《東大前刺傷》火炎瓶、ノコギリ、包丁…加害男子生徒“凶行のワケ”「高校入学組の『外来』だったけど生徒会長に立候補」「無断欠席した日はちょうど実力考査の最終日」 – ニフティニュース

花のつくりとはたらき

《東大刺傷》「俺は東大を受験するんだ!」凶行に及んだ男子生徒(17)は医学部進学実績全国No.1の超エリート男子校生だった から続く

 大学入学共通テスト初日の1月15日朝、テストを受けるために東京都文京区の東京大学に集まった受験生の男女2人を含む3人を背後から切りつけた、名古屋市在住の高校2年生の男子生徒。通っていた高校は、同市にある全国屈指の進学校で、医学部進学実績が全国No.1の東海高等学校だ。

 男子生徒は殺人未遂容疑で現行犯逮捕され、その後の警視庁の調べに「医者になるために東大を目指したが、1年程前から成績が上がらず、自信をなくした」「勉強がうまく行かず死のうと思った」などと話している。

 事件から数日が経ち、彼の事件直前までの行動が明らかになってきた。社会部記者が解説する。

■火炎瓶、ノコギリ、包丁…“重装備”だった男子生徒

「14日金曜日の朝、いつもと同じように自宅を出た男子生徒は、学校を無断で欠席。夜になっても自宅へ帰ってこないことから、親が愛知県警に行方不明者届を出していました。

 当の本人は深夜に名古屋で夜行バスに乗り、15日午前6時ごろに東京駅に到着。丸ノ内線、南北線を乗り継いで現場の東大前駅に行き、その電車内で液体のようなものをまきました。可燃性の液体が染み込んだリュックサックも車内で見つかっています。そして駅の8箇所ほどで爆竹のようなものを燃やして、地上に出て、3人を背後から切りつけました」

 驚くのは犯行当時の男子生徒の所持品だ。

「凶器となった包丁のほか、胸ポケットには折りたたみ式のノコギリやナイフも所持していました。火炎瓶のような栄養ドリンクを3本束ねたものや、可燃性の液体の入ったペットボトルを3本に、ジャム瓶のようなものも持っていました」(同前)

 ここまでの“重装備”をして、凶行に及んだ男子生徒。彼をそこまで追い詰めたものはなんだったのか。

 文春オンライン取材班は男子生徒の高校生活を知る、東海高校の同級生の1人に取材することができた。

■男子生徒が欠席した日「実力考査の最終日だった」

「彼が無断欠席した14日は、ちょうど実力考査の最終日でした。この結果で3年次のクラス分けがされます。東海は学力別にA群、B群と分かれます。A〜C組が理系A群、D組が文系A群、E組以降が理系B群と文系B群といった感じです。もしかしたら彼は理系B群になるのが嫌だったのかもしれません」

 この同級生は「自由な校風なので、学内に学力による差別はありませんが……」とも語るが、事件を起こしたタイミングを考えると、テストが大きなプレッシャーになったということだろうか。別の社会部記者が解説する。

「学校側によると、男子生徒は東京大学の最難関である理科3類を目指していました。しかし成績が思うようには上がらず、エリート揃いの校内では目立つような学力ではなかったようです。悩む男子生徒を、担任は激励していたといいます」

 男子生徒の印象について、前出の同級生はこう話す。

■男子生徒は「真面目。まだ東海生らしくなかった」

「彼は中学から東海に通う『内来』ではなく、高校入学組のいわゆる『外来』です。ですが、入学早々に生徒会長選挙に立候補していたのが印象的でした。彼は落選しましたが、それも仕方ないことだろうと思います。彼の演説はあまりにも真面目で、東海に合っていなかったからです。

 東海は進学校ですが、校風は極めて自由です。いじめもありませんし、先生と生徒の仲もいいです。外来の生徒は、入学当初はみんな真面目なのですが、だんだん東海に染まっていく。卒業するころには内来とほぼ変わらないくらいはじけているのですが、彼はまだ真面目な段階だなという印象を受けました。大抵、生徒会長選挙の演説には、おふざけ要素をいれる人が多いんです」

 1学年は内来が約400名、外来は約40名。同校の卒業生によると、「中学受験よりも高校受験の方がさらに狭き門なので、外来の生徒は本当に優秀」だというが、外来の生徒には、中学のうちから高校レベルの学習をしている内来に追いつくために特別な補習が組まれるという。

 昨年に男子生徒の父親がある冊子に寄稿した家族について綴った文章からは、男子生徒が東海高校入学後、勉強に精を出していた様子が窺われる。父親はコロナ禍を、息子にとって「中学校上がりの猛者に追いつく好機」とも表現している。

 しかしながら、前出の同級生はコロナ禍をこう捉えているようだった。

■「コロナ禍で東海の団結力を実感できなかった」

「彼はコロナ禍で入学したので、『記念祭』など東海の楽しい学校行事を経験できなかったため、東海の素晴らしさや団結力を肌で実感できなかったのではないでしょうか。ですから、この事件がきっかけで東海が誹謗中傷されたり、東海の教育のせいにされたりしないことを願っています。みんな東海を本当に愛していて、先生や友達と楽しく生活しているので……。

 彼には快復したら、しっかりと反省して償いの日々を送ってほしいです。被害者の方々が心身ともに快復されるのを祈っています」

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 事件後、東海高校は文書でコメントを発表している。生徒が事件に関わったことを謝罪した上で、こう記した。

■学校は《孤立感を深めている生徒が存在》

《本校は、もとより勉学だけが高校生活のすべてではないというメッセージを、授業の場のみならず、さまざまな自主活動を通じて、発信してきました。(中略)「密」をつくるなという社会風潮のなかで、個々の生徒が分断され、そのなかで孤立感を深めている生徒が存在しているのかもしれません。今回の事件も、事件に関わった本校生徒の身勝手な言動は、孤立感にさいなまれて自分しか見えていない状況のなかで引き起こされたものと思われます》

 東大理3入学という夢と、1年前から成績が振るわなくなったという現実との乖離。そしてコロナ禍での孤独。それでも、大学受験まではまだ1年あった。

 父親は、男子生徒の弁護士を通じて「このたびは、世間をお騒がせしまして、誠に申し訳ございません。被害にあわれましたご本人様には、心より申し訳なくお詫び申し上げます」とコメント。

 社会部記者によると、弁護士との接見後、男子生徒は黙秘に転じたという。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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