県立高の倍率は?レベルは?出題傾向は? さあ本番!県立高入試攻略ナビ – 愛媛新聞

花のつくりとはたらき

 全県で8千人以上が志願する県内最大の入学試験、県立高入試が3月3、4日に行われる。本番を控え発表された各校・学科の倍率の最注目は、近年では突出した志願者を集めた松山北の1.47倍だ。果たしてその背景は-?


 県立高入試の志願動向、出題傾向、さらに本番まであと10日ほどの学習法について、県内外、県・私立の入試事情に精通する総合学習塾「寺小屋グループ」の執行役員・管理本部長、大井崇さんが徹底解説する。(数字は志願変更前)(坂本敦志)

■高倍率の松山北 当日170点を目標に

寺小屋グループの大井崇さん

1.47倍という県立高普通科としては異例の高倍率となった松山北

 2月16日に県立高入試の倍率が発表されました。松山北の高倍率には驚きました。 今年は松山北にかなり集中したなという印象があります。これほど高いことは、最近ではありませんでした。高くなることは想定はしていたのですが、想定以上です。

 例年でも松山北は、1.15倍前後から、年によっては1.20倍を超える高めの倍率でした。その理由はどこにあるのでしょう。 最難関の松山東は、中学の最初から「松山東に行く」という目標を持っている生徒で固まっています。志願者は「少数精鋭」という状況です。松山南は現役での国公立大への進学を目指し、地元志向が強い人が志願することが多いです。


 一方、松山北は文武両道で部活動も盛んなので「大学進学も見据え、なおかつ部活動もしっかりやりたい」という中学各校のボリュームゾーン(最も多い層)が志願する傾向にあります。


 松山の地区的な要素もあります。通学の距離という点では、松山城を挟んで南の城南地区には松山南や松山中央という普通科の高校があります。松山北のある城北地区は、松山中央や伊予は距離が遠いので通いづらい。あとは私立になるので、城北地区の県立志向の生徒については、普通科だと松山北になってきます。それが毎年倍率が高くなる要因で、そこに城南地区から松山北を目指す生徒が出てくるとさらに膨れ上がるという現象です。


 この倍率で不安になる生徒もいると思います。 倍率が高くなったとしても、ある程度の合格の基準点がそこまで大きく変わるわけではありません。求める目標点へきちんと対応していけば合格はつかめるでしょう。

 合格ラインは上がる見通しですか。 県立高入試は2段階選抜です。1段階目の選抜に関してはほぼ同じだと思いますが、2段階目の最後の部分、そこは高くなってくるでしょう。

 具体的に目標とする点数は何点ぐらいでしょう。 調査書の点数と当日の点数になってきますが、松山北は通常だと当日点170点が基準になってきます。実際は150点ぐらいでも合格することもありますが、安心してしっかり目指すというところでは170点を目標としてほしいと思います。

 これだけ倍率が高いと志願変更を考える生徒もいると思いますが、柔軟に変更した方がよいのでしょうか。それとも初志貫徹した方がよいのでしょうか。 生徒によって違うと思います。その先の大学進学を考えたり、部活動のことであったり。それぞれの状況によって変わってはくると思います。多少は松山中央に変更する可能性はあるでしょう。ただ大量には動かないのではないかなと見ています。

■東南予の志願者 地域トップ校に傾斜

最も高い倍率は松山工情報電子の1.70倍。毎年人気の学科となっている

 松山地区の他の学校や東予、南予の倍率はどうでしょう。 松山東は昨年より下がりました。だいたい松山東と松山南が交互という感じです。松山東が下がるときは松山南が上がります。


 中予に比較して、東予と南予のギャップが大きくなってきています。今治西、今治北については1.00倍を上回っていますが、それ以外の学校、今治南は下回っています。新居浜も同じような状況です。新居浜西は1.00倍を超えていて、新居浜東は下回っています。


 宇和島東も昨年より高いですね。それぞれの地域のトップ校に関しては志願者が集まりますが、それ以外はほぼ1.00倍を切っています。八幡浜はここ数年1.00倍を下回っているので、人口減少の影響が出ているのかもしれません。


 全県で0.90倍です。少子化と定員のバランスが取れてないのではないかと感じます。 全県ではそうかもしれません。中予でも人気のある学校はかなり高いですが、二極化してきているのかなという面はあります。松山工、松山商も人気のある学科がある程度決まっていて、資格取得や大学への推薦があるという点で目指す生徒が多いと高倍率になります。

■松山南、松山西、済美平成が同じレベル

 進学面で私立を含めた各校のレベルはどのような状況ですか。模試の成績や大学進学の実績からどうでしょうか。 愛光をトップとして、進学実績でみると県立では松山東、松山南、松山北の順。松山南と、松山北の間ぐらいで松山西中教校です。済美平成もそれぐらいです。学年によって上下しますが、松山南、松山西、済美平成ぐらいが同じぐらいの実績です。


 新田青雲は、高校世代の模試の結果を見ると、松山北と松山中央の中間ぐらいではないかなと思います。ただ私立の中高一貫校の生徒の学力は二極化しています。小学6年の時の学力から中学校の3年の間に、校内で大きな差ができてしまっている現実があります。県立高は高校入試で選抜しているので、高1の段階で同じ学力の子がそろいます。特に進学校だと同じ環境、同じレベルで入ってきて、3年間で勝負すると形になりますが、中高一貫の私学は、中学の3年間の差をそのままに高校に上がり、さらに後半3年で格差が広がってしまう可能性があります。


 私立高の済美や新田の特進コースはどのあたりのレベルになってくるのでしょう。 最難関の国公立に進む、松山東の上位層と同じような生徒は少数だと思います。地元の国公立、愛媛大への現役合格がメインになってくるかなというところです。実績として松山南を目指すような状況でしょう。

■出題 各教科の文章量が増加

県立高入試では、近年の文章量の増加に対応できる処理能力が必要になる=写真は2021年度の県立高入試

 県立高入試の出題傾向についてはどう見ていますか。 比較的基本的なことを聞く問題の割合が他県に比べると多いので、そういう面では取りこぼしをしないことが大事になってきます。


 ただ大学入試の変革もあり、思考力、判断力、表現力を重視する問題が年々増えています。文章量はかなり増えました。20年前と比較すると英語の長文は、2001年は292語。21年は約2倍の569語になってきています。理科の物理の問題文も、21年は05年の1.5倍です。やはり処理能力、読解力が求められています。それに加えて、理科や社会では実験や表といった資料を多く使う問題が増えてきている。しかも答えが記号ではなく、記述式の問題もやはり増えている。中身が濃くなっているので、それに対応する練習は、以前よりかなり行わないといけません。


 ポイントになる教科、分野はありますか。 英語は文章を読解するスピードと、語彙力が重要になってきます。文法的な面はそれほど変わっていないので、単語をどれだけ知っているかが大切です。数学に関しては計算力ですね。中身が濃くなっているのでその処理能力が必要になってきます。


 理科と社会は資料系の問題、理科は特に実験の問題が多いので、物理、化学で点数の差が付きます。以前は一つの大きな単元で一つの学年だけで習ったところが一つ出題をされていたのですが、理科に関しては中1から中3まで学んだことをまんべんなく出してくるので「ヤマを張る」ことはないですね。社会はSDGsを題材にした問題が、英語の長文の中の題材や他の科目でもあるのですが、ところどころでSDGsを題材にした問題が見受けられるようになってきました。

■受験生の不安を聞いてあげて

受験生に不安は付きもの。不安を聞いてあげるだけで、次に進むきっかけになる=写真は2021年度の県立高入試

 今から3月の入試本番までこういったことをやっておけばいいということありますか。 勉強面に関しては、新しい問題集はもうやらないことです。今までの問題集の解き直しですね。特に間違えていた問題を解き直すことによって、知識の回復を行う。また、緊張して実力を発揮できないことがあってはいけません。普段はできていても、本番でも同じスピードで処理ができるようトレーニングを繰り返していくことです。


 生活面では、やはりこういう新型コロナウイルスの状況があるので、コロナ対策を含めた基本の部分、普段の健康管理をしっかりと行う。そして毎日の生活のサイクルを急に変えないことです。試験前だからといって急に遅くまで勉強を始めるようなことは避けるべきです。いつも通りのサイクルを守ってください。


 受験生の家族の皆さんへのアドバイスは。 中学受験は小6なので親の受験という面も少しありますが、高校受験は本人がある程度しっかりしています。試験前なので子どもが不安になることもありますが、とにかくその話を聞いてあげてほしいと思います。本人は分かっていてあえて不安を口にすると思うので、それを聞いてあげてください。吐き出すだけでそれで整理できて、次に進むことができるはずです。

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