中学受験目前「魔の月」に気をつけたい危険な兆候 – ニュース・コラム – Y!ファイナンス – Yahoo!ファイナンス

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10:01 配信

東洋経済オンライン

中学入試本番を控え、秋頃から12月にかけては、受験生の親にとって「魔の月」とも言われる。やる気がないように見える子どもにいら立ちを募らせ、つい暴言をはいてしまったり手が出たり。自分はなんてひどい親なのだろうと自己嫌悪に陥ることもあるかもしれない。

この難しい時期に、親として心がけておくべきことはなんだろう。教育虐待に突入してしまう家庭と、そうでない家庭では、どんなところが分かれ道になるのか?  中学受験や親の悩みに詳しい専門家3人のイベントから、受験を控えた「魔の月」に心がけておきたいことを全3回に分けてお届けします。

1回目は、保護者の信頼があつく予約が絶えない中学受験専門カウンセラー、算数教育家の安浪京子さんです。

(2回目は、毎年2500人以上の親の悩みに向き合う教育デザインラボ代表理事の石田勝紀さん、3回目は育児・教育に関して多くの著作があり、教育虐待の第一人者でもあるジャーナリストのおおたとしまささんが登場します)

■「子どもに手を上げる」は、受験生の親なら誰もが経験? 

 中学入試本番を控えた、6年生の秋頃以降は、立て続けの模試でさまざまな判定を出されます。塾では過去問演習が始まり、親は受験校の絞り込みに必死になる時期です。このラストスパートの時期、親は「ここまで頑張ってきたのだから……」と、子どもにさらなる必死さを望みますが、実際は疲れや反発心も出てくる時期。親子の衝突が起きやすく、親たちがもっとも悩む時期にもなります。

 そんな中で、ついヒートアップして、子どもにテキストを投げつけてしまったり、暴言をはいてしまったりと、後悔する親御さんも少なくありません。私が実施したアンケートでも、「テキストを投げたり、捨てたりしたことがある」という質問には、「ある」と答えた人が47%。「子どもに手を上げたことがある」という質問では、「ある」が52%、という結果でした。

 むしろ、この時期に「修羅場を経験しない家庭はない」と言っても過言ではないでしょう。だからこそ、親にとって今まで知らなかった自分が出てくる「魔の月」と言えるのかもしれません。

 アンケートでは、参加者の皆さんに「これって虐待かも? と思った瞬間」についても聞きました。心をえぐるようなつらい質問だったかもしれませんが、多くの方が具体的に書いてくださりありがたかったです。

 そこからは、大きく分けて「暴言をはいてしまったとき」「手を上げてしまったとき」「強制したとき」の3つが、親が最も虐待だと危惧している行為だということでした。

 例えば、暴言に関しては「もう受験なんてやめてしまえ!」にはじまり、否定的な言葉、怒り、理詰め、きつい口調など、感情にまかせたものがほとんどでした。2つ目の「手を上げてしまったとき」には、たたく、物を投げてしまうなど。3つ目の「強制」は、過酷なスケジュール管理をあげる方が多くいました。子どもが泣いても無理やり勉強させる、学校・塾・家の往復はすべて車で息つく間がない、塾の帰宅後も夜遅くまで勉強させる、などです。

 でも、まず知っていただきたいのが、「自分は虐待をしているのでは?  ひどい親なのでは?」と自己嫌悪に陥って自問自答している時点で、客観的に自分を見られているということです。自分を俯瞰できるならば、本当に深刻な虐待に至る可能性はかなり低いのではないでしょうか。

 親だって聖人君子ではないですし、突発的に手が上がることだってあります。そんな自分に呆然とし、後に激しく後悔する……こうして、子どもへの関わり方に悩みながら、親も成長していくのだと思います。

■子どもの顔から表情が消える、危ない親の関わり方

 とはいえ、これまで中学受験専門の家庭教師として何百件というご家庭に入り、勉強を見させていただく中で、気になることもありました。

 家庭教師として入る場合、「暴言」や「手を上げる」などの行為を目の前で見る機会はほとんどありません。ですが、第三者の目でみて、明らかに子どものキャパシティーを超えてしまうような関わり方をしていたり、子どもの顔から表情が消えていく様子をみることはたびたびありました。

 そうなってしまう原因の1つが親による「徹底管理」です。たとえば、大手進学塾を複数、掛け持ちさせ、習い事も空手、バイオリン、英語とびっしりスケジュールが組まれていて週に1日も休みがない。送り迎えはすべて車で行い、食事は移動の合間に片手で食べられるおにぎり──といった具合です。ここで言いたいのは、勉強だけでなく、生活すべてを分刻みで管理しているという意味です。

 ほかにも、「口出し」などがあります。たとえば、私からお子さんに質問しても、すべて親が先回りして答えてしまうケースです。それが常態化してしまうと、「親が答えてくれるから」と、子どもは考えることを放棄し、徹底的に待ちの姿勢になります。目もボーッとして反応が鈍く、勉強を教えても頭がまったく働かないということが起きてしまうのです。

 明らかに「学習指導」をやりすぎというご家庭もあります。中学受験では、子どもがわからない問題を親が教える機会も多いですよね。それ自体は悪いことではないのですが、行き過ぎたご家庭では、たとえ夜中の2時3時になろうとも、課題がすべて終わるまでやらせます。親が右手に木の定規を持ち、間違えたりわからなかったらビシッとたたく、眠そうな目をしてもたたくということを恒常的にされている家庭もありました。おびえた状態で勉強させても鉛筆が進むはずはなく、委縮した状態で物事を深く考えるなど、そもそも無理です。

 ほかにも、親が勝手に、子どもが家にいる空き時間をすべて個別指導などで埋めようとする「封じ込め」。徹底管理と似ていますが、本人すら当日のスケジュールを把握しておらず、先生が次々と家に訪れるようなケースです。ほかにも、勉強の面倒はすべて外注し、私は中学受験にはいっさい関わりませんという態度をとる「放置」。親の機嫌の乱高下がはげしく、気分によって子どもへの態度が変わる「カメレオン」などもあります。

 こういう子どもたちすべてに共通するのは、次第に目に生気がなくなっていき、主体性を放棄するということです。意思をもって何かをやろうとしても、親によってすべて決められてしまう。意見を言っても聞く耳を持ってくれない、あるいはスルーされる──こんな事が続くと、「自分で何かを判断したり考えても無駄だ」という諦めの気持ちが強くなって当然です。

 結果として、主体的に考えたり行動する力を失い、ひいては生きる力そのものが奪われてしまうという意味で、大変危険だなと感じます。

 こういった気になるご家庭には、親御さんにも、それとなく考え方や行動を変えていただくよういろいろと働きかけます。でも、なかなか変わらない方も多いのが現状です。そういった方々からは、自分のやり方が正しいと信じ切っている、あるいは耳の痛いことは聴きたくない、とりあえず中学受験期間だけやり過ごせば、と考えていらっしゃるのが伝わってきます。

■子どもの反抗はありがたいこと。心して向き合おう

 中学受験の勉強というのは、子どもたちが自分の気持ちを正確に言い表せない、そんな年齢から始まることがほとんどです。抵抗するすべをもたない子どもが親にやられっぱなしになってしまう可能性もあり、親もそのことに気づけない。そこが、高校受験や大学受験との違いであり、怖いところです。

 しかし高学年になると、子どもたちは自分の気持ちを言葉で伝えられるようになります。それが反抗という形で現れることもあるでしょう。でも、まずは反抗してくれたこと、正直な気持ちをぶつけてくれたことを頼もしいと思うことが大切です。これは紛れもなく成長している証しです。

 親からすれば、受験が終わってから反抗期に入ってほしい……というのが本音かもしれません。でも、親子の衝突は子どもにとって、自分自身の生きる力を守るうえで必要なプロセスだということをどうか忘れないでほしいと思います。そして、お子さんの言葉に真摯に耳を傾けてほしいと思います。

 子どもの反抗や訴えに両親ともに耳をかさず無視し続けた結果、もう親には何を言っても無駄だと殻に閉じこもってしまった教え子もいます。子どもが一度下ろしたシャッターを開けるには、ここから長い年月がかかります。その過程で、生きる希望を失ってしまうこともあります。

 子どもの訴えを無視して、とりあえず中学受験さえ乗り切れば安泰だという考えは、とても危険です。たとえ受験で思うような合格が取れなくても、まずはわが子が元気であり、生きる力を失わずにいることのほうが、よほど大切なことではないでしょうか。

 直前期は、親も不安で焦ってしまう時期です。だからこそ、ぜひ“自分の機嫌を取る”ということを忘れないでほしいと思います。

 子どもの一挙手一投足に目が行ってイライラや不安が募りがちな時期なのはわかります。でも、親自身の心に余裕がないと、イライラも不安も増幅するばかりで、いいことは1つもありません。最後の追い込み期は、家庭教師や個別塾の授業を追加するために、家計をやりくりして教育費を捻出されるご家庭も増えます。だからこそ、子どものやる気が感じられないと、なおさら腹が立ってしまいますよね。

 ここで、プロ家庭教師として指導料をいただいている私からの提案です。たまには思い切って、その教育費をご自身の楽しみやケアに使い、自分自身を癒やすほうに回しませんか?  子どもだって、つねに不機嫌な親と一緒にいるより、穏やかな親といるほうが落ち着きます。ひいては、それが安心して勉強に向かう原動力にもなるでしょう。

 入試直前期は毎日顔をつきあわせているからこそ、わが子がわからなくなる、見えなくなるときが出てきます。そんなときは、学校の先生や、塾の先生、友達の親御さんなど第三者に、普段の様子を聞いたり、気になることを相談してみることをおすすめします。別の視点や意見が加わることで、行き詰まりがちな状態に風穴が空き、残りの日々を前向きに頑張れるようになるはずです。

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最終更新:12/13(月) 10:01

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