ニチバンがJFAと“トレーナーの卵”育成プロジェクトを実施!! 錚々たる講師陣による20時間超の濃密講義に受講生「モチベーションが高まった」 – ゲキサカ

花のつくりとはたらき

 ニチバン株式会社と日本サッカー協会(JFA)は2019年度から、アスレティックトレーナーの育成プロジェクト『SOCCER MEDICAL CAMP 』を開講している。全国から“トレーナーの卵”20人が集まり、20時間以上にわたって講義や実技研修を無料で受けられるという画期的な取り組み。受講を終えた参加者からは「現場に近い感覚が学べて勉強になった」「将来Jクラブのトレーナーになるモチベーションが高まった」などと熱い言葉が聞かれている。

プロジェクトを共催するニチバン株式会社は、JFAが2016年に発足した普及・育成プログラム『JFA Youth & Development Programme』(JYD)のオフィシャルパートナー。同社はテーピングブランドの「battlewin」や救急絆創膏ブランド「ケアリーヴ」等を製造・販売しており、メディカルの観点で育成年代からシニア世代までサッカー界を幅広く支え、サッカー界の永遠の課題である『怪我予防』に積極的な取り組みを行っている。

 中でも大きな役割を期待されるのが、将来のアスレティックトレーナーを育成する『SOCCER MEDICAL CAMP 』だ。昨年度は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止となったため、2年ぶり2期目の開催となった今期。専門学校生、大学生・大学院生、現役トレーナーといった多様なバックグラウンドを持つ19歳から26歳の受講生20人が全国から集まった。

 初回セミナーは9月11日に行われ、第7回までは新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンライン開催。それでも受講生の熱量は変わらず、JFA医学委員会のドクター、トレーナーらメディカル領域で活躍する錚々たる講師陣のもと 、サッカー選手に多い外傷や内科的疾患、救命法、アンチドーピング、栄養補給、競技復帰までのリハビリ過程など幅広い知識を深めてきた。

 そして迎えた10月30日、最終講義にあたる第8回セミナーは東京都内のJFAハウスで開催された。これまで画面を通じてディスカッションを行ってきた受講生たちはこの日、ついに初めて顔を合わせた。


※10月30日の最終日は緊急事態宣言解除後且つ感染者数も減少傾向となった状況を鑑みた上での開催。当日は感染症予防対策を十分に行いながら実施。

 最終講義のメインイベントは、日本代表に長年帯同してきたアスレティックトレーナーが直々に行うテーピング指導。3度のワールドカップ帯同経験を持つ前田弘トレーナーは、その冒頭で受講生に問いかけた。


「僕らは何のためにこのテープを使っているのか」。

 優先すべきはあくまでも、選手たちのコンディションを整えることであり、怪我を予防すること。そして怪我をした場合には的確な応急処置を行い、その後も再発防止につなげることだ。

 前田トレーナーは「われわれトレーナーはコンディショニングのコンセプトを知らないといけない。パフォーマンスを上げるためには①トレーニング②リカバリー③睡眠④食事の4つの柱を整えないといけない」「痛みがあってもプレーができるのかどうか。でも痛みがあるからプレーをストップさせることで、痛みなくプレーができる期間は長くなる。僕らはこのジャッジをしっかりしないといけない」と力説し、まずはテーピング以外の要素にも気を配るよう求めた。

 またテーピングの施術に関しても、トップレベルを経験してきたトレーナーならではの心得も飛び出した。それは「見える部分のテープは極力避ける」という意識付けだ。

 前田トレーナーは「たとえば膝にテープを巻いていると、そこを狙ってくる相手もいる」と指摘。その上で「もし皆さんも大学とかで巻くのはいいけど、それをゆくゆくは外せるようにしないといけない。日本代表ではベンチでアイシングをするのもタオルで巻いて隠しながらやっている」と訴えかけた。

 その後、受講生は日本代表活動中の施術風景が収められた動画を視聴。片足あたり2〜3分で巻くトレーナーの姿に感銘を受けた様子だった。また動画内では、トレーナーが選手の要望に応じてさまざまな巻き方にトライしていた。そこではテープの種類や使う順番も異なる。そのため、たくさんの場数をこなして上達していく必要性も伝えられた。

 そうしてお待ちかねの実技指導。まずは受講者同士で互いの足首にテーピングを巻き合うと、前田トレーナーが「うまく巻けているね。普段どれだけ数多く巻いているかが伝わります」などと語りかけながら出来栄えをチェックしていた。

 続いて東京五輪のU-24日本代表や日本代表のカタールW杯アジア最終予選にも帯同している尾垣孝博トレーナーが手本を披露。綺麗に切り口が揃ったムラのないテーピングが完成すると、参加者からは拍手が巻き起こった。

 加えて受講生は足首捻挫やもも裏打撲時に使用するガードクッションの使い方、前十字靭帯損傷からのリハビリ中のテーピング法も教わった。前田トレーナーは「解剖学的にどこに何があるのか、どこをどう動かすのかを考えながら巻くこと。テープを巻いていても再受傷の危険があるので、しっかりと症状を評価しながらやるように」と伝えた。

 最終講義ではその他、ニチバン株式会社国内事業本部製品開発部の辻泰輝氏による「テーピング開発秘話」、なでしこジャパンの中野江利子トレーナーによる「東京五輪報告」、U-20日本代表の影山雅永監督による講義「チームに求められるトレーナーの役割」など、さまざまなセッションが繰り広げられた。受講生はテーピングの学術的な解説から、チーム現場での働き方まで多くの学びを獲得し、修了証を手にした。

 終了式には元日本代表でJYDアンバサダーの北澤豪氏も出席し、トレーナーにまつわる秘話も披露。1997年のフランスW杯予選・韓国戦の直前、北澤氏は体調を崩して3日間食事ができなかったが、監督・コーチにはそのことを伝えられなかったのだという。

 だが、唯一トレーナーにだけ話すと「俺に任せろ」と力強い言葉が返ってきたとのこと。「寝ることができないまま試合をしたけど、おかげで完璧なパフォーマンスを出すことができた」。そう振り返った北澤氏は受講生たちに「世界を目指して頑張ってください」と力強く呼びかけた。

最後に記念撮影を行い、全てのプログラムが終了。アスレティックトレーナーに求められる知識を得ただけでなく、同じ夢を追う仲間たちとの時間を通じて新たなモチベーションも高めた受講生たち。今後は再びそれぞれの場所に戻り、大きな夢に向かって日々の鍛錬を積んでいく。



『ゲキサカ』では終了式を終えた3人の受講生に『SOCCER MEDICAL CAMP 』で得たものを振り返ってもらった。


——第一回から振り返って、どのような学びがありましたか。


原田倖大さん(25歳、福岡医健・スポーツ専門学校)「トレーナーは幅広い知識が必要になるので、自分が知っていることや知らないことがたくさんある中で、知識と人間性の部分で成長できたのではないかと思います。講義の中には知らなかったこともあったし、自分で思っていたことが違ったということもありました。たとえば今日の講義でいえば、選手との距離感がとても大事で、自分もトレーナー活動をしていた中で苦労したこともあったので、監督やコーチ陣も求めていることだと思いますし、一線をどこに引くかが大事だなと感じました」

中嶋克規さん(20歳、大阪ハイテクノロジー専門学校)「今まで学校で習ってきた知識以外のこともありましたし、実際に現場で活用されている知識も知ることができたので、いままで自分がやってきた勉強の仕方を見直す きっかけになりました。たとえばオスグッド病に関してなんですが、これまで基本的には四頭筋の硬さからくると習っていたんですが、これまで3年間コーチとして育成年代を見ていて10人ぐらいいた中で、硬くない選手もなっているなと違和感を感じることがありました。そのことについてドクターの方が講義してくださって、そうじゃない場合もあるという知識を学ぶことができましたし、いろんな考え方を知ることができました」

小川優翔さん(19歳、東京リゾート&スポーツ専門学校)「教科書レベルだと学べない傾向みたいなものをリアルな場で学べたことがよかったです。たとえばリハビリメニューはドクターによりけりといった言葉で教科書に語られていることもあるんですが、“よりけり”の部分を講義の中で『うちのドクターはこう組んでいます』とメニューを教えていただけたり、ポイントを押さえながら復帰に向けた流れを知ることができました」

——これが無料で受けられるというのはなかなかない機会だと思いますが、参加できたことについてどう感じていますか。


原田さん「僕自身は学校の先生を通じて募集を知って参加させていただいたんですが、この大きな企画に参加できて光栄ですし、みんなが参加したいと思う企画だったと思います。これほどの内容は当たり前の状況ではないので本当にありがたかったです」

中嶋さん「学校推薦で参加させていただいたんですが、他にも応募している生徒がいて、もし別の人が参加していたら相当嫉妬してるだろうなとすごく感じました(笑)。開講式でプログラムを聞いた時から『これは大事にしないといけない機会だな』とすごく感じましたし、学校を代表して来ているので、学校での立ち振る舞いとか、ちょっとした気遣いでも変化する機会になったので、受講することができて本当に良かったと思います」

小川さん「いまのトップトレーナーに若い世代がいないことが現実的な問題だと言われていて、これからもっとスポーツ界を盛り上げるためには若い世代の活躍が大事だといろんなトレーナーの方が言われているし、僕もそう思っています。でも経験がない以上、まずは先輩の方々の知見を聞いていかないといけない中で、トップトレーナーの話を聞ける機会が今までなかったので、こうした企画を開催していただいてありがたい思いです」

——知識がついたことはもちろんですが、モチベーション面でも変化を感じられたのではないかと思います。そのあたりはいかがですか。


原田さん「トレーナーがモチベーションを上げていることは選手にとっても大事だと思うんです。トレーナーが、モチベーションが低い状況で選手に対応しても選手のモチベーションは上がらないですし、トレーナーが選手を盛り上げていくことがすごく大事かなと思います。やっぱり今日は対面で、普通なら見られない内容を見ることができ、日本を代表するトレーナーさんの動画や活動風景を見られたのが良かったです。教科書どおりではないテーピングの巻き方なども見ることができて、モチベーションが上がりました。」

中嶋さん「学校内ではここまで上を目指しているような同級生がいなくて、正直学校内で満足している部分があったんですが、ここにきてまだまだ自分の物足りないことを見つけることができたのが大きかったです。まだまだこれで努力しているとは言えないと思いました。僕はコーチとしても活動しているのもあって、影山さんの話を聞きながら、今まで自分が感じてきた悩みやモヤモヤしたものがスッキリしました。トレーナーにもコーチの能力が必要になるという話は自分がいままで感じていたことを言語化されたような状態になりましたし、これからの活動に活かしていけるなと大きなモチベーションになりました。また、もっとコーチの能力を高めていかないといけないし、そこを伸ばせる環境にいるとも気づけたので、トレーナーとして活動していく上で今の環境が無駄にならないなと感じることができました」

小川さん「いろんな講義を受けて知らないことがいっぱいあって、率直に自分がまだまだ知らないことばかりだなと実感できて、そこでモチベーションが上がりました。無知の知という言葉があるように自分がまだまだ知らないということを知ることができて、その上でどうすればいいかを考える場面が何度もありました。教科書的なものでは学校内でそう低いレベルにないという実感はあったんですが、社会に出た時のことを考えるとまだ知らないことしかないなと感じたので、まだまだ学ぶことがあって楽しいなと思えたのが良かったです。また今日のところでいえば、みんなが終了式でどんなところを目指しているかを語っていて、志が高いメンバーが揃っているんだなと感じたので、そこに負けずに自分も高みを目指していかないといけない、これからやってやろうと思いました」

——そもそもトレーナーになろうと思ったきっかけはどのようなことだったんですか。もしよろしければ、サッカーとの関わりを教えてください。


原田さん「サッカーは小学校1年生から高校3年生(広島県の瀬戸内高出身)までプレーして、社会人になってからも身体を動かす程度にやっていました。中学校卒業くらいからサッカーに携わる職業に就きたいというのがあったので、それが今に繋がっています。サッカーをする中でプロにはなれないなというのを心の中で思っていたので、とにかくサッカーに携わりたいと思って、次は支える側になろうと思いました」

中嶋さん「サッカーは小学校1年生から高校3年生までやっていて、トレーナーになるため専門学校に入ってからは中学校の時にプレーしていたチームでコーチをしています。せっかくの機会なので怪我をした選手の話を聞きながら、どんな怪我なのか学校の先生に聞いて勉強もしていました。僕もプロサッカー選手にはなれないなとずっと思っていて、進路を選ぶことになった時に何がしたいかを純粋に考えた結果、サッカーは上手くないけどサッカーが好きだと考えて、そこで一番に思いついたのがトレーナーでした。大学や専門学校の紹介が来たとき、柔道整復師とアスレティックトレーナーの資格が一緒に取れる学校を見つけたので目指すようになりました」

小川さん「僕自身はサッカーのプレー経験はなく、ずっと野球をやっていました。中学生の時に自分がいたクラブチームにアスレティックトレーナーがいて、怪我をした時に対応してくれたのがきっかけで、将来は子どもたちが怪我をしないようにサポートしたいと思うようになりました。両膝のジャンパー膝・膝蓋腱炎、腰椎分離症で1年間くらいはリハビリをしていたので、心身ともにサポートしてもらった経験は大きかったです。ただ野球に特化してしまうと野球をやっている子しか救えなくなるので、自分は全部のスポーツをやっている選手を見られるようになりたいと思い、どんな競技にも携わっていこうとこの企画に応募しました」

——今回学んだことをこれからどう活かしていきたいですか。またどんなトレーナーになっていきたいですか。


原田さん「いまは学生で試験もあるので、まずは資格を取ることが目標です。その後はJリーグのチームに携わり、ゆくゆくは日本を代表するトレーナーになれるように頑張りたいです。そのために今回学んだことをトレーナー活動の中でしっかり選手に還元していきたいです。また今後自分がJリーグのトレーナー、日本を代表するようなトレーナーになり、自分の知識もプラスしながら選手に提供できるトレーナー、選手のために勝利に貢献できるようなトレーナーになっていきたいです」

中嶋さん「僕も今年、アスレティックトレーナーと柔道整復師の試験があるので、まずはアスレティックトレーナーの筆記試験に合格したいです。またクラスの柔道整復師の合格率を100%にしたいという思いがあるので、みんなを頑張ってサポートしたいです。今後はJリーグのトレーナーを目指しているので、そこに対して自分でできる努力を続けていきたいです。今まで自分自身は平凡な人生というか、ここまで本気になれるものをなかなか見つけたことがなかったんですが、いまはこうした企画に参加できたこともあり、アスレティックトレーナーの大きな可能性を感じるようになりました。アスレティックトレーナーになるのは難しいという印象を持っている人が多く、高校生は合格率を聞くだけでその学校に行くのをやめることもあると聞くので、そういった人たちにも影響を与えられるような、『この人がここまで頑張ったなら自分もやれる』と思ってもらえるようなトレーナーになりたいです」

小川さん「この8回の講義を通して学んできた知識を自分のみならずいろんな人に広げることで、自分自身のアウトプットの勉強にもなると思います。いろんな人が知識を持っていけば、スポーツ界全体にもいい影響になると思うので、今日学んだことをどんどんアウトプットしていって、さらに自分も知識を入れていって、自己研鑽を忘れずトレーナー人生を過ごしていきたいです。またちょっと質問から外れてしまうかもしれないんですが、自分は5教科の国語・算数・理科・社会・英語だけでなく、そこにコンディショニングを加えたいという思いがあります。自分は怪我の経験があるので、義務教育の一環でコンディショニングの重要性を感じてもらいたいです。育成年代は怪我が多いのに、そこにアプローチができていない現状が歯痒いです。海外ではそういう授業があるのに日本はまだないので、5教科+コンディショニングで、育成年代で義務教育が受けられるように自分がしていきたいです」

【写真】20時間超にわたる濃密講座の集大成…ニチバン&JFAのトレーナー育成プロジェクト『SOCCER MEDICAL CAMP』最終講義が開催!


▼バトルウィン(ニチバン)のブランドサイト


https://www.battlewin.com/

▼JYD×バトルウィン(ニチバン)サッカーメディカルサポートサイト


https://www.battlewin-jyd.com/

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