■事業概要
1. 会社沿革と事業セグメント
学研ホールディングス
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は、創業者の「戦後の復興は、教育をおいてほかにない」という信念のもと、1946年に教育関連の出版事業を行う(株)学習研究社を創立したところからスタートする。当初は学校ルートを開拓し事業展開を進めてきたが、1970年代に入ってからは書店ルートや家庭向け直販体制を構築し、事業を拡大していった。付録つき学習教材である「科学」と「学習」が小学生向けに幅広い支持を集めると同時に、百科事典や辞書、医学書など領域を広げながら教育分野における総合出版企業へと成長を遂げた。また、1980年代以降は学習塾事業にも進出し、教育サービス領域に事業を拡大していく。
2000年代に入ると少子化と出版不況で収益環境が厳しくなるなか、第2の事業柱を育成すべく介護事業を2004年から開始した。2009年には持株会社体制に移行し、教育事業における経営合理化を図る一方で、M&Aや事業提携など積極的に進めながら事業基盤の再構築と収益力の強化に取り組んできた。2018年9月にはグループホームの大手であるメディカル・ケア・サービス(株)を子会社化し、医療福祉分野の事業規模を従来の2倍以上に拡大している。なお、持分法適用関連会社として市進ホールディングス
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(株式保有比率37.7%)のほか、2021年1月に資本業務提携を発表したJPホールディングス(同30.72%、2021年1月出資)がある。
事業セグメントについては、事業の成長や撤退などに合わせて変化しており、2017年9月期以降は教育分野と医療福祉分野の2つの事業ドメインで開示している。また、教育分野については教室・塾事業、出版コンテンツ事業、園・学校事業の3つの事業に、医療福祉分野については高齢者住宅事業、認知症グループホーム事業、子育て支援事業の3つの事業にサブセグメント化している。
教室・塾事業、出版コンテンツ事業、園・学校事業を展開
2. 教育分野
(1) 教室・塾事業
教室事業では、幼児から中学生(一部高校生)までを対象とした学習教室「学研教室」を展開している。1980年に事業を開始して以降、FC展開により全国に教室を広げ、2021年9月末の教室数は15,069教室(取得認可数ベース)、教科会員数は365,143人(履修教科数ベース)の規模となっており、アジア圏を中心とした海外にも展開している。
競合は(株)公文教育研究会が展開する「公文式教室」だが、学研教室は、1)月謝が安価、2)無学年方式、個人指導・個人別教材、3)算数・国語の同時並行学習、といった点が特徴・強みとして評価されている。コロナ禍の影響で生徒数、教室数が減少し2020年9月期以降、収益は減少しているが平常時には営業利益率で6%台が見込まれ、同社グループのなかでは安定収益源の位置付けとなっている。
また、幼稚園・保育園・こども園に指導員を派遣し、園内において知育や科学、英語などを指導する幼児教室を展開しているほか、2020年4月に小・中学生を対象とした学習教室「小学館アカデミー」及び幼児・小学生向けを対象とした英語教室「イーコラボ」の一部教室、2021年7月に幼児・小学生を対象とした「知能教育 めばえ教室」を相次いで事業譲受※し、事業基盤の拡大を図っている。これら2つの事業は主にショッピングセンターで教室展開を行っており、教室数は合計で約300教室、生徒数で3.5~4万人の規模となっている。
※「小学館アカデミー」「イーコラボ」は(株)小学館集英社プロダクションから、「めばえ教室」は(株)綜合教育センターから事業譲受した。
一方、塾事業に関しては2000年代半ばからM&A等を活用しながら積極的に拡大してきた。学研教室で取り込んだ生徒をグループ内に進学塾を揃えることで囲い込み、顧客のLTVを最大化することが目的となっている。M&Aでグループ化した進学塾については子会社化後も塾のブランド名を変えずに継続している。また、海外でもシンガポールや台湾、ベトナムなどで邦人子女向けに塾を運営している。2021年9月末の教室数はグループ全体で426教室、生徒数は46,036人となっている。
(2) 出版コンテンツ事業
出版コンテンツ事業には出版事業、医学看護事業、出版以外の事業が含まれる。出版事業では児童書や学習参考書等を発行・販売しており、学習参考書については小中学生向けの比率が高く、業界でもトップシェアとなっている。2020年7月にメディア事業を会社分割し、定期雑誌やムック書籍出版事業、Webメディア事業、コンテンツマーケティング事業の運営について新設した合弁会社、(株)ワン・パブリッシング(出資比率49.5%)に移管した一方で、2021年1月に(株)ダイヤモンド・ビッグ社から「地球の歩き方」等旅行ガイドブック出版事業及びインバウンド事業を譲受している。
医学看護事業では、医学書・看護書等の出版物の発行・販売を行っているほか、看護師向け研修用e-ラーニング事業を展開している。e-ラーニングに関しては看護師の資格取得等を目的として導入するニーズがコロナ禍以降さらに高まっており、2021年9月末時点で契約病院数は2,066施設に拡大している。また、出版以外の事業としては、デジタルコンテンツや教育玩具の開発・販売、オンライン英会話サービス、体験型英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」の運営事業などが含まれている。
(3) 園・学校事業
園・学校事業では、幼児教育、学校教育、社会教育の3つの事業が含まれる。幼児教育事業では主に幼稚園・保育園・こども園向けの出版物(絵本など)や保育用品、備品遊具、先生向け衣類等の物販事業を手掛けている。また、2021年6月にソフトバンク
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の子会社から事業譲受した子育てクラウドサービス「hugmo(ハグモー)」も含まれる。「hugmo」では保護者とのコミュニケーション機能(連絡、スケジュール、各種申請/アンケート等)や子どもの見守りサービス、園の業務運営を支援する各種ICTサービス(こども台帳、職員管理、請求管理等)等の機能が用意されており、月額利用料を支払うことでこれら機能が利用できる。収益的にはまだ先行投資段階の事業である。
学校教育事業では、小・中学校向けの教科書(保健体育、道徳)や教師用指導書、副読本などを発行しているほか、高校向けに小論文、模試など、大学向けに就職模擬テスト・教材などの製作・販売を行っている。また、GIGAスクール構想に対応したICT教材の開発・販売も行っている。なかでも収益の大半を占めるのは、小・中学校向けの教科書及び教師用指導書となっている。教科書は4年サイクルで文部科学省による検定が実施され、公立学校の場合は各自治体の教育委員会が検定に合格した教科書のなかから採択するため、その動向によって販売シェアが変動することになる。また、教科書の販売については採択されれば次回の採択年まで安定した需要が見込まれるが、教師用指導書については使用開始年度(採択の翌年)に販売が集中するため、年度によって収益変動が起きる傾向にある点には留意する必要がある。教師用指導書の部数が最も多くなるのは小学校(6学年あるため)で直近では2020年9月期に該当する。
社会教育事業では、(株)学研教育みらいが企業向けに採用支援サービスを提供しているほか、2018年2月に子会社化した(株)ジェイテックスマネジメントセンターで企業内研修サービスの企画・運営を展開している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《EY》
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