紙の教科書をデータ化した「デジタル教科書」が新年度から、全小中学校に無償で提供される。文部科学省が、2024年度の本格導入に向けた実証事業として外国語(英語)で配布し、希望する学校の一部には、ほかの教科からも1教科分を提供する。紙との併存や費用のあり方などについて課題を洗い出す。

 デジタル教科書は、紙と同じ内容をデータ化し、パソコンやタブレット端末で使う。学校教育法改正により、19年度から紙の教科書に代えて一部授業で使用できるようになった。文科省の有識者会議は21年3月、小学校の教科書改訂のタイミングとなる24年度からの本格導入を求める提言を出している。

 文科省は21年度、導入に向けた実証事業として、小5~中3を対象に、使用を希望した全国の4割の学校に任意の1教科分のデジタル教科書と、動画などが流れる付属のデジタル教材を無償で配布した。新年度からは、同じ学年の国公私立の全小中学校と特別支援学校、小学校の重点校の小1~小4に提供するため、21年度補正予算と新年度当初予算案に関連経費として計55億円を計上した。

 新年度は、外国語(英語)を全対象者に配布し、デジタル教科書や教材から流れる朗読音声などを使うことがどれくらい有効かをみる。また、希望する自治体や学校の中から調整し、予算の範囲内でこれ以外にも1教科分を提供する。特に、算数・数学や理科では、図形や実験、観察を動画で学ぶことの効果を検証したい考え。

 ただ、教科書会社によって性能や仕様がまちまちであることから、文科省は標準的な要件を決めることにしている。これらを踏まえ、文科省はデジタル教科書を採用する教科や、紙の教科書と同様に無償化するかどうかなどの判断を22年中に決める方針だ。(桑原紀彦)