未曾有の惨害となった日本のオミクロン株。世界と比べて明らかな検査不足。その結果の統計崩壊 – 日刊SPA!

未曾有の惨害となった日本のオミクロン株。世界と比べて明らかな検査不足。その結果の統計崩壊-–-日刊spa! 花のつくりとはたらき

希望的観測を全て蹴散らしたオミクロン株Surge

コロナ

写真はイメージです

 南アフリカ共和国(南ア)でオミクロン株(以下、ο株)が発見・報告されたのが2021年11月24日でしたが、それからわずかひと月で、ほぼ全世界の国々でο株Surge(サージ;波)が発生し、現在発見から3か月目に入りました。南アでの日毎新規感染者統計を見るとο株Surgeは、2021年11月初旬に始まっていますので、ちょうど丸3か月経過しています。筆者は、11月24日1月15日公開の日刊SPA!記事中で、第6波エピデミックSurgeの予測を公開しましたが、現実は、最悪の推移をとりつつあります。1月31日には、文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」にてお話しさせていただいていますのでご参考下さい*。
<*放送アーカイブ 大竹まこと ゴールデンラジオ!「大竹メインディッシュ」2022年1月31日 牧田寛 PodcastQR 文化放送

 本邦では、ο株が2021年11月29日に空港検疫で発見され、12月中下旬、12月20日頃から沖縄県、中国地方で第6波エピデミックSurgeがο株ドミナント(主体、主たる地位)に変わり始め、年末年始には、ほぼ全都道府県でのドミナントがο株に置き換わりました。

 一番遅かったのは東北で、例えば宮城県では2022年1月4日には日毎新規感染者数の波形がο株Surgeに特徴の急峻な伸びに変わっています。

 正確かつ正式なドミナントの推移は、国立感染症研究所(感染研)によるゲノムサーベイランス結果を待つことになりますが、本邦はゲノムサーベイランスがとても遅く、確定値が出るまでには8週間を要します。そのため筆者は、日毎新規感染者数統計の波形変化からドミナントの変化を推定しています。

「ο株は、弱毒性で普通の風邪」などという科学的にも医学的にも何の根拠も無い風説を撒き散らす人やメディアが本邦でも多数見られ、政府もそれに惑わされてきましたが、案の定、2022年2月3日現在で日毎死者数はδ株Surge(第5波)を上回り、過去最大の第4波を上回ることはほぼ確実です。

 加えて過去最大の死者数を計上した第3波もおおきく上回ると見込まれます。

 これは、SARS-CoV-2が空気感染する上にο株が「もはやこれ以上の感染力を持つ株は現れないだろう」と言われたδ株を桁で上回る、麻疹(はしか)並みかそれを超える感染力を持つ株であるためです。検査の飽和による統計の歪みを補正すると、δ株の10倍以上の高さの波となっていることが根本的原因です。また、沖縄県のように死亡統計が集計の遅れで45〜60日程度遅延している自治体を除き、多くの自治体で死亡のο株Surgeが始まっています。このことからも、ワクチン接種による死亡回避が発揮されているとしても第2波の欧州系株程度の毒性は少なくともあると筆者は考えています。

 以上の事実はο株が、インフルエンザ(Flu)でも強毒性のアジアかぜなどより強力であることを示します。一方で、Flu対策に比べれば強力な感染症対策を本邦では民間の個々人主導で行っていること、第1世代COVID-19ワクチン接種事業の成功などによってスペインかぜほどの死亡は生じなくなっています。

 少なくともο株は弱毒性でただの風邪などと言う極めて非科学的かつ根拠のない主張は、ο株Surgeの前には鎧袖一触(がいしゅういっしょく)となりました。

日本における日毎新規感染者数(青/ppm)と日毎死亡者数(黄/ppm)、検査充実率の推移(黒/片対数 左軸) 2021/01/01〜2022/02/03

日本における日毎新規感染者数(青/ppm)と日毎死亡者数(黄/ppm)、検査充実率の推移(黒/片対数 左軸) 2021/01/01〜2022/02/03。(NHK集計と厚労省集計。統計処理と作図は牧田による)

 本邦での第6波エピデミックSurgeは、11月に季節性のδ株Surgeとして始まりました。これは全北半球世界で共通です。ところが11月に発生したと考えられるο株が一挙に全世界に広がり、英欧米諸国では12月25日までにο株Surgeに入れ替わり、本邦でも12月20日から1月5日にかけて概ね西から先に順次ο株に入れ替わってゆきました。

 ο株は、海外で倍加時間(日毎新規感染者数が二倍に増える時間)が1.5日から3日という驚異的な速度が報じられていました。δ株での倍加時間は、7〜14日でしたのでこれはおそるべき数値です。本邦でも12月末から1月初めにかけて倍加時間が1日未満、実効再生産数12〜14という凄まじい増加を示しましたが、その結果、1月10日前後には全国で検査が飽和し、新規感染者を大量に取りこぼす様が統計に表れています

 これは、第3波の東京、第4波の大阪、第5波の東京が代表ですが、検査充実率(TCR;一人の検査陽性者を見つけるのに何人の検査をしているかという数値で検査陽性率の逆数)が10を割り込むと指数関数的増加を示している曲線が折れ曲がり増加率が大きく緩和します。これによって実効再生産数(一定期間に1人の感染者から何人の感染者が生じるか)が急速に減衰するように見えます。

日本における日毎新規感染者数(青。ppm)と検査充実率の推移(灰色。片対数 左軸) およびPCR検査人数の推移(赤人 線形 右軸)2021/01/01〜2022/02/03

日本における日毎新規感染者数(青。ppm)と検査充実率の推移(灰色。片対数 左軸) およびPCR検査人数の推移(赤人 線形 右軸)2021/01/01〜2022/02/03(NHK集計と厚労省集計。統計処理と作図は牧田による)

日本における日毎新規感染者数と日毎死亡数の推移(青・黄ppm片対数 左軸) および実効再生産数(緑)の推移2021/01/01〜2022/02/03

日本における日毎新規感染者数と日毎死亡数の推移(青・黄ppm片対数 左軸) および実効再生産数(緑)の推移 2021/01/01〜2022/02/03(NHK集計。実効再生産数は西浦博博士の計算式を簡易化したもので東洋経済オンラインのものと同じである。統計処理と作図は牧田による)

 第5波では、厚生労働省による積極的疫学的調査の縮小を求める連絡文書の翌々日8月1日に統計の不自然な変化が始まり、第6波では1月10日頃を中心に47都道府県全てで同様のことが生じています。これが検査飽和であり、第6波では検査充実率(TCR)が10を割ると生じています。その後更にTCR<5程度で統計が富士山型となります。これは自然科学ではあり得ないことで、理工学系の大学生ならば学部学生実験までには、測定が飽和している(Saturationから「サチッている」)という事を体験し、学びます。人文社会学系でも教職課程を取れば、必ず学生実験で学びます。

 簡単に言えば、3V用の直流電圧計で単一号乾電池の電圧を測れば1.5Vを示しますが、9Vの乾電池(006P積層乾電池)を測っても3Vしか示さないので15V程度迄計れる測定器を使います。これは小中学校理科で学ぶことです。

 本邦は、世界唯一の「PCR検査の感度は70%、特異度は99%で精度が低い、検査をすれば誤診で患者が増える」という科学的事実、原理から極端に乖離した国策エセ科学・エセ医療デマゴギーによる検査抑制主義によって極めて貧弱な検査態勢を2年間堅持しており、常に3Vの直流電圧計で5V(第3波)、25V(第4波α株Surge)、50V(第5波δ株Surge)、1000V(第6波ο株Surge)を計っているようなものとなっています。

 検査飽和すると「実効再生産数が減ったバンザイバンザイ」などという専門家が毎回現れますが、特に第5波と第6波では明確に検査が飽和して検査が壊れたために実効再生産数がその後無意味なものとなっただけです。こんな高校生でも理解できる事を誤る専門家がウジャウジャ居るのが本邦です。

 何故このような事になるかと言えば、前述の国策エセ科学・エセ医療デマゴギーによる検査抑制主義によってPCR検査能力を増強しないからです。このことは、全区間の統計をグラフ化すると自明で、ピーク時には僅かな検査資源を寄せ集めて多少増えますが、基本的な検査能力は第3波以降ほぼ一定です。これでは、第3波に比して100倍を超え、1000倍にも達する大津波であるο株Surgeには、本邦の検査態勢は、僅か10日程度で瞬殺されて当然です。

日本におけるPCR検査人数(橙)、検査充実率(灰)、日毎新規感染者数(青)と日毎死亡数(黄)の推移(ppm片対数 左軸) 2020/01/01〜2022/02/03

日本におけるPCR検査人数(橙)、検査充実率(灰)、日毎新規感染者数(青)と日毎死亡数(黄)の推移(ppm片対数 左軸) 2020/01/01〜2022/02/03(NHK集計・厚労省集計。統計処理と作図は牧田による)

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