2022.1.9
THE名門校 日本全国すごい学校名鑑
名門校の知られざる姿を、生徒や親、教師など、さまざまな視点を通して紐解く密着ヒューマンドキュメンタリー「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時)。「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。
今回は番組ナビゲーターに小栗有以(AKB48)、解説に教育評論家のおおたとしまさを迎え、「新春!がんばれ!中高生スペシャル」と題し、受験生お役立ち情報満載で送る。
新年を迎え、名門校を目指す受験生はラストスパート。名門校に入学するとどんな学校生活が待っているのか? 名門校に通う現役生徒たちの日常を追うとともに、独自の教育理念で注目される「聖光学院中学校・高等学校」と「青稜中学校・高等学校」の校長が現代の名門校の在り方についてリアル対談。さらに、中学受験を間近に控えた親子にも密着、受験の傾向と対策についても解説する。
福岡修猷館の伝統行事に見る「名門校ほど学校行事が盛んな理由」
番組がこれまでに取り上げてきた名門校は、60校にのぼる。その中で数多く目にしてきたのは、勉強一辺倒ではなく、部活動や体育祭・文化祭をはじめとする学校行事に青春を燃やす生徒たちの姿。なぜ名門校の生徒たちは、部活動や学校行事に並々ならぬエネルギーを注ぎ込めるのだろうか。
今回、一例として紹介するのは、九州の名門「福岡県立修猷館高等学校(以下、修猷館)」の伝統行事。修猷館は1784年に開校し、江戸時代の藩校を起源とする伝統校だ。
修猷館で40年以上も続く伝統行事が、「十里踏破遠足」。1日に40kmもの距離を歩き、その意義を生徒一人ひとりが考える。2020年はコロナ禍で中止に追い込まれたが、2021年、伝統の復活に燃えていたのが生徒会執行部で”十里長”を務める本田萌くんを含む3人。2021年11月22日の放送ではリハーサルに密着したが、今回は本番当日の様子を紹介する。
「十里踏破遠足」当日。萌くんをはじめとした執行部にとっても、840人という大人数を指揮するのは初めてのこと。しかもこの日はあいにくの強風で、萌くんの顔にも不安の色がにじむ。しかし執行部には、”応援団”という頼もしい味方が。スタート直前の心境についてナビゲーター・小栗有以が執行部3人と応援団2人にインタビューした様子はぜひ番組で。
朝8時に総勢840人が出発した。準備期間中もサポートしてくれた応援団が、長ランに下駄履きで、大きな団旗を掲げて皆を先導。840人の生徒を4つの隊に分け、執行部が分担して誘導する。
スタートから1時間50分で第1休憩ポイントに到着するが、すでに20分以上の遅れが発生していた。ここから巻き返しをはかりたい萌くんは、予定どおり10分間の休憩で出発し、遅れを取り戻すためペースを上げる。スタートから3時間45分、折り返し地点となる第2休憩ポイントに到着。ここまでに全員が遅れを取り戻した。ゴールまで残り半分、強風はやむどころか激しさを増し、行く手を阻む。強風と疲れで、再びペースが落ち始めた。
ここで遅れを取り戻そうと、萌くんが動いた。青信号になった途端に走り出したのだ。先頭集団が走り、より多くの生徒を一度に渡らせてペースを上げる作戦だ。体力が限界に近づく中、皆が萌くんの思いに応える。
そして今度は応援団長が動いた。強風の中を団長自ら団旗を掲げ、ゴールまで歩き抜こうというのだ。激しさを増す風に何度もあおられながら、小さな体で必死に団旗を掲げ続ける応援団長。それを団員総出で支える。その熱い姿に他の生徒たちも奮い立ち、840人の心がひとつになった。
スタートから8時間20分、全員がゴール地点に到着。40年続いた伝統行事の復活を見事にやり遂げた。終了後に執行部の部室を訪ねると、萌くんを囲み、互いの健闘をたたえ合う生徒たちの姿が。困難に打ち克ち、コロナ禍で途絶えかけた学校行事を復活させた生徒たち。名門・修猷館の伝統は脈々と受け継がれていく。
【解説】生徒の自主性が「名門校」になるための文化を育てる
なぜ名門校ほど行事に全身全霊を懸け、生徒主導で行われるのか。おおたとしまさは、きっかけは1970年前後に起こった「高校紛争」にあると分析する。
「全国でバリケードを作り、反権力的な主張を生徒たちが行った高校紛争。勉強に関しても、受験偏重授業ではなく、教養豊かな授業を要求した。結果は二分化し、一部の学校は生徒の論理的な主張を認め、さまざまな生徒自治が行われるようになった。自分のやり方が認められれば、行事は楽しいし、生徒主体でできるからこそ一生懸命になる。一生懸命やることがその学校の文化になり、結果的に名門校らしい文化が育ち、世の中からも認知されたのではないか」。
名門校受験に挑むにあたって大切なこと
12月中旬、中学受験を間近に控えた親子に出会った。受験勉強の追い込み真っ最中の杉江和真くん(取材当時12歳)。厳しい指導で知られ、難関中学合格を目指すエリート塾「希学園」に通い、名門校に入学するため熱心に勉強している。目指すは東西を代表する名門・灘中学校(以下、灘)と筑波大学附属駒場中学校。志望理由は、希学園の学園長・山﨑信之亮先生が灘出身で、面白そうだと思ったから。厳しくも自分に期待してくれている山﨑先生に憧れ、先生の母校への進学を志望している。
しかし、ここにきて成績が伸び悩んでいるという。その原因と改善策について山﨑先生は、「明るいムードメーカーだけど、あえて欠点を挙げるとすれば、動きが遅くて言い訳が多い。自分に起きる不利益は、全部自分のせいだと思えたら強くなれる」と分析。高い学力があるのに、それをなかなか発揮できない和真くんのことが歯がゆくて仕方ないという。
この日の授業終了後、「この際だから聞くけど、受かる気あるの?」と切り出した山﨑先生。言いよどむ和真くんに、誓約書として決意を書かせることに。そこには「注意力と集中力を高める」「受験まで気を抜かずに全身全霊で戦う」と記されていた。和真くんは、山﨑先生なりのエールをしっかり受け止めている。
この番組では、難関中学受験専門のカリスマ塾講師として2021年10月4日の放送で山﨑先生に密着していた。理事長に次ぐナンバー2で、”学園長”の肩書きを持ちながら国語講師を務める山﨑先生。関西弁でノリが良く、生徒からの人気ナンバーワン。しかし「中学受験は家庭を壊してまでやるものではない。勉強したせいで家が壊れたら、本末転倒もいいところ」と力説していたのが印象的だった。
塾を終えた和真くんの帰宅は夜遅く。お母さんが駅まで迎えに来て、仕事で疲れているお父さんも起きて待っていてくれる。「この状況が普通だとは思えないけど、彼に強いてしまっているところもある。でも、彼が決めてやりたいとことは応援したいし、ここまで頑張っているんだったら合格させてあげたい。残りの日数はわずかだから、精一杯悔いのないように」と背中を押すお父さん。ご両親に中学受験を決めた理由を伺った。
もともと算数が好きだった和真くん。本人が希望したこともあり、お母さんは「輝ける場所が勉強なら、そこを伸ばせるのは良い」と受験させることを決意した。
受験に対する夫婦の温度差についてお父さんが心境を語ってくれた、「妻のほうが、より真剣に向き合っている。資料やプリントの整理も妻がやっているので、余計にリターンを求めてしまうのか、5年生の時は毎日妻と息子がケンカしていた。『このまま受験に突入したら、家族はどうなってしまうのか』と思っていた。家族が崩壊してしまったら、受験は全く意味がない。今は落ち着いたので良かった」。
自身の中学受験をきっかけに家庭崩壊してしまった山﨑先生の「中学受験は家庭を壊してまでやるものではない」という言葉とリンクする。家族一丸となって挑む中学受験には、互いが互いを慈しむ気持ちが何より大事なのかもしれない。
【解説】学校選びのポイントは子どもの”目”にあり!
中学受験の傾向と対策について、「近年、特に過酷になってきている」と、おおた。「難関校を目指す生徒たちがハイレベルで際限のない競争をしている。一方で、全体を見ると中学受験の総合格率は約96%。中学入試は、決して狭き門ではない」。
中学受験のメリットについては「中学受験は親子で挑む大冒険。数々の試練を親子で経験することに意味がある。親子で話し合いながら試練を乗り越えていく機会なので、合否にかかわらず、歩みそのものに価値を見出せると思う」と語る。
最後に、重要な学校選びのポイントは「見るべきは、学校ではなく自分の子ども」だという。「学校見学に行った時に、どんな目の輝きを見せるか。子どもの目の輝きを信じていい」。
初対談! 聖光学院と青陵高校の校長が考える「名門校の条件」
番組では最後に、2人の名物校長の新春スペシャル対談をマッチアップ。1人は就任して2年目、令和の名門校を目指す「青稜中学校・高等学校(以下、青稜)」の若き校長・青田泰明校長。もう1人は、名門「聖光学院中学校・高等学校(以下、聖光学院)」で17年校長を務める工藤誠一校長。
青稜の全校生徒数は1600人、この10年で偏差値が急上昇している私立の進学校だ。2021年の春の大学合格者は国公立大学が53人、早慶上智48人など、着実に実績をあげている。しかし、青田校長は就任早々、コロナ禍に直面。そこで授業から父兄への学校説明会まで、いち早くオンラインを導入した。青田校長の曾祖父が「将来の日本には女性の活躍が必要になる」と考え、商業女学校を創立したのが青稜のはじまり。その後、2代目の大伯父が男女共学に舵を切り、進学校を目指した。生まれながらにして、校長になる運命だった青田校長。令和の名門校を目指し、日々戦略を練っている。
2021年春の東大合格者が79人と全国5位に輝いた、神奈川御三家の筆頭格、聖光学院。この全国屈指の名門校を17年にわたって率いているのが、工藤校長だ。
名門校のベテラン校長と、これから名門校を作る若き校長。2人の名物校長は、どんな教育談義に花を咲かせたのか。ここではその一部を紹介する。
Q 保護者のみなさんに伝えたいこと
工藤校長「入試のデータをエクセルで管理したりするのは、家庭ではやってほしくない。そういうデータは学校や進学塾が提供するので、ご家庭ではおおらかに。中学受験はご両親のリベンジの手段ではなく、親子で歩む家庭の歴史の1ページ。『家族で歩める』ということに対して、喜びと感謝をもって進んでほしい」。
青田校長「『入試が終わったら解散』というチームではもったいない。入試が終わっても、親御さんにはそれぞれの人生の中でチャレンジを続けていただきたい。恐らくこれからの時代、親世代が子どもに対してロールモデルの役割を果たせなくなる可能性が出てくる。それでも親御さんの姿勢は変わらず子どもの参考になる。挑戦をし続ける姿を子どもたちに見せ、『大人になっても頑張らなきゃいけないんだ』という気持ちになってもらえる親御さんであっていただきたい」。
Q これからも生き残る名門校の条件は?
工藤校長「世代を超えて受け継がれ、卒業生や在校生にとって『自分のふるさと』と思えるような学校。自分が誇りを持って語れるのが名門校。どんなに世間的に名門校といわれても、出身者が誇りを持たなければ、名門校にはなり得ない」。
青田校長「希望を持ってもらえる学校。そして振り返った時に、希望だけではなく、誇りも持てるような学校。希望と誇りが綺麗に混ざり合うのが、名門校の条件」。
工藤校長「青田先生がおっしゃるように希望と誇りが縦糸と横糸。これらが組み合わさり、学校の歴史や文化、校風が作られていくのだと思う」。
――対談では「どんな子に入学してほしいか」「どんな人間を育てようとしているのか」など、話題は尽きなかった。対談の全容は番組で確認を!
番組では他にも、広島学院中学校・高等学校がコロナ禍で挑み、好評を博した文化祭の様子、希学園・山﨑先生の授業と面談の様子、受験を間近に控えた家族のリアルなど、スペシャルならではの内容を紹介する。
1月10日(月)夜10時放送! 「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東)は、「那覇高校”世界に役立つ自分に!”国際貢献を目指す挑戦」と題して送る。
今回の主人公は沖縄県立那覇高等学校に通う平良吉志登くん2年生。祖父の影響で、幼い頃から農業で国際貢献するのが夢だった。今年はパプアニューギニアに留学して農業を学ぶはずだったが、コロナ禍でその願いは叶わず失意の日々を過ごすことに。しかし、気を取り直して生徒会長に就任。学校イベントを盛り上げるために多忙な日々を過ごしている。
だが、平良くんの夢はあくまでも将来、海外で活躍すること。その夢に繋がる活動がしたいとあるプロジェクトに参加することに。海外にも同窓会支部があるほど国際的な繋がりが強い那覇高校。OBの支援も受けながら、夢を追いかける姿に密着した。
どうぞお楽しみに!
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