1人当たりの県民所得が全国平均の7割程度の沖縄県で、貧困の連鎖を断ち切るための新たな「公助」の形が注目されている。
沖縄本島中東部の西原町の一角。クリスマスイブを翌日に控えた夕刻、学校帰りの中学生3年生が「塾」に集っていた。塾の看板はないものの、壁には「高校入試まで72日」と書かれた紙が貼られ、受験ムードを高める。講師の大学生を前に子どもたちは英語の問題に向きあっていた。
「結(ゆい)塾J&S坂田教室」は、沖縄県が経済的な問題を抱える就学援助世帯向けに開く「無料塾」のひとつだ。小学1年から高校3年まで約35人が通う。教室スタッフ兼講師の平良友亮さん(24)は「一度学校でつまずいた後、学習意欲を失ったままの子どももいる。一から教えるよう心がけている」と話す。
本人も塾の卒業生だ。机に向かう習慣がなかった中学3年生の時、役場で無料塾を知った親の勧めで通い始めた。高校に進学し、「教育に携わりたい」との目標ができた。県内の大学を卒業後、後輩たちを教える側にまわった。
毎日の暮らしから政治への向き合い方、経済環境まで、私たちの周りでは様々な分断が進んでいるように見えます。手を取り合ってつながろうとする動きや人たちを追う連載の最終回は沖縄からの報告です。無料塾の背景には、沖縄の子どもたちの苦境がありました。
県民所得が全国最低、奪われる進学機会
沖縄県の無料塾は拡大・発展している。
2012年の開始時は小中学…
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