【特集】見て感じる学校説明会がコロナ以前を上回る人気…女子美付 – 読売新聞

花のつくりとはたらき

 女子美術大学付属中学校(東京都杉並区)は昨秋、第1回及び第2回の中学校説明会を開催した。小学6年生を対象とする説明会は、予約制で集まった計約300組600人に加え、ライブ配信でも約600組が視聴しており、コロナ禍以前を大きく上回る人気を見せた。会場の体育館には生徒作品が数多く展示されており、美術を核とした教育を直接見て、感じてもらうユニークな説明会が繰り広げられた。

生徒の作品を見て入学後の成長をイメージ

ライブ配信も行われた説明会

 同校の中学説明会は例年、秋に2回行われる。2019年の小学6年生向け説明会は、第1回に169組、第2回に180組が参加したが、翌年はコロナ禍のため、第1回は動画配信のみとし、第2回も予約制で150組に絞った。しかし、昨秋はコロナ禍も収束の動きを見せ始め、第1回、第2回とも予約制でそれぞれ約150組が参加したほか、合わせて600組を超えるライブ配信の視聴があり、2年ぶりの大きな盛り上がりを見せた。

 昨年の小学6年生向け第1回説明会は、9月11日に同校体育館で開かれた。まず石川康子校長が、約300人の受験生・保護者を前に「今日はよく来てくれました。コロナも落ち着いて校長としてもほっとしています。女子美は個性的な学校です。それは美術を核としてあらゆる教科の力を伸ばしていくということです。受験資格は小6であることと、絵を描くことか、ものを作ることかのどっちかが大好きであること。大好きならば大丈夫です。安心して来てください。楽しい6年間を約束します」とあいさつした。

 石川校長は、例年のように中高の生徒が説明会に参加して受験生らと交流したり、自分の作品を説明したりすることができないことを残念がったが、説明会では、同校の生徒会である「鏡友会」による学校紹介動画がスクリーンに映し出され、学校の歴史、校章の意味、女子美生の思う女子美などについて楽しく解説。女子美生の日常についての生徒インタビュー動画なども放映され、参加者に普段の学校生活の楽しさをアピールした。最後は入試概要の説明や勉強法のアドバイスなどがあって会を閉じた。また、中2生が、未来の後輩に向けてのアドバイスにイラストを添えて作ったメッセージカードが、参加者にプレゼントされた。

説明会で展示された生徒作品を「実際に鑑賞して感じてほしい」と語る中村教諭

 同校説明会の特色は、会場の周りに在校生の作品200点以上と、卒業生の仕事を紹介するブースが設けられていることだ。ブースは学年やコースごとに設置され、絵画、デザイン、立体アート、窯芸や彫金などの工芸作品のほか、理科の授業で描いたイラストなど美術以外の授業の制作物も展示されていた。説明会のあと、参加者は校内見学に向かい、体育館内の作品と、校舎内に常設されたギャラリーを見て回った。オンライン視聴者に向けては、体育館内のブースの作品を紹介する約5分の動画を配信した。

 広報部主任の中村晃子教諭は、説明会で生徒の作品を展示する理由について「美術の作品は実際に鑑賞して感じてほしい。見る人によって感じ方やフォーカスして見たいポイントも異なるため、とにかく受験生の目で実物を見てほしい」と話す。

 同校では、この説明会と作品展示で、学校の雰囲気を伝えるとともに、学年ごとの成長や卒業生の活躍を見てもらい、さらに秋の文化祭「女子美祭」で生徒たちの素顔に触れて、本当に自分に合う学校かどうか見極めて入学を決めてほしいと考えているという。この日の説明会に参加した保護者からは、「言葉で説明できない将来が見えてきた」「うちの子に合っていると思った」などというコメントが寄せられたそうだ。

美術を共通項として互いを認め合い連携する生徒たち

「美術を共通項として、さまざまな色合いの生徒同士が、全く飾らない関係をつくれるところが本校の面白さ」と話す並木教諭

 美術を核とした教育が、どういう生徒を育てるかについて、美術科の並木憲明教諭は、「美術を共通項として、さまざまな色合いの生徒同士が、全く飾らない関係をつくれるところが本校の面白さだと思います」と話す。「生徒同士では、例えばおしゃれに気を使う生徒と、外見にはこだわらないが、ものすごい作品を作る生徒が、ともに互いの違いを認め合いながら付き合うという光景がよく見られます。それぞれに
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けている部分とそうではない部分があって、そのままでいいという考え方です。自分は自分として個性を認められているので、人を丸ごと見る時に悪い部分にフォーカスするのではなく、いいところに焦点を当てて見ています」

 「常に自己表現を求められる環境で、素のままで友人と向き合い、できないところはそれが得意な他の生徒に助けを求める。女子美祭などではそのような生徒たちの共同作業がうまく回り、ものすごいパワーを発揮します」と中村教諭は言う。

 並木教諭も、「基本的には個人プレーが好きな生徒が多いのですが、できないことは誰かに頼まないといけない。多くの課題をこなし、他の生徒がどのような作品を作るのかを興味深く観察する日々の中で、他の生徒の得意なところも知っている間柄なので、この分野はあの人に頼もうといった組織力を発揮する場面があります。このような連携は、全くスペックの違う生徒たちだからこそできるものです」と話す。

「時代が女子美に追いついてきた」

説明会の会場となった体育館には生徒作品が数多く展示された

 同校は、説明会の参加希望者だけでなく、受験者数も年々増加傾向にあり、昨年度576人だったのに対し、今年度は102人増の678人となっている。こうした同校への期待について並木教諭は、「AIが人間の知能を超える、といった話が出た頃から追い風は感じていました。何が正解かということが見えにくい時代の中で、世の中に合わせて自分を変えるよりも、今好きなことをやらせよう、伸ばしてあげようという親御さんが増えているのではないかと思います」と話す。「学校がやっていることは以前と変わっていません。それでも今、志望者が増えているのは、自分の子を大切に見てくれる、内面に寄り添ってくれる、というニーズがあるのでしょう」

 また、石川校長は、「時代がやっと女子美に追いついてきた」と表現する。「メガバンクのような世界でも、デザイン思考、あるいはアート思考のある人が求められています。若い人、新入社員に求められるのは、新しい感覚、新しい表現、独創的なもののアイデアなのです。将来に向けて、女子美で、一人一人が自分の作りたい物は何なのか、自分とは一体何なのかを考えながら作品を生み出し、どんどん個性を磨いていってほしいと思います」

 「無邪気で破天荒な面なども含めて、この娘をこのままで育ててくれる学校を探してみたら、女子美だった」と言う保護者もいるそうだ。「美術館で見る作品は、説明を聞くよりも、見て感じるものです。同じように説明会や文化祭で生徒の作品を実際に見て、お子さんが入学したらどう成長するのかを想像してほしい。生徒の作品を見てピンと来た方に、入学を決めてほしいと思います」と並木教諭は話した。

 (文:山本華子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:女子美術大学付属高等学校・中学校)

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