ほぼ全ての教科をクラス担任が教える小学校の授業が、変わろうとしている。専門性の高い教員と担任が連携し、効果的な指導につなげたい。
小学5、6年を対象に、一部教科を専門の教員が教える「教科担任制」が今春から本格的に始まる。英語、理科、算数、体育の4教科を中心に導入するという。
学級の担任を持ちながら得意分野の教科を他のクラスで教えたり、近隣の中学校から派遣された英語教員が小学校の授業をしたりすることが想定されている。
導入の目的は、授業の質向上と教員の負担軽減だ。
小学校では明治期から、担任が全教科を教える「学級担任制」が基本とされてきた。だが、近年は英語やプログラミングなど、教える内容が専門化している。
小学校の教員の中には理数系に苦手意識を持つ人が少なくない。専門性のある教員が指導すれば、教科の面白さが伝わり、児童も内容を理解しやすくなるはずだ。
中学校は教科担任制が実施されている。児童たちが小学校卒業後、スムーズに移行できるという効果も期待されよう。
労働時間が長い教員の働き方改革にも役立つとされている。
教科担任制が導入されれば、担任は一部の教科を他の教員に任せることができ、空いた時間は授業の準備やテストの採点などに充てられる。教員の多忙感解消につながるだろう。
ただ、学級担任制の良さも忘れてはならない。小学校では、担任と児童が長い時間をともに過ごすことで信頼関係が築かれる。児童の学習状況を把握し、クラスの人間関係のわずかな異変を察知しやすいというメリットがあった。
教科担任制の導入後は、担任だけでなく、複数の教員が児童に関わることになる。教員同士が児童の様子をきめ細かく情報交換することが不可欠だ。児童の成長は学校全体で担うという意識を教員の間で共有しなければならない。
小学校では、先行して制度を取り入れている自治体も多い。理科や音楽については、すでに公立小学校の半数が導入している。
文部科学省は、成功事例や課題を全国の自治体に広く共有してもらうことが大切だ。
山間部などの小規模校では学校内の教員の融通だけでは教科担任制の実施が難しいだろう。各教育委員会は、地域の事情に応じた教員の配置を考えてほしい。OBなどの外部人材も活用して教員の負担を軽減する工夫も重要だ。
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