいけるな、と思いましたね。
Oさん 面接はかなり厳しかった思い出です。志望理由について詳しく質問されました。
帰国生「枠」と呼ばないで
帰国生の強みは何だと思いますか
Tさん 海外で暮らしたこと自体が良い経験ですが、高校とは違う国で教育を受けようと決断して実行に移せた、その行動力が強みだと思います。
Oさん いきなり親の転勤の都合で見知らぬ国に連れていかれ、言語も常識も文化も全く分からない環境で一から人間関係を構築して、勉強も頑張らなければならない。そういう苦労こそが帰国生の強みです。
Yさん そうですね。そういう苦労を経たことで視野が広く、心が強い人が多いと思います。
帰国生として伝えたいメッセージはありますか
Tさん 帰国生で東大を受験する人は内部事情が透明ではないので不安もあると思いますが、海外での経験や受験の準備期間自分が考えてやった対策に自信をもって頑張って欲しいです。
Yさん 受験で生きてくるのは勉強だけではありません。勉強だけでなく友達との交流やボランティアなどさまざまなことを楽しんで欲しいです。充実した海外生活を送ってください。
Oさん 広く東大生に向けてメッセージを言いたいです。「特別に枠が設けられていて帰国生はずるい」という偏見を持つ人がいますが、外国学校卒業学生特別選考は決して人数が決まった「枠」ではなく、東大が本当に欲しいと思った学生だけ取るのです。こういう偏見はなくして、同じく受験をくぐり抜けてきた仲間として切磋琢磨しましょう。
この記事は2020年9月8日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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