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「私自身は月経の際、体重や…」東大医学生の三段跳・内山咲良が語る“産婦人科医志望”の理由と競技引退への迷い

「私自身は月経の際、体重や…」東大医学生の三段跳・内山咲良が語る“産婦人科医志望”の理由と競技引退への迷い photograph by MATSUO/AFLO SPORT

(Number Web)

5月の関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)で女子三段跳を制した内山咲良は、東京大学医学部医学科の6年生。文武両道を地で行く逸材の素顔に迫るべく、東京五輪選考会でもあった日本選手権直前の6月23日、中学・高校陸上部の後輩である筆者がインタビューを行った。(全3回の後編/前編、中編はこちら)

――医師を志すようになったのはいつ、どんな理由でしたか?

内山 小学校の時に親に医者をすすめられたのが最初だったと思います。それ以外の職業についても「これいいんじゃない?」と結構言いがちな親で(笑)。その時から「医者、いいかな」と漠然と思っていました。

 中学校に入ってからあまり医者以外の選択肢を考えなかったのは、人の身体の勉強が好きで面白いなと思ったからです。自分の身体に起きていることを説明できるのが面白いな、と。中高時代には、医者という仕事は人の身体だけではなくて心にも寄り添うことができるところがすごくいい仕事だなとも思って、結局志望を変えることなく大学で医学部に入りました。

――中高で心にも寄り添える仕事である点に意義を見出したのは、陸上競技に取り組んでいたことと関係する部分があるのでしょうか?

内山 それもあると思います。特に高校の陸上部では途中でやめてしまう人もいたりして、心がつらいのもしんどいものがあるなと気づいたので、総合的に人に寄り添えるのは魅力的だなと思いました。でも今は精神科はやらない、出来ないなと思っています。相手に感情移入しすぎてしまうところがあるのですが、医者としてかかわる以上自分が患者さんみたいになったらダメなんですよね。

周りに月経が来ないという長距離選手もいます

――今はどんな医者を目指していますか?

内山 今は産婦人科に関心を持っています。スポーツ医学に携わろうと思った時に産婦人科医という形で携われる可能性があるということや、オペができてかつ診断にも関われるということから、魅力を感じています。

――スポーツ医学に対して産婦人科からどんな風にかかわりたいですか?

内山 周りに月経が来ないという長距離選手もいますし、怪我で悩んでいてその背景に月経が来ないことによる骨粗しょう症があるケースや、来ているにしても月経前後の身体の変化ですごく悩んでしまうケースも少なくない。競技をやってきたからこそ、そういうところに寄り添えるかなと思うようになりました。

体の変化について、ホルモンである程度……

――産婦人科を志望するきっかけとなった出来事はありましたか?

内山 私自身は月経の際、体重や食欲の変動があったり、若干気分が落ち込んだりはあるんですけど、うまく付き合えていて症状も軽い方なので大丈夫でした。ただ大丈夫と言いつつも、自分の身体の中で月経を中心としてどういう変化が起きているのかということにはずっと興味がありましたね。

 月経が終わったらすごく体重が落ちるなとか、前は何をやっても落ちないなとか(笑)。そういう体の変化について、ホルモンである程度説明がつくんだなということは、とても面白いなと思いました。

©Kyodo

大学6年で引退、と思っていたが

――大学6年の今年で競技は引退になると思いますが。

内山 そう思っていたのですが、ちょっとどうしようかなと迷い始めています。そもそも陸上選手としての自分に期待を持っていなかったので、競技を続けるという選択肢が生じうることをこれまで想定していなかったんですよね。だから、研修医をやる道を先送りにしてまで陸上を選ぶことは難しいです。

 研修医になったら陸上より医学を優先すると決めているので、現時点では、趣味でやるとしても競技としては終わりだなというつもりでいますが、今年どれだけ自分がやりきったと思えるかにかかっているかなと思います。

――競技を継続するという選択肢を考え始めたのはいつ頃ですか?

もし続けるとしたら日本で勝つだけだと……

内山 割と最近の話です。筑波大医学部生で箱根駅伝に出場した川瀬宙夢選手や、外科医でありながらマスターズ100mで優勝した方と対談する機会があって、その時に今後の話になった辺りから迷いが生じるようになりましたね。医者の仕事に支障の出ない範囲で練習を続けることはできるよ、とその二人がおっしゃっていてどうしようかなと(笑)。

 でも、もし続けるとしたら日本で勝つだけだと足りない気がしていて、その先に世界が見え始めたら続けてもいいかなと思っています。今、日本の女子三段跳って「13m跳んだらいいよね」という世界なんですけど、オリンピックの参加標準記録は14m32で、日本記録は14m04くらい。それくらいの記録が見えてこないと、続けるのはな……と。

©KyodoNews

――現時点では、残り短い予定の競技生活で何を目指しますか?

内山 まずは自己ベストを出したいです。一回しか13mを跳べていないのでそれを更新したうえで、日本選手権ではできれば表彰台に乗りたい。全カレ(日本学生対校選手権)も強い選手が出てきますが、表彰台、その先の優勝を狙いたいと思っています。

日本選手権8位は「低調な結果」だった

 取材後に行われた日本選手権で内山は8位入賞。後日、心境の変化を聞くことができた。

――日本選手権8位という結果をどのように受け止めていますか?

内山 率直に言うと、悔しい結果だなと感じています。自己ベストを出したかったし、表彰台を狙っていたので、目標と比べるとかなり低調な結果に終わってしまったなと。

――その結果の要因についてどう考えていますか?

内山 振り返ると、当日は冷静さを欠いてしまったかなと思いますし、体の状態としては出力のピークを過ぎていたのかなと思います。長期的なスパンで見た時のピーキングの失敗と、当日少しメンタル的に落ち着けなかったこと、それによって修正が効かなかったことは、悔いが残る部分です。

――競技引退か続行かで迷っているというお話でしたが、日本選手権を経て気持ちに変化はありましたか?

来年も出たい、一方で研修医になるからには

内山 今年の結果が悔しかったので、来年の日本選手権には出たいなと思っています。ただ研修はやろうと思っていて、出願する予定です。

――最後に、研修と競技の両立は今まで以上にハードだと思いますが、できそうですか?

内山 今までと同じようにはいかないと思いますし、研修医になるからには医学の方が陸上より優先すべきことになってくるので、その点はわきまえてやる必要があると思っています。

 ただ、6年生になってからあまり実習がなくて、陸上ばかりやっている時期が結構あったのですが、そういう状態で試合に臨むのがあまり得意ではないかもしれないと思い始めています。他にやらなきゃいけないことがある中で陸上もやっているという状態の方が自分にはもしかしたら合っているのかもしれないな、と。であれば、研修をやりながらの方がかえって上手くいくのかもしれないという風にも考えています。

内山咲良(Sakura Uchiyama)

1997年12月15日生まれ、神奈川県出身。東京大学医学部医学科6年。筑波大学附属中入学とともに陸上競技を始め、主に走幅跳に取り組む。3年時に都中学通信7位入賞。同高校3年時に南関東高校総体で3位に入り、全国高校総体への出場を果たした。2016年、国内最難関の東京大学理科III類に現役合格し進学。大学4年時に本格的に三段跳を始め、同年、日本学生対校選手権で準優勝。5年時は日本選手権6位。今季は関東学生対校選手権優勝、日本選手権8位。自己記録は、走幅跳5m78、三段跳13m00。

文=町田華子

photograph by MATSUO/AFLO SPORT

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