東大合格を目指す高校生7人の奮闘を描くTBS日曜劇場「ドラゴン桜」(日曜後9・00)。劇中に登場する勉強法や問題は、偏差値35から東大に合格した“リアルドラゴン桜”の著作家・西岡壱誠氏(25)が監修している。嫌みな秀才・藤井のモデルも、実は西岡氏自身。西岡氏に東大監修の舞台裏を聞いた。
俳優の阿部寛(56)が主演を務め、2005年7月期に金曜ドラマ枠でヒットした学園ドラマの16年ぶり新シリーズ。前作は、経営難の三流私立校・龍山高校を舞台に、元暴走族の弁護士・桜木建二(阿部)が落ちこぼれの生徒を東大合格へ導いた。今回の原作は、18年から週刊漫画誌「モーニング」(講談社)に連載されていた三田紀房氏の「ドラゴン桜2」。前作の原作「ドラゴン桜」(03~07年連載)の15年後を描くが、今作は現代の日曜劇場にふさわしいエッセンスを盛り込んだドラマオリジナルの物語が展開される。
阿部が伝説の弁護士・桜木役に再び挑戦。女優の長澤まさみ(33)が桜木の教え子・水野直美役を続投。水野は一浪して東大に合格し、弁護士資格を取得。続編はドラマオリジナルの舞台・龍海学園の教頭・高原浩之(及川光博)が学園再建のため、桜木と水野を招き、幕を開けた。
西岡氏は高校3年時の偏差値35から2浪の末、自ら開発した「暗記術」「読書術」「作文術」により偏差値70にアップ。東大模試全国4位になり、2016年度、東大文科II類合学を果たした。1年生の時から現役東大生作家として執筆業を始め、「東大読書」(18年)「東大作文」(19年)「東大思考」(20年)はシリーズ累計40万部のベストセラーとなった。
原作漫画「ドラゴン桜2」に勉強法などの情報を提供。全国6つの高校で「リアルドラゴン桜プロジェクト」を実施し、高校生に思考法・勉強法を教えている。20年3月にはコロナ禍により休校中の学生に向けたYouTubeチャンネル「スマホ学園」を開設した。
ドラマの東大監修として、西岡氏は脚本やストーリー展開に沿い「こんな勉強法や問題があります」と制作サイドにアドバイス。原作漫画にある勉強法や問題もそのままドラマに登場するが、例えば、第5話(5月23日)にあった語彙力アップ法「マジカルバナナ」(お題から連想される同義語・反対語・類似語など関連ワードをリズムに乗って答えていく=漢字2文字縛りの「マジカル天気」)や、その形から「和同開珎」(上下左右「夏、耳、青、白」の真ん中に入る漢字は?=答え「空」)と呼ばれ、名門・灘中学の入試に毎回出題されるものは原作漫画にないもの。西岡氏が提案した。
第3話(5月9日)、東大専科VS難関大コース対決に登場した英作文の問題「もし他人の心が読めたらどうなるか、考えられる結果について記せ。複数の文を用いて構わない」(12年度の東大入試に実際出題、一部改編)。東大専科に敗れた藤井の解答も原作漫画にはなく、西岡氏が作成した。
藤井は「もし世界中の人が心を読むことができるようになったら、世界平和が訪れる。なぜなら戦争が発生しなくなるからだ。世界中で犯罪や不正が減ることが期待でき、またそれらのことからジャーナリズムの役割も薄れると考えられる」と答えたが、桜木は「長い。それに何を言っているのか、よく分からない。(『人の考えが読めたら、ウソがつけなくなるから、平和になる』というなら)『ウソがつけなくなるから』という説明の一文が足りない。論理性に欠けている上に、難しい単語や言い回しを使い過ぎている。だからスペルミスも多い」と指摘。10点満点中5点しか取れなかった。東大専科の3人は「もし心が読めたら、試合に勝ちやすくなる。なぜなら試合相手の考えを読めるから」などとシンプルに答えた。
西岡氏は「東大受験生が陥りがちなミス。いくら高尚なことを書いても、あれだと点数は低く出てしまうという解答例を僕の視点から作らせていただきました」。東大専科の成績の伸び具合も、リアリティーが出るように腐心。今夜の第7話は東大専科の7人が東大模試を受けるが「今の彼ら彼女らなら、どのくらいの点数を取るのか。この問題なら解ける、ここはミスをするなど、細かく設定させていただきました」と明かした。
第6話(5月30日)で昆虫が大好きな心優しき生徒・健太(細田佳央太)と仲直りして東大専科に入ったものの、それまでは優秀ゆえに他人を見下す癖があった嫌みな秀才・藤井(鈴鹿央士)のモデルは、実は西岡氏自身。桜木も「藤井、おまえの敗因はその性格の悪さだ。おまえはたった1人で勉強した。だが、おまえの失点は誰かの助言さえあれば、簡単に避けられたものばかりだ。東大ではよく多角的な視点を問う問題が出題される。それはつまり、あらゆる立場にいる人間の気持ちが想像できる、そんな人間が欲しいという東大からのメッセージだ」(第3話)「藤井には共に頑張る仲間がいなかった。それが敗因だ。東大受験は集団で目指す方が圧倒的に合格率が高い」(第5話)と説いた。
西岡氏は「現役と1浪の時は『自分のやり方が正しい』と思い込んでいた部分はありました。先生の言うことを聞かなかったり、周りの子たちがどういうふうに勉強しているか気にしなかったり。それが2回目も落ちた時、『さすがにこれは自分のやり方が間違っていたんじゃないか』と痛感しました。そこから東大に合格した友達や予備校の仲間からノートを借りたり、勉強法を聞いたり。みんなのやり方を参考に自分の勉強法をガッツリ変えて『みんな一緒に合格しよう』と受験への向き合い方も変わりました。第5話に登場した『マジカルバナナ』の勉強法も、みんなと一緒に勉強しようと考え出したものです」と述懐。独りよがりだったと自戒した。
「あまり知られてないですが、東大は不合格が決定した次の日に、判定が届くんです。模試と同じようにA~E判定で『あなたは、このぐらいの点数で不合格になりました』と。ひどい話ですよね」と笑いながら「僕は2回ともE判定でした。現役の時は偏差値35から1次試験は突破したので、偏差値60ちょっとぐらいまで明確に成績が上がったんです。それが1浪の時もE判定。全然、成績が上がらず『これは謙虚にならないとダメなんだ』と思い知らされました」。2浪して得た何ものにも代えがたい経験が今に生きている。
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