【特集】コロナ禍乗り越えハイブリッド開催で進化した学園祭…世田谷学園 – 読売新聞

【特集】コロナ禍乗り越えハイブリッド開催で進化した学園祭…世田谷学園-–-読売新聞 花のつくりとはたらき

 世田谷学園中学校・高等学校(東京都世田谷区)は昨年11月27、28の両日、学園祭「第56回
獅子児祭(ししじさい)
」を開催した。一昨年はコロナ禍の影響を受けてオンライン展示のみだったが、昨年はオンラインとオフラインとを併せたハイブリッド型で開催を実現した。準備と運営に奮闘した生徒たちの話を聞くとともに、2年ぶりに来場者を迎えてにぎわった学園祭をリポートする。

2年ぶりに来場者を迎えてにぎわう

来場者の人気を集めた獅子児祭名物の「セタゴラスイッチ」実演
来場者の人気を集めた獅子児祭名物の「セタゴラスイッチ」実演

 「獅子児祭」初日の11月27日、三つの理科室や音楽室などが入る校舎「放光館」3階の物理講義室前には、多くの親子連れが順番待ちの列を作っていた。なかでは、物理部員が、NHK教育番組「ピタゴラスイッチ」を模した同校名物のカラクリ装置「セタゴラスイッチ」を実演しているところだ。

 講義室の端から端まで背よりも高く張り渡した2本のエナメル線の上を車輪がするすると転がり、次の装置にぶつかってストッパーを外すと、コーヒー色の水が注がれたり、ビー玉が転がったり、共振振り子が揺れたりと、講義室いっぱいのさまざまなカラクリで動きがつながっていく。最後は、人の手も借りずにパッと開いたビニール傘に、「セタゴラスイッチ」の文字。息をのんで見つめていた見学者たちからワッと歓声が上がり、目を見合わせた部員たちの顔にほほえみが浮かんだ。

 一昨年の「獅子児祭」はコロナ禍のため、この「セタゴラスイッチ」も含め、すべての展示がオンライン配信のみだった。昨年はオンラインとオフラインを併用した開催となり、「密」を避けるために各日三つの時間帯を設け、各時間帯150組300人と入場を限ったが、一般来場者を迎えて学園祭らしい熱気を味わえることに生徒たちは大きな喜びを感じているようだった。

鉄道研究同好会による鉄道ジオラマの展示
鉄道研究同好会による鉄道ジオラマの展示

 体育施設を集めた校舎「修道館」のアリーナでは、客席と舞台をプラスチックカーテンで仕切って感染に配慮し、吹奏楽部がブラスバンドコンサートを開き、生徒有志7団体もバンド演奏を披露して、華やかな音色を響かせていた。

 このほか、鉄道研究同好会による鉄道ジオラマの展示、マジック同好会による実演や剣道部によるカジノ、ドローン操縦の実演など、展示内容は盛りだくさん。出展団体の数は21団体で、例年より少ないそうだが、来場者と交流しながら自分たちの作品や活動について説明する生徒たちの姿は実に楽しそうだった。

 獅子児祭運営委員長を務める
鈴木(すずき)琢麻(たくま)
教諭は、「何かをしたいと望む生徒に手を差し伸べて、その環境を用意し、生徒の希望が実現するよう手伝うのが私たちの役目です」と語る。「獅子児祭は生徒のイベントなので、教員は生徒についていくだけです。自由に活動させることが生徒の主体性を育むことにつながりますので、獅子児祭は学校教育の中でも重要度の高い行事だと考えています」

オンラインとオフラインのハイブリッド

攻玉社中学校・高等学校とコラボしたコンテンツ「目黒川リアルすごろく」
攻玉社中学校・高等学校とコラボしたコンテンツ「目黒川リアルすごろく」

 獅子児祭実行委員代表の
鈴木(すずき)颯人(はやと)
君は、「コロナ禍ということがあり、今年度はオンラインとオフラインのハイブリッドにこだわって準備をしました。『今まであったもの』を取り戻して、さらにオンライン展示は前年よりも進化させたいという思いでみんなが協力してやってきたので、新しい獅子児祭になっていると思います」と胸を張った。

 「今まであったもの」というのは、従来の来場者参加型の展示のことだ。2階から4階の各教室には、中1生が制作した美術作品や、部活動と有志21団体による展示がなされ、来場者が実際に参加して学んだり遊んだりできるようになっていた。

 一方、オンライン展示も前年のノウハウを継承しつつさらに進化させたという。9月26日の獅子児祭プレイベントで公開を開始し、11月27、28日の本番に向けて徐々にコンテンツの数を増やしていった。中2生のクラス合唱動画、実行委員企画、部活動動画、有志動画などからなるコンテンツの数は、最終的に約80に上った。

 もちろん、コロナ禍という特殊な状況下で、準備にはさまざまな困難があったという。もっとも苦労したのは、全校生徒が一堂に会する機会がないなか、学園祭に向けた空気を醸成することだった。鈴木君たちはオンラインで全校生徒に情報発信を続ける一方、実行委員同士で集まって打ち合わせを行い、プレイベントから本番へとムードを作り上げていったそうだ。

 ちなみに昨年は新しい取り組みも加わった。6月に攻玉社中学校・高等学校(東京都品川区)の文化祭「輝玉祭」から共催企画の提案があり、これを受けて両校がコラボレーションしてコンテンツを制作することになった。両校生徒による「歴史クイズ対決」や、目黒川に架かる橋をますに見立てて遊ぶ「目黒川リアルすごろく」などのコンテンツを学園祭に合わせて制作し、オンライン配信した。また、「輝玉祭」と「獅子児祭」のライブ配信番組にお互いの学校の生徒がゲスト出演するなどして交流を深めたそうだ。

下級生の参画で運営面も新しくなった

「自由に活動させることが生徒の主体性を育むことにつながる」と話す鈴木教諭
「自由に活動させることが生徒の主体性を育むことにつながる」と話す鈴木教諭

 オンラインとオフラインのハイブリッドという開催形態だけでなく、今年度の獅子児祭には運営面でも新しい形が見られたという。これまで獅子児祭の実行委員は高2生が中心だったが、今回は中2生から高1生がライブ配信やVRコンテンツの制作で中心的な役割を担うなど、下級生が自分の得意分野で能力を発揮した。

 鈴木君は、「中3生の頃から、一出展者としてだけではなく実行委員のメンバーとして、もっと獅子児祭の運営に関わりたかった」と言う。それだけに実行委員代表という立場になって、「ぜひ下級生にも加わってもらいたい」という思いで学園祭の準備に取り組んできた。総務、展示、販売、広報、IT、装飾と六つある部門の部門長は高2生だが、総勢100人の実行委員には中学生も含まれ、先輩と一緒になって獅子児祭を盛り上げてきた。「下級生が参画しているという点でも、新しい学園祭になっていると思います」と鈴木君は話す。

 今年度の初めから実行委員代表を務めてきた鈴木君は、「いったん何かを始めたら、困難なことがあっても投げ出さず、最後までやりきることが大切だということを学びました。後輩たちにもこの言葉を伝えたいです」と力強く話す。

 実行委員代表の発言に耳を傾けていた鈴木教諭は、「例年、下級生は高2生の指示に従って動くだけという傾向がありましたが、今年度は中学生も高1生も主体的に動いていたので、ずいぶん成長して頼もしくなったと感じています。来年度の獅子児祭が楽しみです」と期待を寄せていた。

 (文:岡崎智子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:世田谷学園中学校・高等学校)

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