カリフォルニア州が「数学の才能がある生徒」という概念を否定するようになった理由(クーリエ・ジャポン) – Yahoo!ニュース – Yahoo!ニュース

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数学の特別コースが「不平等だ」と目をつけられている理由

同世代の子供と比較して、突出した知性や精神性を兼ね備えた子供は「ギフテッド」と呼ばれることが多い。いわば“才能がある”ということで、これまでアメリカでは「ギフテッド」であることを祝福し、伸ばそうとする傾向が強かった。

しかし、カリフォルニア州では学校教育の「数学」を巡って、この「ギフテッド」という概念をなくそうとする動きが起こっている。

これまでの同州のシステムでは、数学の成績の良い生徒は「特別コース」に配置され、高校では微積分などの高度な数学の授業を受けてきた。

一方、米紙「ニューヨーク・タイムズ」によれば、中学までに「特別コース」に入れなかった生徒は、高校生になっても特別コースに入れず、微積分を学ばずに卒業することが多いという。

実際、微積分は難関校の入試で必須であることが少なくないと同紙は書く。つまり、微積分を理解しているか否かで、多かれ少なかれふるいに掛けられてしまう現実がある。

このことから、成績の良い一部の生徒しか微積分を学べないのは「不平等だ」、特別コースは、「永続的な社会経済的格差につながっている」との見解が存在していた。それが年々強まるなかで「特別コース廃止案」は生まれた。

「数学は長年にわたって多くの学生を排除する形で発展してきた」。高度な数学の授業を受けられない生徒がいることは不平等。だから「特別コースを廃止して、数学の成績の良い生徒も悪い生徒も一緒に勉強すべきだ」と。

しかし、この草案はただコースの廃止だけを訴えている訳ではない。それが問題をややこしくしている。

ついに数学にも「お目覚め」文化の波が押し寄せてきた?

同紙によれば、草案には「“ギフテッドな生徒”という概念自体を否定する」と記されており、特別な才能を持つ生徒のみが特別な成長の道を歩めるという概念を消し、すべての生徒が成長の道を歩んでいるという認識に変えるべきだ、と訴えている。

そして、教師らに以下のことを促している。

まず、微積分を重要視するのをやめ、代わりにデータサイエンスや統計学を積極的に教えること。また、数学の授業をより社会正義との繋がりのあるものにすること。

後者はやや分かりにくいが、この草案を支持するスタンフォード大学のジョー・ボーラー教授は、米メディア「ABC10」にこう語っている。

「たとえば、賃金格差は数学の問題であるとも言えます。女性は同じ仕事で男性の賃金の82%しか稼げていません」。こういった内容を数学の授業に含むことが、数学を「より社会正義との繋がりのあるものにすること」だと言う。

しかし、リバタリアンで教育研究者のウィリアムソン・エバーズをはじめ、反対派は、数学に社会正義などの「お目覚め」の政治観を注入することや、微積分を人種差別や不平等の象徴のように扱うことに異論を唱えている。

「数学はあくまでも数学」で、数・量・図形などに関する学問だ。社会正義を教える時間ではない、と。

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