オミクロン株による新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受けて、佐賀県内でも学校の休校や学級閉鎖が相次ぐ。「不安を抱えた子どもたちを1人にしない」「学びを止めない」と、学校現場はオンライン授業の導入を急ぐが、パソコン越しでも分かりやすい授業をどう実現していくか、試行錯誤を続けている。
整然と並ぶ机と椅子。教室に子どもたちの姿はなく、黒板にチョークを走らせる音だけが響く。佐賀市の赤松小はクラスター(感染者集団)が確認され、25日から学級閉鎖に入った。
「このくらいの位置でいいかな」。板書がきちんと見えるか、ワイヤレスイヤホンを耳に付けた30代の男性教諭が、パソコンの画面越しに声を掛ける。
佐賀市では、小中学生に1人1台デジタル端末を配る文部科学省の「GIGAスクール構想」もあって、昨年夏までに小学校35校、中学校18校に、合わせて約1万8千人分の端末を整備した。
赤松小でも、家庭の通信環境の確認や、ビデオ会議アプリの導入などを進めてきた。だが、「子どもたちに端末を持ち帰らせたのは、これが初めて」(男性教諭)だという。
「会えないのが一番つらいが、オンライン授業があるから、まだ子どもたちの様子も見られる」。オンラインでも理解しやすい授業を工夫し、例えば理科では画面越しに実験を観察させたり、図工の時間は設計図を考えさせたりしてきた。
浅井慎司校長も「学習機会の確保だけでなく、画面越しでも毎日顔を見せ合うことで、少しでも子どもたちの安心感につながれば」と狙いを語る。
県内では赤松小のほか、臨時休校となった武雄市の北方小でも児童が各自タブレット端末を持ち帰った。自宅でそれぞれ課題に取り組み、一部の学年ではオンライン授業も行っている。
県教育委員会は今月中旬、緊急時にオンライン授業を実施できるかを、県内20市町すべての教育委員会に尋ねた。「実施できる」と答えたのは15市町にとどまり、5市町は「準備中」「検討中」。業者との現行の契約には端末の持ち帰りが想定されていなかったり、低学年の端末が間に合っていなかったりするという。
オンライン授業は、教員一人一人がどれだけパソコン操作に習熟しているか、スキルの違いが影響するのもネックだ。
白石町教委(杵島郡)は「端末はそろっていて、通信環境がない家庭の子どもたちも、学校や公共施設で授業を受ける形を考えている」としながらも、「教員のノウハウ不足が心配」と打ち明ける。「教室での授業をただ流すぐらいは大丈夫だが、学級閉鎖に入ってクラスの全員と双方向の授業をやるとなると…」と不安視する。
さらに、トラブル対応に当たるICT(情報通信技術)支援員不足も心配の種。2日間の学級閉鎖が2回あった江北町教委も「端末は昨年9月にそろえたが、まだ一度も家庭に持ち帰らせたことがない。即座の対応は難しい」と頭を悩ませる。
「第6波」の荒波に直面し、教育現場やそれを支援する各教育委員会の対応力が問われている。(大橋諒、小野靖久、澤登滋)
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