【特集】大らかさ、優しさ育む豊かな自然と学校施設…共立第二 – 読売新聞

花のつくりとはたらき

 共立女子第二中学校高等学校(東京都八王子市)は、今年度募集の中学入試で定員の3倍を上回る志願者を集めた。この人気の背景には、豊かな自然に囲まれた広大なキャンパスと、充実した学校施設があると同校は見ている。四季の変化を身近に感じられる環境で、のびのびと学習やクラブ活動などの課外活動に取り組む中で、生徒は大らかに優しく成長していくという。通学の利便と安全性に対する同校の配慮と併せて生徒たちの姿を紹介する。

東京ドーム5個分のキャンパスにさまざまな施設

「豊かな環境で過ごすことで生徒は自然と大らかに、優しく成長している」と話す浅田教諭

 同校は、2021年度募集の中学入試で、150人の定員に対し、3倍を上回る455人の志願者を集めた。志願倍率は一昨年で約2.3倍、昨年度は約2.5倍であり、年々人気が高まっている傾向だ。受験生からのこうした根強い人気の背景には、同校が誇る豊かな自然環境と施設の充実があるという。

 同校は、東京郊外の八王子市内の丘陵に立ち、高尾山、陣馬山などの山並みを望む緑豊かな環境にある。森に囲まれたキャンパスは、面積22万平方メートルと、東京ドーム約5個分の広さを誇る。「中学と普通科のみの高校としては国内でも最大規模のキャンパスではないでしょうか」と、生徒部主任の浅田勝美教諭は語る。

 その広大さを生かしたさまざまな運動施設などを、異性への気兼ねなく女子生徒だけで、のびのびと利用できるという点も同校の特長だ。400メートルトラックを整備した総合グラウンドは、複数の運動クラブが同時に活動できるうえ、サッカーコートとしても利用可能だ。このほかに芝のテニスコート9面と壁打ち用のコートがあり、ゴルフ練習用に12打席の打ちっ放し練習場や、バンカーのあるグリーンも整備されている。ゴルフ部は8月、中学生が全国ゴルフ選手権大会の女子団体の部で準優勝し、高校生も全国4位の好成績を出している。また、広いキャンパス内には発表の場となる施設も多くあるため、コーラス部や吹奏楽部、演劇部などのクラブも数多く活動している。

 サッカー部に所属する高2の樋口
咲蘭(さら)
さんは、「グラウンドが広く、自分たちの学校で試合もできるのでプレーしやすいです。また、中学生と高校生が一緒に活動できるので、お互いにいい刺激をもらっています」と話す。

自然豊かなキャンパスで体験学習を深める

理科の授業で、キャンパスを散歩しながら自然観察を行う生徒たち

 自然豊かで広大なキャンパスは学習面でも生徒たちの体験の質を深めている。理科の授業では、中高ともキャンパスを散歩しながら自然観察を行う時間を設けている。また、今年度は中庭の一画に、家庭菜園を意味する「ポタジェガーデン」と名付けて、地植えのみでなく、コンテナやプランターを使って植物を育てられる環境を作った。菜園の管理や栽培方法の講習をしている卒業生の農家を講師として、中学生が野菜の種をまき、季節の野菜のほか、ハーブ、花などを栽培する。

 クラブ活動では「野外研究部」が自然観察や野菜の栽培、中庭のバラの管理を行っている。キャンパス内の自然を生かしたさまざまな活動が魅力で人気も高い。同部顧問で生物担当の松本重樹教諭は校内でホタルを繁殖させ、校内のビオトープでホタルの観賞会を行っていた。また、都心に比べて空気の澄んだ立地を生かし、冬には希望者を対象に校舎の屋上で理科教員が天文教室を開く。

 中2の大里
明以(めい)
さんは、「環境がよいことも、この学校を選んだ理由の一つです。以前は植物にあまり興味がありませんでしたが、自然観察のほか、先生方が学年通信に季節の花について書いてくださるため、初めて知ることも多く、自然に囲まれているよさを感じます」と話す。

 高校3年生の笠井瞳さんは、「中庭でお昼を食べたり、毎日変化する景色を眺めて、友達と『今日は快晴だから、山梨の山が見えるね』『今日の月はきれいだね』などと話したりする機会が増え、日々自然を感じています。天文教室では、望遠鏡で星だけでなくスカイツリーまで見えて驚きました」と笑顔を見せた。

 浅田教諭は、生徒の様子についてこう話す。「入学式の頃にはしだれ桜、初夏には新緑、秋には紅葉が間近に見られ、鳥や虫の声が聞こえるなど、通学しているだけで季節の変化を感じられます。こうした豊かな環境で過ごすことで、生徒は自然と大らかに、優しく成長しているようです。そのためか、本校にはボランティア活動を行う生徒がたくさんいます。最近はSDGs(持続可能な開発目標)が盛んに取り上げられていますが、本校はMDGs(ミレニアム開発目標)の頃から世界の課題解決につながる活動を意識して行い、今年度も生徒が自発的に古着を集めて、開発途上国の子供にワクチンを送る団体を通して届ける活動などを進めています」

良好なアクセスと生徒の安全への配慮

午前7時台から最終下校時間まで生徒の活動に合わせたダイヤで運行されるスクールバス

 こうした豊かな自然環境や充実した施設が利用できるのは、やはり都心を離れた立地が前提になっている。しかし、八王子駅は、山梨・長野方面と結ぶJR中央線、新宿駅からの京王線、「新横浜駅」へつながるJR横浜線、埼玉・群馬方面と結ぶJR八高線が乗り入れており、ある意味、交通の結節点になっている。そのため、生徒の約8割は東京の市部から通うが、相模原市や横浜市、埼玉県、山梨県、東京の区部から通う生徒もおり、彼女らの通学時間は平均1時間ほどに過ぎないという。

 生徒は読書や自習をするなど通学時間を有効に活用している。今年度の新入生からは、BYOD(Bring Your Own Device)方式でノートパソコンやタブレット端末を本格的に使用する環境が整い、その他の学年も自分のデバイスの持ち込みができるため、通学中に英語のリスニングの学習などを行う生徒もいるそうだ。

 さらにスクールバスが、生徒たちの通学を便利にしている。スクールバスの路線は、「八王子駅南口」発着と、「高尾駅北口バスターミナル」発着、そして八王子市内を巡る「みなみ野・七国循環」の三つがあり、休日や長期休暇も含め、午前7時台から最終下校時間まで生徒の活動に合わせてダイヤが組まれている。

 また、通学の利便性に加えて安全の確保にも同校は十分な配慮をしている。毎年9月に行われる避難訓練では、通学に利用する路線や地域別のグループに分かれ、生徒同士の顔合わせを実施している。くわえて、登下校時刻を保護者にメールで知らせるシステムを導入し、東京・神奈川の私立学校間で、災害時に協力し合う「登下校時の緊急避難校ネットワーク」にも参加している。

 東日本大震災の時には、駅などで立ち往生している生徒をスクールバスで迎えに行き、帰宅が難しい生徒については、広々とした校舎を生かして宿泊させたこともあるそうだ。

 新型コロナウイルス感染症への対策面でも、通学の電車は通勤の主な流れと逆方向になるため「密」を避けやすく、通学時間も首都圏の周辺部から都心の学校に通うのと大差ない。また、キャンパスや校舎の広さも感染防止に有利な要素となりそうだ。

 浅田教諭は「しっかりと安全が確保され、充実した施設と自然に恵まれた本校は、生徒が規則正しく生活し、どんどん伸びていける環境にあると思います」と胸を張る。「実際、今年の高3生から英検準1級の合格者が8人出たり、高校ゴルフ部が全国大会に出場したりするなど多くの活躍を見せています。今後も豊かな環境の中で、のびのびと成長していってほしいですね」

 (文:籔智子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:共立女子第二中学校高等学校)

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