入試シーズンが始まります。コロナ下で頑張る受験生たちへ、校長からのメッセージをお届けします。
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■校長から受験生へ:武蔵高校中学校・杉山剛士さん
受験は人生における大きな挑戦であり、コロナ禍のもとで不安も強いことでしょう。しかし考えてみれば、家族に応援してもらい一丸となって受験に臨めることは幸せなことではないでしょうか。目標に向かって計画を立て、努力する受験勉強は、その後の人生のいい訓練になります。
皆さんに贈りたい言葉は「焦らず、慌てず、諦めず」です。焦ったり慌てたりするのは、人と比較するから。比べるなら自分自身とです。大事なのは昨日の自分を超えられたかどうか。時には一歩二歩、下がる日もあるでしょう。結果が出ないこともある。それでもトータルでは成長しているんです。その努力の過程を見ることです。
世の中で真に活躍している人には、挫折や失敗を乗り越えてきた人が多い。まさにテレビ番組「しくじり先生」の視点です。そこからどう立て直すのか、パッションを持ち続けられるか。失敗から学べば、もはやそれは成功。人生の多くはその繰り返しです。
むしろ若い時期に失敗の経験が少ないことは、日本の教育の大きな課題だと思います。親たちも子どもに失敗させたくないと、過干渉になる。しかし、子どもは親の思うようにはならないもの。子どもが自ら選び、その生き方に責任を持つようになる。そのプロセスが中学・高校時代なのだと思います。
本校では昨年度、記念祭(文化祭)、体育祭、強歩大会の三大行事が出来ませんでしたが、今年度は少しずつ再開しています。
11月は体育祭を開催しました。昨年度から何度も開催方法を描き直し、今年も試行錯誤を繰り返しましたが、競技内容を工夫しオンライン配信も実施しました。みな最後まで諦めなかった。委員長は2年連続で立候補し、再選されました。恒例の各競技優勝チームと教員チームの対戦も行い、私も全競技に出場しました。バスケでは、ようやく決まったゴールに大歓声をもらいました。優しい生徒たちです。
こうして同じ空間で盛り上がるライブ感は何物にも代えがたい。教育とは何か?と問われたら、私は「感化すること」と答えます。友達からの刺激、先生の何げない一言。子どもは感化されて成長するのです。
校訓でもある自ら調べ、自ら考える「自調自考」のエンジンを10代で身につけて欲しい。大人側はあえて言わない、教えないことを心がけています。どれだけガマン出来るか、待ってやれるかです。親御さんがつい手を貸したくなる気持ちもよく分かります。でも、見守る愛も大事です。
受験という壁を越えるのはしんどい。どうしても合否に目が行きがちですが、目標に向かい努力すること自体が尊い。頑張っているどの子も褒めてあげたいです。(聞き手・柏木友紀)
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〈すぎやま・たけし〉1957年東京生まれ。東大教育学部卒、同大学院教育学研究科修士課程修了。専攻は教育社会学。埼玉県教育局文教政策室長、埼玉県立熊谷西高校長、同県教育局高校教育指導課長、埼玉県立浦和高校長を経て、2019年から現職。
武蔵高校中学校
・所在地:東京都練馬区豊玉上
・創立:1922年
・生徒数:中学生526人、高校生514人
・進学実績:東大28人、京大14人、一橋大8人、国公立大医学部15人、早大25人、慶大18人、私立大医学部9人
・武蔵大と敷地を共にし、キャンパス内を小川が流れる自然豊かな環境。2017年度、天体観測ドームなどを備えた理科・特別教室棟が完成。ドイツ語やフランス語など第2外国語も学ぶ。山上学校や民泊、天文実習など校外学習も盛ん。
朝日新聞社
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