全国の公立小中高校、特別支援学校で昨年4月、計2558人の教員が計画通りに配置されず、教員不足が生じていた。文部科学省が初めて実施した調査で明らかになった。
教職を志望する人は減少傾向にある。その背景には、教育現場が「ブラック職場」と言われるほど多忙なこともある。国は正規の教員を増員し、過重な負担の解消に取り組むべきだ。
調査は教員の計画的採用に役立てようと、68の都道府県・政令指定都市の教育委員会を対象に実施。昨年4月の始業日時点で全体の5・8%の1897校で教員が不足した。本県は4月時点で小中学校に不足はなく、高校2校で4人、特別支援学校5校で12人が不足していた。
産休や育児休業、病気休職による欠員は年度途中に増える傾向がある。文科省は年度初めだけでなく2、3学期も調査すべきだ。より正確に実態を把握し、対策を進める必要がある。
不足の理由(複数回答)を巡っては、産休や育児休業の取得者数が「見込みより増加」としたのが53教委で最多だった。「病休者が増加」「特別支援学級数が増加」などが続いた。
全国的に団塊世代の教員の大量退職に伴い教員の若返りが進んだ。当然、産休、育休の取得者は増加している。精神疾患による休職者は年間5千人前後という状態が続く。調査結果は、こうした状況に各教委の対応が追い付いていないことを示している。
各教委は将来の児童生徒数や定年退職者数の予測に基づき計画的に教員の採用、配置を行っている。休職者が出た場合、従来は教員採用試験を目指す教員免許保有者を臨時講師に採用することが多かった。
小学校の採用試験の競争率は20年度、全国平均で過去最低の2・6倍だった。長時間労働が常態化する学校を就職先として敬遠する風潮が広がっていることを指摘する関係者は多い。教員志望者とともに臨時講師のなり手が減少している。
欠員が生じた場合、小学校では少人数指導のために配置した教員や校長、教頭がカバーするなどしていた。中高校では理科や数学などの担当者が見つからない例もあった。各教委や学校任せでは限界がある。状況改善は国の責務だ。
文科省は外部人材の活用や事務職員の配置などにより教員の負担軽減に取り組む。しかしパソコン端末を使った授業実践や小学校での英語教科化など、新しい課題が増えている。根本的に状況を改善するには、正規の教員の増員が不可欠だろう。
岸田文雄首相は「人への投資」を強調し、教育改革に取り組む決意を表明している。教職は未来を担う世代と向き合い、育てる大切な仕事。子どもたちの成長にやりがいと喜びを感じながら取り組むのが本来の姿だ。国はそんな魅力ある教育の場を実現させなければならない。
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