城西川越中学校・城西大学付属川越高等学校(埼玉県川越市)は今春の大学入試で現役合格率96.2%をマークした。国公立大学に限れば現役合格者数は4年前の1.8倍に上っている。背景には、生徒一人一人に合わせ、卒業生の協力も加わった手厚い進学指導があるという。来年度の中学校創立30周年、高校創立50周年を前に「現役進学率100%」を目指すという同校の進学指導について取材した。
国公立大学への現役合格者は4年で1.8倍
今春の大学入試で同校は、卒業生183人に対して176人が合格を手にし、国公立と私立を合わせた現役合格率は前年の87.1%を大きく上回る96.2%を記録した。合格件数のうち学校推薦型選抜と総合型選抜の割合は全体の11%程度だといい、実績の多くは一般入試にチャレンジした生徒たちによるものだということが分かる。
国公立大学の志望者が多いのも特徴で、今春は既卒者を含めて32人が国公立大学に合格したが、うち29人が現役生であり、国公立大学への現役合格者数は4年前の1.8倍に上っている。
昨春以来の新型コロナウイルス感染で休校が続き、全国的に勉強の遅れが懸念された中で、同校の生徒たちが見せた活躍について、進路指導部長で地歴公民科担当の本名俊之先生は「本校は、ほとんどの科目の必修内容を高2までに終えるようカリキュラムを組んでおり、高3では問題演習に専念することができます。そのことも功を奏したと言えます」と話す。休校中には、学習用の資料だけでなく「進路通信」を生徒宅に郵送し、受験への意識が途切れないように気を配ったそうだ。
この実績について田部井勇二校長は、「大学を偏差値で選ぶのではなく、どのような道に進んで何をやりたいのか、教師が一人一人の生徒の思いを受け止めて進学指導を行ってきました。その成果が、数字に表れているものと思います」と話す。「新しい学びが得られたとき、生徒たちの『目』は変わります。その瞬間を大切にしつつ、個性と学力を伸ばし、心豊かな人間を育てるための教育を大切にしてきたつもりです」
中1から目標意識を高める手厚い進路指導
好実績の背景には、個々の生徒の頑張りだけでなく、学校の手厚い進路指導がある。同校の進路指導部には12人の教師が所属し、進路指導関連行事のプランを立てている。高1では「進路適性検査」を行い、高1、高2の夏休みにはオープンキャンパスの見学会を実施。高3では大学の入学担当者を招いての「大学説明会」を開く。その一方で、「卒業生講演会」や外部講師を招いた「進路講演会」を企画し、受験への意識を高めていく。
また、進路指導部では普段から独自に大学入試データの収集や分析を行い、毎年「進学資料集」という冊子を作成している。「進学資料集」には各年の大学入試の全体的な傾向や生徒たちの受験結果、模試や学校での成績によってどの学部のどの学科への合格率が高まるかといったことが細かく記載されている。卒業生による受験体験談も収められ、身近なデータとサンプルから、生徒たちが目標の大学・学部を検討することができるようにしている。
同校は部活動も盛んで、高校の部活動参加率は90%に及ぶが、放課後は講習やGoogle Classroomでの授業配信を活用して、学力を高める環境も用意している。本名先生は「まず授業でしっかりと受験対策を行い、放課後の講習でさらに力を伸ばします。校内で自由に自習し、教師に気軽に質問できる環境もあります。受験のために塾や予備校に通う生徒は決して多くはないですね」と話す。今年東京大学、東京工業大学に現役合格した生徒も、塾・予備校通いはしていなかったそうだ。
さらに来年度の中学校創立30周年、高校創立50周年を記念して、中学では昨年から「意欲応援プロジェクト」が進んでいる。カリキュラムの再編などに加え、中学入試制度を多様化。特待生制度を充実させるなどして学ぶ意欲の高い受験生を応援しようとしている。「中高で教員が生徒たちの情報を共有し、中1の時から国公立大学の魅力を伝えるなどして、大きな目標を持つよう意識を高めています」と本名先生は話す。
卒業生や生徒同士の強い絆が力を育てる
進路指導の仕組みを充実させる一方、生徒一人一人に合わせた指導を実現するために、個別相談も随時行われている。保護者を交えた三者面談で生徒が大学選びに悩んでいると分かれば、教師が志望候補の大学に通う卒業生にその場で電話を入れ、卒業生を交えた「四者面談」になることさえあるという。
「卒業生との強い絆があるからこそ可能になることです。先輩たちの実体験は生徒たちに大きな影響があり、授業の中でも『〇〇大学に進んだ××君はこんなことを言っていた』と話題になることがあります」と、進路指導部副部長で理科を担当する塩田昌弘先生は言う。なかには、在校時に使っていたテストの解き直し、授業ノートを「後輩の参考に」と残す卒業生もいて、生徒たちはいつでもそれを参照できるようになっている。
「先輩がしてくれたことを自分も他の人にしてあげたい」と、生徒同士が互いに勉強を教え合うのも、ごく日常的な光景だという。今年東大に現役合格した生徒は、休校中自主的にオンライン会議システム「Zoom」で他の生徒たちに勉強を教えていたそうだ。放課後の講習でも、部活の先輩が講習を受けている姿を見て後輩が参加するようになるなど、「勉強は皆でやるもの」という意識が学校全体に浸透しているという。
同校は今後、現役合格率100%、すなわち「一人一人が大学合格できる学力を身に付けること」を目標とし、さらには現役進学率100%、つまりすべての生徒が自分の行きたい大学に合格することを目指す。
「中学入学時は、すべてが特別できる子供たちというわけではないのです。ただ、授業や部活、教師や生徒同士の関係から強く刺激を受けて、頭脳と心が大きく成長していきます」と田部井校長は語る。「そのようにして育った力は、卒業しても大学や社会で大いに役に立ってくれるものと信じています」
(文:足立恵子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:城西川越中学校・城西大学付属川越高等学校)
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