文科省が7月28日に公表した2020年度「学校保健統計調査」の結果で、視力が1.0未満の児童生徒の割合が小中学校で過去最多に上ったことが分かった。また、肥満傾向の児童生徒の割合も、幼稚園から高校までのほぼ全学年で前年を上回った。コロナ禍の影響で健康診断の時期が例年より延長されたため、同省は過去の数値と単純比較できないとしているが、専門家は「比較が難しいことを前提として、コロナ禍での学校の臨時休校などの環境変化が影響したと推測することは考えられる」としている。
同調査は国公私立の幼小中高の健康診断結果に基づき、毎年5~17歳までの子供の発育状態と健康状態を調べている。20年度調査は発育状態で5.2%(69万5600人)、健康状態で25.0%(334万921人)の子供を抽出・調査した。ただし、コロナ禍の影響で例年4~6月の健康診断の期間を年度末まで延長したため、過去の数値と単純比較することはできないとしている。
調査結果によると、「裸眼視力が1.0未満」の児童生徒の割合は、▽幼稚園 27.9%▽小学校 37.5%▽中学校 58.3%▽高校 63.2%。高校以外はいずれも前年度より増えて、小中学校は1979年度の調査開始以来、過去最多となった(=グラフ)。特に小学校では年齢が高くなるにつれて増える傾向にあり、小学1年生では約4人に1人であるのに対し、6年生では約半数となった。
また、肥満度が20%以上の肥満傾向児とされる児童生徒の割合は、幼稚園から高校まで、高校1年生を除いた全ての学年で前年度を上回った。特に小学校高学年から中学校にかけて高くなる傾向があり、▽小学4年生 11.5%▽小学5年生 11.9%▽小学6年生 11.4%▽中学1年生 10.8%▽中学2年生 10.4%▽中学3年生 9.6%――となった。前年度は10%に達したのは、全学年を通して小学6年生(10.0%)のみだった。
今回の調査結果について、東京大学の衞藤隆名誉教授(健康教育学)は、健康診断の時期の違いなどから比較が難しいことを前提として、視力低下の傾向については「コロナ禍での環境変化(学校の臨時休校、自宅学習ほか)で、スマホやPCなどの視聴、特に『近業』を長時間続ける機会が増えて視力低下が生じ、集団としての調査に現れるほどの変化が示されたと推測することはできる」としている。
また、肥満傾向の児童生徒の割合が増えたことについても、「同じくコロナ禍の環境変化で運動機会(通学、体育実技、部活動、外遊びなど)が減ったことや、自宅での炭水化物や脂質などの摂取量が増えた可能性が寄与したと考えられ、実証的な研究成果が出れば裏付けが取れると思う」とコメントしている。
文科省は、GIGAスクール構想の開始による児童生徒の視力への影響を懸念して、今年度は全国の小中学生約9000人を対象に、詳細な近視実態調査や屋外での活動状況などライフスタイルの調査も進めており、調査結果を踏まえて視力悪化を防ぐ対策を進める方針。
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