【荒瀬分科会長】 皆さん,おはようございます。荒瀬でございます。定刻となりましたので,ただいまから第132回中央教育審議会初等中等教育分科会を開催いたします。
本日は御多忙の中,早朝から御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
議事に入ります前に,前回の会議以降で,事務局に人事異動があったということですので,御紹介をお願いいたします。
【白井教育制度改革室長】 事務局でございます。
9月21日付で事務次官に就任いたしました,義本から御紹介させていただきたいと存じます。初めに,事務次官の義本でございます。
【義本事務次官】 よろしくお願いいたします。
【白井教育制度改革室長】 官房長に就任いたしました,矢野でございます。
【矢野官房長】 矢野でございます。どうぞよろしくお願いします。
【白井教育制度改革室長】 総括審議官の柿田でございます。
【柿田総括審議官】 柿田でございます。よろしくお願いします。
【白井教育制度改革室長】 総合教育政策局長の藤原でございます。
【藤原総合教育政策局長】 藤原でございます。
【白井教育制度改革室長】 社会教育振興統括官の根本でございます。
【根本社会教育振興統括官】 根本でございます。よろしくお願いいたします。
【白井教育制度改革室長】 初等中等教育局長の伯井でございます。
【伯井初等中等教育局長】 よろしくお願いします。
【白井教育制度改革室長】 学習基盤審議官の茂里でございます。
【茂里学習基盤審議官】 よろしくお願いします。
【白井教育制度改革室長】 審議官(初等中等教育局担当)の淵上でございます。
【淵上審議官】 よろしくお願いいたします。
【白井教育制度改革室長】 初等中等教育企画課長の水田でございます。
【水田初等中等教育企画課長】 よろしくお願いします。
【白井教育制度改革室長】 その他新たに就任した者でございますが,事前にお送りしております出席者一覧をもって紹介に代えさせていただきます。
事務局を代表いたしまして,事務次官に就任いたしました義本より,一言御挨拶申し上げます。
【義本事務次官】 おはようございます。改めまして,文部科学事務次官の義本でございます。
今回では,御紹介いただきましたように幹部が大幅に交代いたしました。とは申しましても,それぞれのメンバーは分科会の委員の先生方にそれぞれの仕事でいろいろな形で御指導いただき,一緒に仕事をさせていただいたと思っているところでございます。ポストが替わりましても,引き続きよろしく御指導いただきたいと思っているところでございます。
さて,ちょっとお時間いただきましたので,少し長めの御挨拶をさせていただきたいと思います。9月に事務方の人事異動がございまして,また,10月に岸田内閣が発足いたしまして,新しくスタートしたわけでございますけれども,「令和の日本型学校教育」をしっかり進めていくという路線については,この内閣においても継承し,さらに進めていこうということについては全く変わりございません。
新しく就任いたしました末松大臣におきましても,記者会見等において,それをしっかり継承し発展させていくんだということについて力強くお話しいただいているところでございます。私どもとしては,しっかりさらに取り組んでいきたいと思っているところでございます。特に足元,経済対策の中において人への投資ということについて,重点分野として上げていただいていますので,「令和の日本型学校教育」をさらに発展させるための補正予算,あるいは来年度の当初予算についての予算編成がこれから始まりますので,先生方の御指導をいただきながら,しっかり取り組んでいきたいと思っておるところでございます。
また,緊急事態宣言が解除され,ようやく感染状況も落ち着いてまいりました。コロナの感染対策もしっかり取り組んでいくということは前提でございますけれども,日常の学校教育の生活を取り戻す中において,いよいよ「令和の日本型学校教育」をさらに具体化するというふうなことが課題になっていると思っているところでございます。本日においても答申で提言いただきました,いろいろな制度改正について御提案させていただきまして,また御審議いただきたいと思っております。
また一方,このコロナにおいて臨時休業ですとか,いろいろな形での学校での活動自身が制約を受けたという中において,子供たちの家庭での生活,あるいは学校での生活について大きな影響が出ているということについては否定できないところだと思っております。最近発表いたしました問題行動等調査においても,その兆候が見られるところでございます。そういう点についても,この分科会においてしっかり御議論いただきまして,知見をいただいて政策にも反映いただきたいと思っております。いずれにせよ初等中等教育においては,この分科会が要でございますので,先生方の御指導を賜りながらしっかり取り組んでまいりたいと思います。粗辞でございますけれども,御挨拶として,どうもありがとうございました。
【荒瀬分科会長】 義本次官,ありがとうございました。
幹部の方は相当お替わりになったわけですけれども,大臣もお替わりになりましたが,これまでの取組をさらに一層進めていくという大変力強いお言葉をいただきました。皆さん,どうぞよろしくお願いいたします。
では,続きまして,本日の会議開催方式及び資料につきまして,事務局から御説明をお願いしたいと思います。
なお,前回の会議後,緊急事態宣言が解除されたところではありますが,政府全体の方針としては,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため,引き続きオンラインでの開催が求められているということですので,本分科会においては当面の間,ウェブ会議方式にて開催させていただきたいと思っております。
それでは,事務局から御説明をお願いいたします。
【白井教育制度改革室長】 ただいま分科会長からもお話がございましたけれども,本会議については,新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するために,Webexを用いたウェブ会議方式にて開催させていただきます。
会議を円滑に行う観点から,大変恐れ入りますが,御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようにお願いいたします。また,カメラにつきましては,御発言時以外も含めまして,会議中はオンにしていただくようにお願い申し上げます。御不便をおかけすることもあると存じますが,何とぞ御理解賜りますようお願い申し上げます。
資料について確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第にございますとおり,資料1から資料6まで,それから参考資料は1から5までとなっております。御不明な点等ございましたら,おっしゃっていただければと存じます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
本日ですが,議題が大きく二つございまして,まず,議題1といたしましては,「「令和の日本型学校教育」の実現に向けた取組に関する報告及び総合科学技術・イノベーション会議における審議状況について」。議題2といたしましては,「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」。先ほど次官もおっしゃっていましたが,この二つとなっております。
今回の議題は,議題1については,本年1月に本分科会で取りまとめた答申の内容を踏まえて,分科会の下に設けられました各委員会等で検討いただいている事項及び現在内閣府のほうで行われている教育や人材育成に関する審議状況について,本分科会に現状を御報告いただく案件となっております。
議題2のほうにつきましては,先日報道等でも注目されておりましたけれども,コロナ禍で学校内外の生活や環境が大きく変化し,子供たちの行動等にも大きな影響を与えていることがうかがえるものかと思いますので,こちらの議題についても時間を取っております。御議論を是非いただきたいと思っております。
なお,本日は報道関係者と一般の方向けに,会議の模様をWebex Eventsにて配信しておりますので,御承知おきいただきたいと思います。
では,議事に入ります。議題1でございます。「「令和の日本型学校教育」の実現に向けた取組に関する報告及び総合科学技術・イノベーション会議における審議状況について」,報告案件が幾つかあるようでありますので,まとめて御説明をいただき,御質問等は最後にお願いしたいと思います。
では,まず,高等学校における日本語指導の制度化及び充実方策につきまして御説明をお願いしたいと思います。資料1及び参考資料1に基づいて,石田国際教育課長から御説明いただきます。よろしくお願いいたします。
【石田国際教育課長】 御紹介いただきました国際教育課長の石田でございます。よろしくお願いいたします。
それでは,資料1を御覧いただきながら説明させていただきますけれども,「高等学校等における日本語指導の制度化及び充実方策について」ということで報告させていただきます。まず,検討の背景,経緯でございますけれども,我が国に在留する外国人は増加の一途をたどっておりまして,これに伴いまして,公立の小・中・高等学校に在籍する外国籍の児童生徒も年々増加しておる状況でございます。ここにもございますけれども,高等学校段階におきましては,特に日本語指導が必要な生徒の増加が顕著でございまして,平成30年度では4,000人を超えまして,10年前の約2.7倍になっております。こうした高等学校に在籍する日本語指導が必要な生徒については,文科省が実施した調査によりますと,中退率や卒業後の非正規の就職率が高い,あるいは大学・専修学校等への進学率が低い等の課題が明らかになっております。したがいまして,支援の充実が必要であるということでございます。
2番目にございますけれども,他方,義務教育諸学校段階においては,こういった日本語指導が必要な児童生徒に対する指導については,平成26年に学校教育法の施行規則を改正いたしまして,「特別の教育課程」を編成して,日本語の個別の指導を実施することができるようになっております。しかしながら,高校段階におきましては,「特別の教育課程」の編成,こういった制度は導入されておりませんで,本年1月の中央教育審議会の答申におきまして,高等学校に在籍する外国人生徒等の指導の充実のための日本語指導の方法や,あるいは制度的な在り方について検討を進めるべきだという提言をいただいたところでございます。
文部科学省におきましては,この答申の提言を踏まえまして,本年2月に「高等学校における日本語指導の在り方に関する検討会議」というものを設置いたしまして,高等学校関係者のヒアリングを踏まえつつ,御議論を重ねていただいたところでございます。本日はその報告になっております。
その会議の報告ですけれども,9月末に取りまとめられましたけれども,内容を一つずつ説明させていただければと思いますが,まず,制度化の必要性についてということでございますが,報告書におきましては,日本語指導が必要な生徒を取り巻く課題を踏まえつつ,高等学校において「特別の教育課程」を編成して日本語の指導を実施する制度を導入することの必要性を改めてまとめていただきました。
現在,日本語指導が必要な生徒が多く在籍している高等学校においては,日本語に関する学校設定教科・科目を設置いたしまして,日本語教育に取り組む学校も多くございます。しかしながら,日本語指導が必要な生徒と一くくりに申し上げましても,その日本語能力や,あるいは学習状況は様々でございます。したがいまして,一定の目標と学習内容があらかじめ設定された学校設定教科・科目,こういったものによる日本語学習だけでは対応し切れず,授業以外の時間に個別の日本語指導に取り組んでいると,こういった実態もあるようでございます。
したがいまして,こういった状況を踏まえますと,高等学校においてもやはり「特別の教育課程」を編成して,日本語の特別の指導を実施できる制度を導入するということによりまして,生徒の日本語能力に応じた個別の指導を可能とすることを検討すべきではないかと。あるいは,これによりまして学校設定教科・科目による日本語の授業と,「特別の教育課程」を編成して行う個別の日本語指導等を生徒の状況や日本語能力に応じて選択,あるいは組み合わせるということで実施するということが可能となり,より生徒に適した日本語指導が行われるのではないかという提言がまとめられたところでございます。
その上で,制度の在り方ということでございますけれども,報告におきましては,この在り方についても意見がまとめられております。大きな考え方といたしまして,高等学校においても義務教育段階の制度と同様に,生徒の日本語能力に応じた日本語指導を一定時間,別室等で実施することを基本とすると。しかしながら,高等学校における教育の特徴,多様な課程・学科等があること,あるいは必履修教科・科目等があること,単位履修・修得と卒業認定の考え方があること,こういった高等学校の特徴を尊重した内容とすべきということが提言されたところでございます。
こういった大きな考え方に基づきまして,具体的な制度設計の在り方についての考え方が,その表で記載させていただいておるような内容になっております。例えば教育課程上の位置づけ,左の一番上でございますけれども,こういったところであれば,義務教育段階においては「特別の教育課程」による日本語の指導を小中学校の教育課程に加え,又はその一部に替えることができるとされております。こういったことを踏まえた対応を高等学校にもなされるべきであるということが指摘されております。
また,三つ下,指導の実態等に関しては,義務教育では,日本語指導を受ける児童生徒の在籍学校において行われることが原則でございますけれども,他の学校において指導を受け,それを在籍学校の教育課程内で行われたものとみなす仕組みとなっているということ,それから指導計画の作成ということで,右側の一番上でございますが,「特別の教育課程」を編成するに当たっては,対象の児童生徒の日本語能力を丁寧に把握し,その内容に基づいて,指導の目標及び指導内容を明記した「個別の指導計画」の作成に努めるということとされていることなどを踏まえて,高等学校における制度の具体的な在り方を検討すべきと提言されたところでございます。
その下,充実方策ということですけれども,今申し上げたことのほかに,高等学校において外部の関係機関と連携した上で,日本語指導を充実するための体制づくりに取り組むことが重要であるということ,あるいは教育委員会,文部科学省が果たすべき学校の指導体制づくりの支援,施策の充実などが様々に提言されております。
最後に,今後の対応でございますけれども,文部科学省におきましては,今回の報告を踏まえて,高等学校において,「特別の教育課程」編成・実施の制度導入に必要な対応を速やかに行ってまいりたいと考えております。その後,必要な周知,準備期間を確保した上で,令和5年度から運用開始ができればと考えております。
また,今年度から高等学校における日本語指導の充実のための指導資料作成にも取り組んでおりまして,そちらについても新しい制度の運用開始に間に合うようにしっかり進めてまいりたいと思っております。
なお,高等学校の「特別の教育課程」の制度導入に関しましては,具体的な制度設計等について,改めて中教審の場でも御報告をさせていただく予定でございます。
説明は以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。資料の画面共有がちょっとできていない状態なんですが,それにつきまして,事務局からお願いいたします。
【白井教育制度改革室長】 御連絡申し上げます。本日,資料の投影を予定しておりましたけれども,恐縮でございますが機器の接続にトラブルがあり,現在復旧に取り組んでおります。恐縮ですけれども,委員の皆様方におかれましては,事前にお送りしている資料のほうを,また,傍聴者の方々におかれては,文科省ホームページのほうに全資料をアップしておりますので,そちらのほうで御確認をいただくようにお願い申し上げます。
【荒瀬分科会長】 ということでございます。よろしくお願いいたします。
続きまして,高等学校に関することです。「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議の開催につきまして,田中参事官から御説明をいただきます。よろしくお願いします。
【田中参事官】 初等中等教育局参事官,高校担当の田中でございます。よろしくお願いいたします。
この資料2を,投影できていなくて恐縮ですけれども,御覧いただければと思います。本調査研究協力者会議の設置について御説明申し上げますけれども,まず,1月26日の答申におきましては,幼児教育から高等学校まで幅広く御提言をいただいたわけでございますが,その中で通信制高等学校の在り方についても御提言をいただいております。
資料の中では,6ページに参考としてつけてございますけれども,「通信制課程における教育課程の編成・実施の適正化」,「サテライト施設の教育水準の確保」,「主体的な学校運営改善の徹底」,こういった3点につきまして様々提言をいただきまして,文部科学省におきましても省令改正等の対応を行ったところでございます。
一方で,1ページにお戻りいただきまして,「令和の日本型学校教育」の実現に向けましては,さらなる質の保証というのが必要ではないかということで,今般,調査研究協力者会議を設置したところでございます。その検討の背景につきまして,1ページ目の右側,検討の背景というところで少し御説明申し上げます。
現在の高等学校の通信制課程の教育制度は,これは勤労青少年を前提として,自宅等におきまして「自学自習」に取り組むことを原則とした特例的な方法であるということでございます。これは添削,面接,試験,それから多様なメディアを利用して行うのですけれども,言わば自立した学習者であることを前提とした学習方法であると言えます。
その下でございますけれども,一方で,通信制高校は広域と狭域と二つありますが,3都道府県以上にまたがる通信制高校のことを広域と呼んでおります。この広域通信制高校の生徒の実態といたしましては,かつては勤労青年が中心でございましたが,現在はその3分の2は不登校経験のある16歳から18歳の未就業者,つまり,普通の全日制の高校生と同じような世代の,働いているわけではなくて,専ら高校生をしていると,そういった生徒たちが主となっております。
また,これらの生徒は,広域通信制高校は広範囲に関係施設を設置していますので,本校が例えば遠くにありましても,その都道府県からずっと遠くに住んでいる,例えば本校が九州にあっても東京に住んでいる,そういったこともあるわけです。そういった中で,多様な生徒がおりますけれども,中には通信制制度が前提とする「自学自習」,この学習を行うことが難しいと,そういった生徒も多いという実態がございまして,本来,本制度が想定していた学ぶ意欲を強く持ちながら,ただ,働かざるを得ないと,その就業の中で全日制の高校で学ぶ機会が得られないといった生徒像とは時代の変化の中で大きく変わってきているというところでございます。
こういった中で,広域通信制高校の設置数が近年急激に増えておりまして,一部の学校では多様な生徒の実態に対応した学校教育としての質保証が十分ではないのではないかと,そういった実態がございまして,また,学校運営も不適切な面も見られます。また,広域通信制高校の特徴として,いわゆるサテライト施設が所轄庁,本校の所在する都道府県を超えて,先ほど申し上げましたように全国に幅広く多数設置されておりまして,そこに対する質の保証,管理というのはどうするのかといったことも大きな課題となっております。
こういった中で,左側の上から2番目,検討事項でございますけれども,1番目として,通信制課程の教育方法や学習支援体制の在り方,それから2番目として,そういった高等学校の設置認可基準の在り方,また,都道府県が所轄庁でありますけれども,その所轄庁の在り方,こういったことについてさらなる御検討をお願いしたいということで設置した会議でございます。
委員でございますけれども,ここにございますように,高等学校教育,あるいは通信教育に関係する有識者の方々に御参加いただいております。座長は,本分科会の荒瀬先生にお願いしておりまして,また,本分科会から岩本委員にも御参加いただいているところでございます。
9月28日に第1回目を開催しまして,おととい10月26日に第2回目を開催しまして,まず,委員の皆様方から,実際各学校の校長先生でいらっしゃる方もいますので,そういった実態などをお伺いして検討していただいているところでございます。今後も,大体1か月に1回ぐらいのペースで,この検討事項について審議を進めていただきまして,個々の問題意識に沿って御提言をいただければ,文部科学省としても通信制高校の質保証に向けたさらなる方策を検討,実施してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
続いて,小学校高学年における教科担任制の推進につきまして,御説明をお願いいたしたいと思います。村尾財務課長,よろしくお願いいたします。
【村尾財務課長】 財務課長の村尾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
資料3の1ページ目,「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について」の報告でございます。こちらは中央教育審議会,今年の1月に答申が出ており,そこの中でも小学校は学級担任制で,中学校は教科担任制になるわけですけれども,その間にある小学校5・6年生について専門性の高い教科指導を行っていく,あるいは持ちコマ数軽減による働き方改革に資する,そういった観点でこれまでも進められてきたところであり,より本格的に導入していくということについて検討,方向性が出されているところでございます。
2ポツのところにございますように,調査研究も併せて進めてまいりました。その中で,効果としては,授業の質の向上ですとか,小中の円滑な接続,多面的な児童理解,そして教師の負担軽減といった取組の効果が改めて確認されているところでございます。
3ポツにございますように,(1)のところで,ここの専門家の会議でも,各地域・学校の実情に応じた取組が可能となるような定数措置によって,特定教科における教科担任制の推進を図ることを中心に考えるべきであるということが提言されているところでございます。取組状況や地域によっても差がございますので,一度に専科教員を配置するというよりも,特定の教科による教科担任制からまずはスタートしていくというところが提言されているところでございます。
そして,(2)にございますように,優先的に専科指導の対象とすべき教科について,中央教育審議会では,外国語,理科,算数ということで提言されておりましたけれども,専門家の会議の中では,これに体育を専科指導の対象とすべき教科が適当ということで加えられております。 観点としては,グローバル化の進展やSTEAM教育の充実,子供の体力向上,そういった各教科ごとの観点と,全体的な観点としては,教科指導の専門性や系統的な学びの重要性が指摘されているところです。
そして,(4)のところにございますように,既存の定数措置も踏まえつつ,小規模校間における小学校同士や小中の連携,授業交換等,様々な手法を組合せながら対応してまいります。
そして,「おわりに」のところにございますように,当面はこういった特定教科における教科担任制の推進を図るために定数措置を進めつつ,取組の定着状況などを踏まえて,さらに将来像を検討していくことが提言されているところです。
2ページ目は,この7月の提言を踏まえた来年度の概算要求でございます。小学校の35人学級について,今年の法改正で学年進行で進めていくということになっており,それが右側に記載されております。それを前提にしつつ,小学校高学年における教科担任制の推進についても,提言を踏まえながら概算要求しているということでございます。
左側にございますように,来年度については,2,000人という形で要求をさせていただいております。先ほどの提言にございましたように,外国語,理科,算数,体育を優先的な教科としながら推進していくとしております。そして,4年程度かけて段階的に進めるということとしており,4年間の総数は,8,800人程度を想定しております。引き続き,予算の折衝に当たってまいりたいと考えております。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。頑張っていただきたいと思います。
今,途中から資料の提示ができるようになったみたいです。事務局の皆さん,ありがとうございました。
それでは,続きまして,幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会の審議状況につきまして,大杉幼児教育課長から御説明をいただきます。お願いいたします。
【大杉幼児教育課長】 大杉です。よろしくお願いいたします。
資料4-1でございますけれども,7月8日付で幼児教育の質的向上及び小学校との円滑な接続について調査審議を行う架け橋特別委員会設置をいただきました。これまで特別委員会を4回,それから実務的な検討チームを2回開催させていただきまして,その中では,幼・保・認こ・小学校,全ての団体からのヒアリングも実施させていただいたところでございます。様々な実践の数々を御発表いただく一方で,やはり地域や園による取組の差ということも御指摘いただいた状況でございます。
委員につきましては,御覧のメンバーになってございます。様々な分野,ユース世代も含めた様々な世代で御議論いただくことによりまして,多様な分野において幼児教育について改めて認識を深めていただくとともに,多分野からの様々な客観的な御指摘もいただきながら議論を進めていただいているところでございます。
まだまだ年度末に向けて議論を深めていく段階でございますけれども,現時点の論点整理として,4-2ということで資料をお配りさせていただいているところでございます。幼保小の連携につきましては,形といたしましては9割の幼稚園で小学校との連携を行っているという状況でございますけれども,その中身を見ますと,まだまだ教育内容レベルでの連携は行われておらず,行事の交流にとどまるといったところが半数であるなど,深まりは地域によって大きな差がある。また,幼・保・認定こども園を対象とした調査では,小学校との連携を課題と感じている園が7割から9割あるというような状況でございます。
また,地域や家庭との関係においても,幼児教育の質に関する認識が共有されているとは言い難いという状況にございます。学校種や施設類型を超えて相互理解を図っていくことが様々な小学校入学直後の学習や生活の課題など,接続期の問題ということの背景にあるのではないかということでございます。子供たちに学びや生活の基盤を保証していくためには,学校種や施設類型の違いを超えた連携・協働,質の高い幼児教育の実現に取り組んでいく,幼児教育の成果を踏まえて小学校教育の質の向上にもつなげることが必要,こういった御意見をいただいているところでございます。
現在の目指す方向性といたしましては,4-2の5ページにございますけれども,「社会に開かれた幼児教育カリキュラム」の実現に向けた認識の共有,大前提として,これが重要であろうということ,それから6ページにございますように,各園や地域の創意工夫を生かした幼保小の架け橋プログラムの開発・実践,これは来年度からモデル事業を実施できるように予算要求もさせていただいているところでございます。
また,三つ目に全ての幼児のウェルビーイングを高めるカリキュラムの実現,日常保育の質の高い幼児教育の実践と一人一人個に応じた支援ということを実現していくということ,また,7ページにございますように幼児教育推進体制の全国展開による質の保証と専門性の向上。また,地域における幼児教育施設の役割の認識と関係機関との連携・協働ということで,この五つの柱に沿って御議論を深めていただいているところでございます。また,年度末に向けて取りまとめをいただく過程で随時御報告をさせていただきたいと思います。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
この特別委員会が設置されますときに初中分科会で設置を認めていただいたわけでありますけれども,いろいろと御懸念も承っておりました。私も委員として参加しておりますが,今も御説明にありましたように,幼児教育と小学校教育の架け橋に関する認識の共有を大事にして非常に丁寧な議論が重ねられているということを御報告しておきたいと思います。ありがとうございました。
それでは,最後に,総合科学技術・イノベーション会議における審議状況につきまして,内閣府から御説明をお願いしたいと思います。合田内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官,よろしくお願いいたします。
【合田内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官】内閣府の審議官の合田でございます。
御列席の委員各位には2017年の学習指導要領改訂や学校における働き方改革など,各般にわたり御指導を賜りましたこと,まず冒頭,感謝を申し上げたいと思っております。
本日,内閣府総合科学技術・イノベーション会議の教育・人材ワーキンググループにおける議論の状況について御報告をさせていただきます。委員御案内のとおり,総合科学技術会議,CSTIと呼ばれておりますが,総理を議長とする政府の会議体でございまして,科振費として整備された4,610億円のGIGAスクール構想の実現にも大きな役割を果たしたところでございます。
今,お目通しをいただいております資料5の1ページにございますように,本年3月に閣議決定されました,本年6月の科学技術基本計画では,3本柱の一つとして,STEAM教育など問題発見・課題解決的な学びの充実を図るための具体策について,中教審委員の参画を経て調査・検討を行うということが決定されたところでございます。正に「主体的・対話的で深い学び」そのものでございますけれども,既に御覧いただいておりますように,8月18日のキックオフミーティングでは荒瀬先生から,それから昨日,第3回の10月27日の会議では戸ヶ﨑教育長から御発表をいただきました。御両者の思いにあふれたプレゼンは,傍聴者はもちろんのこと,アカデミア,それからメガバンクの会長,メーカー,あるいは通信業界のトップといったポリシーメーカーに大きなインパクトを与えたところでございます。
次のページを御覧ください。構成メンバーでございますけれども,東京大学の藤井総長を座長といたしておりまして,初中分科会からも秋田先生,荒瀬先生,今村先生,岩本先生,戸ヶ﨑先生,渡邉会長という方々にお入りをいただいているところでございます。
飛んでいただいて恐縮でございますが,4ページを御覧いただきたいと思います。2017年の学習指導要領改訂以降の動きでございますけれども,働き方改革答申,GIGAスクール,それから今年1月の中教審答申,先ほど申し上げた科学技術・イノベーション基本計画といったような一連の流れというのは,全て新課程の移行の中で,「主体的・対話的で深い学び」の実現に全力を尽くしておられる全国の教師の方々をどうお支えするかということだと存じます。
そして,今後,真ん中から右でございますけれども,5年後には,また学習指導要領の改訂もございます。2023年には教育振興基本計画などもございます。デジタル庁も設置されました。来年度には教員の勤務実態調査もございますし,「こども目線での行政の在り方」の検討も行われております。これらの今後5年を見据えた大きな教育政策の変動の中で,今の現場の先生方の御尽力が今後の政策の動きに確実につながって生きるようにという観点から,今後5年間を見通して,省庁横断的な具体的な方策を検討しているというのがこの会議でございます。
次の5ページを御覧いただきますと,喫緊の課題は文理分断の脱却でございまして,御覧いただいたらお分かりのとおり,義務教育終了した段階ではかなり理数教育ができる得意な女性は,女性でも同年代の4割いらっしゃるわけでございますが,高校に行くと普通科の理系を選ぶ女性は16%,大学で理工農のサイエンスを学ぶ方々は僅か5%ということになりまして,この文化的・社会的なバイアスをどう打破するかというのが大変重要な課題でございます。
6ページでございますけれども,今後の学校教育の在り方を考える上で様々なデータを使いながら,左は小学校の35人学級,右は中学校の40人学級ということで,発達障害の困難さに向き合っているお子さん,ギフテッドの可能性のあるお子さん,不登校・不登校傾向のお子さんというのがどれぐらいいらっしゃるかということを可視化させていただいた資料が6ページ。それから次のページは,今回の学力・学習状況調査で家庭の蔵書量と学力ということで調査をなさっておりますけれども,その結果。
それから,8ページは,外国由来のお子さんで,家で日本語を話さないというお子さんの状況などを考えていきますと,9ページを御覧いただきますと,まずは時間軸という観点からは,左側にございますように,中学校の40人学級でも,かなり子供たちは多様化しているということが御覧いただけると存じます。右側でございますが,中教審の1月答申で指摘をしている,個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実するということにつきましては,個々の子供たちの認知の特性や関心に応じた個別最適な学び,これは教育・福祉の観点も含めて実現していく必要がございまして,子供たちの学びは時間的にも空間的にも多様化する。一方で,民主政の基盤である学校における協働的な学びとのの両立が必要であるという御議論をいただいているところでございます。
次の10ページでございますが,このように教室も変われば,学校も変わる必要がございます。これまでのように,左側のように,言わば垂直分業であらゆることを学年・学級・教科の縦割りの中で行ってきた状況から,右側でございますけれども,言わば垂直分業,レイヤー構造の中で,様々なリソースを活用しながら学校を組み立てていくということが必要ではないかという御議論をいただいております。
もちろんデメリット,メリットございまして,下にマル・バツと書いてございますけれども,学びの体系性や集団としての教育の機能が弱くなる可能性がございます。スタディログなどによって子供たちの学びを把握する必要がございますし,協働的な学びはかなり意識的に提供する必要がございます。また,実施主体や責任の所在が不明確になる可能性もございますので,責任の所在や情報の管理主体の明確化,特に情報管理主体の明確化というのは,現在,デジタル庁で行われております教育コンテンツプラットフォームの議論の中でもルール化という議論をして,今,国民の皆様から意見募集もしているところでございます。ただ,これらを乗り越えますと,自分のペースで学びを調整したり,学校外のリソースを活用した学びも可能になったりしてまいりますし,何より認知の特性・関心により応じた教育の展開が可能になってくる。GIGAスクールの本来の目的はここにあるというふうに議論させていただいているところでございます。
11ページは,財源ということで具体的な御説明は省かせていただきますが,公財政支出のミクロ,マクロの状況。それから12ページは,私費負担の状況ということで御議論いただいておりますし,13ページは,今後,STEAM教育や探究活動などを充実する上で,学校外の様々な主体と取り組むに当たってはどのようなパターンがあって,そして14ページでございますが,そのためには特に普通科高校にはどのようなリソースの配分が必要かという議論を正に昨日していただいたところでございます。
最後の15ページでございますけれども,1番目にございますように中教審答申,1月の答申でも言われております同調圧力・正解主義からの脱却。この同調圧力と正解主義は,私どもイノベーションの推進の立場から言っても,言わばイノベーションの最も大きな敵でございます。その観点からは,一人一人の認知の特性を踏まえてその力をさらに伸ばす刺激を与え,その伸びを可視化する。他者との対話を通じて「納得解」を形成する場が必要でございまして,公教育の重要な役割はここにあると考えてございます。
その観点から,このページの下にございますように,時間,人材,それから財源というアロケーションを,5年を見通してどうしていくのかという議論を今,させていただいているところでございまして,本年中に中間まとめを行い,年明け,CSTIで政策パッケージを策定したいと思ってございます。あらゆる政策課題は,既に一府省においてだけでは解決できないという状況にございます。義本次官をはじめ,文部科学省の皆様方,中教審の皆様方と連携をしながら,政府全体で「主体的・対話的で深い学び」の実現に全力を尽くしておられる先生方をお支え申し上げたいと考えている次第でございます。
私のほうからは以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。今,最後におっしゃいましたけれども,学習指導要領の着実な実施に向けて,「主体的・対話的で深い学び」を進めている,あらゆる学校,教職員の取組を支援していただくということで,是非よろしくお願いしたいと思います。
ただいまの御説明にありました総合科学技術・イノベーション会議教育・人材育成ワーキンググループには,先ほども御紹介ありましたけれども,私自身も委員として末席を汚しているところであります。一方で,この中央教育審議会は文部科学大臣の諮問機関であり,本分科会は,初等中等教育の基準に関する重要事項等を専門的に議論するところでありますので,内閣府における議論も踏まえつつ,詳細については中教審として,この場でも主体的に議論していく必要があると思っております。本件につきましては,先日の教育課程部会で戸ヶ﨑委員から御発言をいただきましたけれども,本分科会としてもいただいた御意見に留意しながら運営してまいりたいと思います。後ほどまた皆様から御意見を頂戴したいと思います。
それでは,これまでの事務局及び内閣府からの説明に対して,時間がそれほど取れないんですが,約20分強でございますが,御意見を頂戴したい,あるいは御質問を頂戴したいと思います。御発言をなさいます方は,「手を挙げる」のボタンを押していただきますようにお願いいたします。御指名いたしましたら,ミュートを外して御発言ください。終わりましたら手を下げていただくということでよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
では,戸ヶ﨑委員,よろしくお願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 提出資料の参考資料5に基づき要点だけお話しいたします。
まず1ページ「教科担任制の在り方」です。本市でもすべての小学校で授業交換ではありますが教科担任制を実施し,その効果は強く実感しています。特に,先程,合田審議官から御説明があったSTEAM教育等の小学校段階での基盤づくり,探求的な学びの実現のためにもその意義は高く単なる授業交換から,専科指導による教科担任制が一日も早く実現されることを期待します。
下から4行目,安定的な学年スタッフの構成を担保することは,学級編制基準日や保留学級ことも含めての仕組み作りや基礎定数化の議論も必要と思います。
また,2ページ,定年の引上げを鑑みると,例えば担任をしない学年主任が,学年スタッフへの指導的役割を担うことや,体力的な課題等を払拭する役割分担などにも期待が広がります。
さらに,中程,専科指導の専門性担保策についてですが,小学校においては,即戦力となる教科の専門性の深さも大切なんですが,児童に寄り添う姿勢やきめ細やかな対応ができることがまず大切であると思います。このような人が日々の実践を通して専門性を磨くようになることで,まずは人員確保が可能になるのかなとも考えます。
なお,下から5行目,かつては,「教師たるもの五者(学者とか医者とか易者など)たれ」と言われ,マルチな役割を期待されていました。しかし,今後は,専門職の定数化にも積極的な議論が及ぶことを期待しています。
続きまして,3ページ「幼児教育と小学校教育について」です。地域で幼児教育の意義を発信していく,「センター的機能」を果たす体制整備,家庭に対する「遊びを通じた学びの教育的意義や効果」の啓発,幼児教育の質に関する認識を社会全体で共有していくことなどが求められます。
また,中程から下,教育行政側の課題として,多くの自治体で保育内容を指導できる人材や幼稚園教諭の研修を担当できる指導主事等が極めて少ないため教育委員会を超えて,各自治体において専門職の行政への配置等が急務であること,連携が大切だと理解していても,その具体的方策等がわからずに停滞している場合が多いことから,グッドプラクティスをしっかり共有できる仕組みづくりなどが必要と考えています。
4ページは次の議題で申し上げます。最後に資料にはありませんがCSTI関係で1点申し上げます。GIGAスクール構想の推進により,小中学校のPC1人1台環境が整い,ICTをマストアイテム化した授業が展開されつつありますが,高等学校が課題ではないかと思います。自治体や高等学校によってはBYODの活用が検討されているところもあるようです。クラウド活用や,ネットワーク上の情報セキュリティー問題が危惧されるとともに,中にはスマートフォンの活用も想定されており,あの小さな画面でどこまで様々な学びに活用できるのか疑問に思います。高等学校へも早急なPC1人1台環境整備が必要と思います。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,引き続きまして,清原委員,お願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。杏林大学,そしてルーテル学院大学の客員教授,清原です。
特別委員会・検討会議・調査研究協力者会議等での熱心な御検討に感謝いたします。大きく2点発言させていただきます。1点目は,資料3,「義務教育9年間を見通した教科担任制」についてです。このことは小学校高学年からの教科担任制を進めることで,35人学級とともにこれまで検討してきました「学校における働き方改革」の議論,「令和の日本型学校教育」の議論を経てなされている教育の質,授業の質の向上に向けた大変に重要な仕組みの検討と受け止めています。
今回の御報告で,各地域,学校の実情に応じた取組が可能となるような定数措置により,特定教科における教科担任制の推進,すなわち専科指導の充実を図ることを中心に考えるべきであるという方向性に賛同いたします。具体的には,外国語,理科,算数及び体育について優先的に専科指導の対象とすべき教科とすることが適当という結論に賛同いたします。と申しますのも,私が三鷹市長を務めておりますときに,「コミュニティ・スクールを基盤とした小中一貫教育」を創設させていただき,教育委員会,学校に実践していただく中で,例えば算数と数学について,小中の教員が協力し合うことで学力の向上が図られたという実績を受け止めております。
地域によっては,中学校教員の小学校の専科への協力も有効かもしれませんけれども,大切なのは,小中一貫教育につながるカリキュラムの検討の上で,この教科担任制が生かされることで児童が中学校に進学したときの摩擦が減る,そして学習意欲が継続される。そうした教科担任制が正に中学校への円滑な進学に続くメリットがあるということを受け止めておりますので,是非そのような具体的な方向性についても,さらに実践が進むと望ましいなと思います。
2点目は,資料5の「総合科学技術・イノベーション会議」の「教育・人材育成ワーキンググループ」の取組についてです。次期学習指導要領改訂や来年度実施予定の教員勤務実態調査,「こども目線での行政の在り方」の検討・実現などの動きを見据えて,今後5年程度という時間軸の中で子供たちの学習環境を考えていくとあります。この「こども目線での行政の在り方」の検討・実現ということはとても重要なことだと思います。それを文部科学省だけではなくて,内閣府総合科学技術会議やイノベーション会議が子供目線ということをしっかり置いているということを評価し期待したいと思います。
そして,具体的なことを申し上げます。私はかねて学術会議で,理工系に女性が少ないことに関する検討に参画しましたし,今回,この会議の議長をお務めの藤井総長の東京大学でも志願者の女性の比率が一貫してなかなか2割程度を超えないということも注目されており,今回,男女平等(共同)参画の視点からも能力のある女性がしっかりとした進路を選ぶことができるというような方向性の検討を期待しています。
2点目に,男女を問わず,ここでは「ギフテッド」と表現されていたでしょうか,一定の能力が顕著にある児童生徒をどのように教育・支援していくか。このことも重要な課題だと思います。
3点目に注目しましたのは,今日詳しい御説明はなかったんですが,家庭や保護者の経済的・文化的資本を表す要素の一つと考えられる家にある本が25冊以下と答えた子供は約3割。そして家に本が多い家庭の子供ほど学力調査の正答率が高い傾向というようなことも調査として示されたようです。
さて,今,学校ではGIGAスクールが進んでおり,タブレットやパソコンも教育現場で普及してきています。今後,AIも普及していくかもしれません。そこで,図書だけに限定しない,多メディア化の中で,こうした多メディアの影響がどのように子供たちの学力と相互関係を持っているかということなど,GIGAスクールが進行している中でございますし,学習塾などもタブレットを大いに利用しているようでございます。
また,中学生,高校生ではスマートフォンも普及しているようでございまして,是非この「多メディア」という観点から科学技術・イノベーションの力の増強のための望ましい教育環境がどのようにあるべきか。どうぞ引き続き,子供目線,児童生徒の視点,若者の視点に立った研究を推進していただきたいと,このようにお願いしたいと思います。
以上です。ありがとうございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,堀田委員,お願いいたします。
【堀田分科会長代理】 東北大学の堀田でございます。
合田審議官からのCSTIの御報告のノンブル10のページです。私のほうでは,ほかのいろいろな御報告も含めて一つだけお話ししたいんですが,まず,学校現場へ行きますと,児童生徒の多様性に対して,教員の皆さんは大変一生懸命に御対応されています。しかし,残念ながら手いっぱいな状況があって,人を増やしてほしいという話になりがちというところです。学校がもろもろの機能を丸抱えしてきたという実態を改善する図が右側の上にありますが,どれだけ社会にアウトソーシングできるかということだと思います。そうすると,外の人に委託する分の予算の確保というのをしっかり手当てすることが必要かと思います。もう一つは, ICTを積極的に利用することがこれを成功に導く一つの方策だと思います。現にGIGAの端末をしっかり活用して半年ぐらいたっているようなところでは,クラウドツールをうまく使うことで個別最適な学びや協働的な学びがしっかり進んでいる様子があります。授業改善が随分進んだなという感じがあります。
また,学校行事や生徒会活動,いろいろな学級活動等もですけど,GIGAの端末によって大変オーセンティックな感じになっているところがあります。また,メンタル面でのケアもSNS等でうまくやっているという事案もあります。GIGAの端末で右上のような図になるような働きかけができている学校もある一方で,一般論ではメディアというのは利用者の考え方を増幅する装置ですから,授業における端末利用というのが従来の授業を前提にして増幅してしまう,そういうこともまだ見られるなと思います。
したがいまして,これは特にリーダーシップ層の問題だと思っていますけれども,新しい学校の形を増強するようにメディア,ICTを活用するんだということを理解してもらうことが重要と思います。この図を活用して,今までの授業の在り方を変えていくプロセスでICTをうまく使っていくということを,しっかりとアピールしていくことが必要かと思いました。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは,渡辺弘司委員,お願いいたします。
【渡辺(弘)委員】 日本医師会の渡辺でございます。
資料5の9ページについて御質問したいんですけれども,子供主体の学び,教室以外の選択肢,学年に関係なくという,こういう考え方は,発達障害の子供をたくさん見ている私どもからすると非常に有難いというか,望ましい方針と考えるわけです。
ただ,気になるのは,どこまでそういうことに対して関与していただけるか。発達障害を我々が指導するときは,均等な学力を与えるのが大変難しく,できれば特殊なある能力を伸ばすという形で指導することが多いです。そういうような基礎知識を持った形で,14ページから15ページに人材と財源ということが関与してくると思うんですけれども,どこまでそういう個別な対応をしていただくかによって,当然そこが変わってくると思います。人材の育成というのも,通常の教職員の先生方では非常に負担が増えるのではないかと思うんですが,イノベーション会議の議論の中で,どの辺りまで踏み込んで人材と財源を考えておられるかという点がもし分かりましたらお教えいただきたいと思います。できましたら,やはりそういう個別な対応というのを進めていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
今のお話ですけれども,昨日の会議に私出ておりませんので,全体を知っているということにはならなくて本当に申し訳ないんですけれども,お話の内容をきちんと具体的に伝えていきたいと思います。
合田審議官は,今聞いていらっしゃいますでしょうか。
【合田内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官】 はい,聞いてございます。合田でございます。
【荒瀬分科会長】 じゃ,合田審議官にお願いいたします。
【合田内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官】 渡辺先生,大変重要な御指摘ありがとうございました。
正にCSTIや中教審,産構審の合同ワーキンググループでもその点は何度も取り上げられております。例えばカタリバの代表の今村久美先生などからもそういった御指摘をいただいてございまして,それから昨日の戸ヶ﨑教育長の御発表の中でも,戸田市においては中目黒に本社があり,発達障害の困難さに向かい合っているお子さんをお支えになっているLITALICOさんと連携をして,子供たちの認知の特性の把握とその後のケアというものを,言わば教育と福祉を乗り越えると,「教育福祉」という観点も含めて取り組んでおられるという話がございました。
御指摘いただきました9ページと,それから最後の15ページにございますように,実は,9ページのほうでは,右側の教室には教壇に1人,先生がおりますけれども,その後ろに2人,大人がいるということになっておりまして,恐らく今後,学校のスタッフ・ポートフォリオの多様化というものが必要ではないかという御議論を正にいただいているところでございます。
15ページを御覧いただきますと,一番下の人材のところでございますけれども,人材については,多様な人材が学校教育に参画できるような免許制度の基本構造の転換,多様な勤務が可能となる勤務形態の在り方というような御議論をいただいておりまして,例えばSTEAM教育の分野であれば博士号を持っていらっしゃる先生方,あるいは今,御指摘をいただいたことで言えば,発達障害の専門性を持っておられる方,それからICTやAIに詳しい方,プログラムに詳しい方,こういう方々が改めて教育学部に一から入り直すことなく教壇に立てるような仕組み,あるいは学校にスタッフとして入るような仕組みということを検討すべきではないかという議論が正に昨日も行われていたところでございます。
また,カタリバの今村久美代表からは,今後,オンラインも活用して様々な専門家の力を活用していく必要もあるという御議論をいただいておりますので,渡辺先生から御指摘いただいたこと,しっかり踏まえながら,さらに議論を深めさせていただきたい。また,文部科学省とも連携をさせていただきたいと考えているところでございます。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 合田審議官,ありがとうございました。渡辺先生,よろしいでしょうか。ありがとうございます。
これは一応5年程度でということでいろいろなものを進めていくということであります。一方ではしっかりと進めていくということと,もう一方では慎重にいろいろと配慮しながら見ていくという,両方やっていくことが非常に重要でありますので,その点でも中教審初等中等教育分科会での議論を今後もよろしくお願いしたいと思います。
では,黒木委員,お願いいたします。
【黒木委員】 私は全国町村会の行政委員会の委員を務めております宮崎県の西米良村長の黒木と申します。
私のほうからも今話題になっております教科担任制の在り方の中での,まず第1点としまして,教職員の確保について御意見を述べさせていただきます。資料3でもありますように,令和4年度の概算要求において,小学校の高学年における教科担任制の推進や,少人数学級の推進に係る教職員確保のための予算が計上されているところでございます。ただ,私ども町村の学校現場における教職員の確保は,都市部よりも非常に厳しい状況にあるというのも事実でございまして,我々も単独で採用をしながら教育の質を保っているという現状もあり,今後とも,十分な財政措置をお願いしたいと思います。
また,小学校の高学年の教科担任制導入を行う場合は,既存の加配職員を振り替えるのではなく,必要な職員の確保をしていただいて実施すべきであるというふうに意見を申し上げるところであります。現在の加配の定数につきましては,残念ながら予算によって配置されない場合もあり得るということが現実でございます。いわゆる町村の独自の財源で加配職員を確保しており,それによって,すべからく子供たちの教育の質を保つということを行っている現状がございます。
例えば私の村でございますと,今議論になっております専門性の高い先生方をということで県に兼務の申請をいたしまして,2011年,およそ10年前からですが,中学校の先生が小学校に来て,専門性の高い教育を行っていただいております。これにつきましては非常に効果が高いと我々は認識いたしておりますので,今回の議論については,極めて妥当な政策を打っていただくと,大賛成を致すところでございます。
ただ,この中で,今後,教科担任制を段階的に行う際には,小学校,それから中学校のいわゆる免許の取得の推進とか,特定教科については中小連携を行うなど,いわゆる柔軟な対応ができるような施策を同時に講じていただきたい。
なお,一部の情報では,いわゆる加配を振り当てて確保するのではないかという懸念も一部ございますが,あくまでも定数増として是非取り組んでいただきますこともお願い申し上げながら,私の意見といたします。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
現在,手を挙げていらっしゃいます方が田中委員,宮澤委員,宮原委員のお三方です。大変申し訳ありませんが,このお話につきましての御発言は,この3人の方までとさせていただきたいと思います。
では,田中委員,お願いいたします。
【田中委員】 ありがとうございます。NPO法人青少年自立援助センターの田中と申します。
東京都内で外国にルーツを持つ子供,若者の教育と就労支援を行っています。私のほうからは外国人支援に関わるものとして2点,高等学校における日本語指導の制度化と方策の検討状況についての質問と,資料5の教育・人材育成ワーキンググループにおける議論について,気になった点をコメントさせてください。
まず,高等学校における日本語指導の制度化の方策について,NPO等と高校が連携しとありますが,地域によっては,外国人支援団体があっても日本語教育の専門性を持たない場合ですとか,支援団体自体がない地域もあります。アウトソーシングの話が出ていましたけれども,遠隔教育の手段を学校さんが活用できるのであれば,高校間や身近な地域資源との連携だけでなく,県をまたぐ広域での対応ですとか,あるいは留学生を受け入れている日本語学校との連携なんかも検討されるべきかと思いますが,検討状況としてはいかがでしょうか。
2点目としては,外国人高校生の十分な学びですとか,多様な進路へのサポートのためには,外国人保護者と学校さんとの協力連携を欠かすことができないと認識していますが,言葉の壁によってコミュニケーションが十分に取れずに双方困っているというような現状があります。遠隔での通訳制度ですとか,多言語翻訳文書が作成できるようなアプリ等も今ありますので,そうしたものの活用を含めて,学校と家庭自体が高校生の生徒さんに関してもスムーズにコミュニケーションを行えるような方策や支援が必要かと思いますが,この辺りについての検討状況を教えてください。
また,3点目,日本語を学んでいる間,高校生が教科学習や課外活動に十分に参加できないというような状況もあります。学力・活動上に課題のない外国人高校生がそういった点で機会損失になりがちな現状がありまして,グローバル人材として海外にルーツを持つ生徒が日本社会で活躍する上でも,日本語力が十分でなくても充実した高校生活と学びが得られるような学校生活における多言語化ですとか,ITを活用した母語での教育機会への支援なども必要かと思いますが,その辺りの検討がなされているのかというのが質問になります。
資料5の教育・人材育成ワーキンググループにおける議論については,8ページの家庭での日本語を話す頻度が学力と相関しているというような表現は非常にリスクがあると感じました。外国人の日本語を母語としないお子さんの日本語力だけでなく,心身の健康の発達のためには,母語の安定化と十分な育成というのが非常に重要であるというのが関係者の認識です。このような表記をされてしまうと,家の中でも日本語を使うほうがいいんだというような誤解が,学校現場だけでなく,外国人保護者にも広まってしまうリスクがあり,その結果,日本語も母語も十分発達しない,ダブルリミテッドと呼ばれるような状況に陥るリスクを高めると懸念します。家で日本語を話す頻度と学力の相関がどのような文脈でこの資料の中に盛り込まれたかというのはちょっと分からないんですけれども,少し観点の見直しや表現を改めるようなことを御検討いただきたいと思います。
以上です。
【荒瀬分科会長】 大変重要な御指摘かと思います。まず,最初に御質問いただきました点ですけれども,石田国際教育課長,よろしいでしょうか。
【石田国際教育課長】 ありがとうございます。大変的確な御質問をいただきまして,誠にありがとうございます。
今,御質問いただいた中で,資料1については3点いただいたかと思いますけれども,1点目,2点目の御質問に関しましては,正に我々検討している最中でございまして,特に外国にルーツのある児童生徒の現状に関しましては,地域によって大きく違いがございまして,また,御指摘ありましたように,NPOなど学校以外の者と連携することがなかなか難しいような,そういうNPOがないというような地域もあれば,あるいは集住地域というような形で非常に多くのそういった生徒さんがおられるということで,ある程度学校の外部にもそういった方々がしっかりとおられるというようなことがあって,随分地域によって違いがあると伺っております。
したがいまして,前者についてどういった対応ができるのかということが課題ということで認識しておりますけれども,御指摘いただいたように,今,ICTを使ったりとか,そういった技術的な進展ができておりますので,そういったことも使ってしっかりと対応していくということが必要かと思いますし,また,学校の中で日本語がなかなか聞き取れないというようなこと等についても今お話しありましたけれども,簡易な翻訳機のようなものを実際に活用して,学校の中でのコミュニケーションをやっているというような例も,我々きめ細やかな受入れのための事業ということで,予算事業でいろいろな対応をしておりますけれども,そういった事例がございますので,そういったグッドプラクティスをしっかりと展開していくということが必要なのかなと思っております。
それから,3点目にいただいたお話ですけれども,正に日本語指導だけではなくて,教科指導も丁寧に行えるように考えていきたいと思っておりますし,多言語資料を使うことも含めて検討していきたいと考えております。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】ありがとうございました。この点,田中委員よろしいでしょうか。
【田中委員】 ありがとうございます。よろしくお願いします。
【荒瀬分科会長】 合田審議官,よろしくお願いいたします。
【合田内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官】
資料5の8ページについての御指摘をいただきました。大変重要な御指摘を賜ったと感謝いたしているところでございます。このページでございますけれども,前のページの家にある本の冊数につきましては,これは7ページにしても,8ページにいたしましても,文部科学省の総合教育政策局が行いました全国学力・学習状況調査において子供たちを対象に聞いたものを,私のほうデータとして使わせていただいているというものでございます。
7ページのほうは,家庭にある本の冊数と子供たちの学力には,これは統計学上,明確に相関がございますので,相関があると書かせていただきました。それに対しまして,8ページは,これは相関とは言いませんので,私も相関という言葉を使わせていただかずに正答率に差が見られるという表現をさせていただきました。
その上で,私どもこのデータは,先ほど田中代表がおっしゃいましたように,平均でいけば,クラスに1人は日本語ということについて困難さを抱えている子供がいると。そのような子供たちについては,ICTも含めてしっかりケアをしていかなければならないということを明確にお示しさせていただきたいという意図で作らせていただいたところでございますが,今,御指摘をいただいたように,家庭で日本語を使う・使わないというのは,また別の問題でございまして,決して,ご家庭で日本語を使うことを強いるといった趣旨ではないことは,私どもはもとより,全国学力・学習状況調査においても同じかと存じております。これについては日本語教育の在り方,あるいは全国学力・学習状況調査の在り方も含めて文部科学省ともよくよく相談をさせていただきたいと思っております。御指摘については受け止めさせていただきたいと存じますので,どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。田中委員,よろしいでしょうか。
【田中委員】 今おっしゃっていただいたような文脈であるのであれば,2年に一度文科省さんのほうで調査されている日本語指導が必要な児童生徒のデータを引用されるのが良いかと思いました。ありがとうございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。文脈が全部見えるわけでは必ずしもないので,出てきた資料というのが独り歩きする可能性というのも常にあるということを考えながらやっていく必要があるなということを改めて感じた次第です。ありがとうございました。
それでは,宮澤委員,お願いいたします。
【宮澤委員】 よろしくお願いします。全日本中学校長会会長,宮澤でございます。
中学校の校長として,2点お話しさせていただきます。まず,1点目が資料2でございます。通信制高等学校の在り方ということでございますが,そこには検討事項として,教育方法や学習支援体制ということですが,中学校の現場から見て,広域の通信制高校,課題がありまして,東京都では私立の高校と中学校で一応協定的なものがありまして,12月15日から入試の相談をすることができます。それ以降ということで都内の私立高校と話ができることになっております。ですが,通信制高校,先ほど広域というところで,例えば九州に本校がある学校は九州の入試の解禁日に合わせてくるわけです。ですから,都内であっても通信制高校は11月に入試があって合否が決まるというような形になっております。保護者や生徒から見ると一日でも早く進路先を決めたいというところで,最近は通信制高校,入学希望者というのがかなり増えてきております。そういった点では,東京都の私立高校と足並みをそろえるとか,入試についてというところでも制度の仕組み,自治体等も話し合いながら,そろえていただけると有難いなと思います。当然,子供たちにとっては,進路の選択肢が増えるというところでは有難いなと思うところもあるのですが,そういった課題もあるというところで,今後しっかりと制度,仕組みづくりをしていただければと思います。
2点目は,資料3の「新しい時代の学びの環境整備」というところです。少人数,小学校では35人学級ということで進められてきておりますが,教員の定数が変わらずに小学校35人,つまり,学級だけ増やす。教員が増えていないので,より負担が高まっているというような学校もあると聞いております。是非教員の定数を増やすという方向も視野に入れながら,これを進めていきたいと。ここでは小学校が多いのですが,是非中学校にも視点を当てていただいて,中学校の教員を増やして働き方改革につなげていくというような取組もお願いしたいところでございます。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。田中参事官,大変申し訳ありません,時間の関係がございますので,手短にお話しいただけると幸いです。
【田中参事官】 田中でございます。今,委員からの御指摘,ありがとうございます。
従来,高校というのは基本的には都道府県単位で入試の在り方等,公立・私立の間で話し合い,各自治体によって実情は異なりますけれども,あるものと承知しております。
一方で,広域通信制というのは,都道府県の圏域というのを大きく超える例が多く出てきている中で,御指摘のような問題意識があるのだろうと思っております。こういった入試の在り方も含めて,これから調査協力者会議において幅広く御検討いただきたいと考えております。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。検討を進めてまいりますので,よろしくお願いしたいと思います。
では,村尾財務課長,よろしくお願いします。
【村尾財務課長】 教科担任制について,戸ヶ﨑委員,清原委員,黒木委員,宮澤委員から御指摘いただきました。ありがとうございます。
教科担任制については,義務教育9年間を見通した指導体制,小中接続ということで大きな効果が指摘されているということで,まずは,加配をしっかり確保しつつ,特定教科からスタートして,その結果をさらに検証して,基礎定数を含めて在り方を将来的には検討していきたいと考えております。また,柔軟な対応も,専門性担保ということも含めてやっていきたいと考えております。
なお,予算の関係で,小学校の35人学級については,しっかりと基礎定数を増やしながら進めているということも併せて付言をさせていただきたいと思います。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。宮澤委員,よろしいでしょうか。
【宮澤委員】 ありがとうございました。
【荒瀬分科会長】 では,この時間の中の最後になりますが,宮原委員,よろしくお願いいたします。
【宮原委員】 ファイザー株式会社の宮原と申します。
最後で大変恐縮ですが,手短に企業の立場から,これから社会に出てくる子供たちのデジタルリテラシーと,かつ,高等教育に対する機会の均等という観点で,資料2の通信制高校についての御議論と,資料5の教育のDXということを併せて一言コメントをさせていただきます。意見でございます。
高校生の教育の機会ということについてと,先ほどほかの委員からコメントがありましたICT,いわゆるデジタルデバイスの配布ということについての関連について御意見を申し上げたいと思います。中学生まではデジタルデバイスが配布されましたので,今,問題かなと企業側でも思っておりますのは,高校生に対する手当てでございます。もちろん通信制教育も希望される生徒さんのバックグラウンドが大きく変わっていったということは承知していますが,それでもやはり経済的に難しいお子さんが選択肢として考える形態ではないかと思いましたときに,今後,デジタルデバイスがないという状態でこういった選択肢が選べるようになるのかということに大変疑問を感じております。
一方で,大学を選択する場合に,昨今では入試のための情報収集や説明会,あるいは入試の手続そのもののオンライン化というのも進んでいると聞いておりまして,そういったことに対するアクセスもデジタルデバイスのない高校生にとっては非常に大きな障害になっていると聞き及んでおります。そういった中で考えますと,企業の立場から関しましても,これから社会に出てくる生徒さん,優秀な,あるいは特徴のある,スキルのある子供たちが高等教育のための機会が均等ということを考えますと,やはり高校生を置き去りにしてはいけないのではないかと強く感じましたので,是非とも高校生にもデジタルデバイスの活用ということ,あるいは配布ということについても御検討いただければということでコメントさせていただきました。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
それでは,大変申し訳ありません,時間の関係で御発言いただけなかった方もいらっしゃるかと思いますが,もしも時間がありましたら,またお願いするといたしまして,議題2に移りたいと思います。「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」で,まず,江口児童生徒課長から御説明をお願いしたいと思います。
【江口児童生徒課長】 江口でございます。それでは,毎年実施しております,いわゆる問題行動等調査の令和2年度が先般,公表となりました。既にホームページに載っている部分ではございますけれども,本日,概略を御説明申し上げたいと思います。
1ページを御覧ください。まず,いじめの関係でございます。一番上の黒丸,小・中・高等学校,特別支援学校のトータルでございますが,いじめの認知件数については51万7,000件強ということでございまして,前年度と比べますと15.6%の減少ということになってございます。近年,いじめ防止対策推進法の施行等で認知件数の増加は続いていたんですけれども,令和2年度は全校種で大幅な減少ということになってございます。それから,いじめの重大事態につきましては514件ということでございます。こちらにつきましても前年度と比べて28.9%の減少ということになってございます。
こちらの要因につきましては,現場の声等々拾っておりますけれども,新型コロナの影響ということでございまして,まず,物理的な距離が広がった。あるいは授業,あるいは様々な活動での制限があったということで,子供たちが直接対面してやり取りをする機会,あるいはきっかけが減った。あるいは一斉休業等々ということもありまして,年間の授業日数自体がそもそも少ない学校もあったということ,それから先生方のほうでいろいろ偏見,差別が起こらないようにとか,理解を促していただいたりとか,目配り,見取り,見守りを強化していただいたというようなことも影響していたかなと見ております。他方で行動様式の変化等々ということがありますので,引き続き早期発見,積極的な認知ということが重要というふうには考えているところでございます。
また,重大事態につきましては,件数は減ってはおりますけれども,500件強あったということでございますので,こちらにつきましては憂慮すべきと考えてございますので,適切な対応を促してまいりたいと思っております。
続いて,2の暴力行為でございます。こちらにつきましてもいじめ同様,全体の数は減ってございます。小・中・高,合わせて16%の減少ということになってございます。
続いて,3の長期欠席でございます。こちらは例年やっております項目に加えまして,令和2年度は「新型コロナウイルスの感染回避」という項目を追加してございます。「新型コロナウイルスの感染回避」につきましては,一番下にございますけれども,小学校で1万4,000人強,中学校で6,600人強,高等学校で9,300人強ということになってございます。こちらにつきましては,基礎疾患がある児童生徒,あるいは御家族にいらっしゃる方がお持ちだというような場合に臨時休業明けですとか,地域の感染が拡大した場合とか,あるいは受験期などに慎重な判断がなされたのかなと見ているところでございます。
続いて,2ページでございます。長期欠席のうちの不登校の関係,特に小・中学校の関係でございます。こちらにつきましては,小・中で19万6,127人ということでございまして,前年度と比べますと8.2%の増加ということで,統計を取って以来最多ということになってございます。
三つ目のポツになりますけれども,その65.7%の12万8,000人強は学校内外で相談・指導を受けているという状況がございます。また,例年どおりではございますが,約55%は90日以上の欠席となっておりまして,長期の欠席が多くを占めているということでございます。不登校の増加の要因につきましては,教育機会確保法の趣旨が浸透したという側面がまずございますが,それと加えて,特に令和2年度につきましては,コロナの影響等で生活環境の変化があったということで生活のリズムが乱れやすいとか,あるいは学校生活で様々な制約があったということで,交友関係の面などを含めて登校する意欲が湧きにくい状況にあったのではないかというようなところでございます。なお,高等学校の不登校につきましては減少傾向が続いているところでございます。
それから4ポツ,中途退学につきましては,高等学校でございますけれども,3万4,900人強ということでございまして,こちらも減少しているところでございます。
5ポツ,自殺でございます。こちらにつきましては,小・中・高トータルですけれども,415人ということでございまして,前年度と比べまして98人の大幅増加ということになっておりまして,調査開始以来最多ということでございます。また,憂慮すべきと考えておりますが,背景には,新型コロナの影響で家庭環境が変化した,あるいは学校環境が変化したということが背景にあるのかなと見ているところでございます。
下に文科省の対策ということで書いてございますが,周囲の大人がSOSを受け止めることが大事だとか,組織的対応が重要,あるいは外部の関係機関等の連携というのが重要だということでございまして,教育相談体制の充実,あるいは地域社会との協働した取組等々を推進する必要があると見ております。
また,いじめについては,いじめ防止対策推進法に基づきます適切な対応,また,自殺に関しましては,SOSの出し方,あるいは周りの受け止めも含めての自殺予防教育ということも重要と考えているところでございますし,また,1人1台端末の活用ということも重要だと考えておりまして,そちらの活用促進についても考ていきたいと思っております。
以下,残った時間で補足的なページのみ御紹介をさせていただきたいと思います。
7ページを御覧いただきたいと思います。いじめの関係でございますけれども,全体として減っているという御説明を申し上げました。いじめの態様につきましては,全体として,一番上にあるような冷やかし,からかい,悪口,脅し文句,嫌なことというのが一番多くなっているという,傾向は変わらないんですけれども,枠の中に丸が三つございまして,一番下,「パソコンや携帯電話等で,ひぼう・中傷や嫌なことをされる」という数字につきましては,全体が減少している中でも増加を続けておりまして,令和2年度は1万8,870件ということで,こちらも増加しているというところでございます。
続きまして,ちょっと飛びまして18ページでございます。小・中学校の不登校の関係のページになってございます。先ほど不登校になって学校内外で指導を受けている数は12万強,65%程度ということで申し上げたところです。こちらグラフ化してございます,真ん中のグラフ,学校の外,あるいは学校の中で相談・指導等を受けたというような人数は毎年増加しているわけでございますが,他方で不登校児童生徒の数の増加というのは非常に多いというところもございまして,相談を受けていないという割合が年々増加してきているというのが最近の実態でございます。
それから,最後のページになりますけれども,文科省の主な取組ということで御紹介をさせていただいているところでございまして,相談体制の関係,あるいは不登校児童生徒の支援の関係等々ということで進めているところでございます。
簡単でございますが,御説明は以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
いろいろ思うところのある資料であります。この件につきまして,御意見いろいろとおありかと思います。あるいは御質問もおありかと思います。初めにお断りをしておかなければならないのは,本日の終了予定の時間まで約50分ほどあるんですが,その間,皆様の御質問,御意見を頂戴いたしますが,時間の中で十分におっしゃっていただけない場合等も出てくるかもしれません。その場合は,事務局のほうにメール等で御連絡をいただければと思います。あらかじめその点,お含みおきいただきたいと思います。
それでは,ただいまの御説明につきまして,御意見,御質問を頂戴したいと思います。御発言の仕方につきましては,先ほどと同様でございます。よろしくお願いいたします。
では,井坂委員,お願いいたします。
【井坂委員】 お願いします。最初に失礼します。
私は,神奈川県の県立高校の校長をやっております。今の話題に対しまして,校長を代表する形でお話しさせていただきたいと思います。
私自身は,実は40年間高校におりまして,と申しますのも,再任用ということで,いまだに校長をやっております。その間,10年間ほど教育委員会に勤めていまして,また,県の総合教育センターというところで教員の研修等もやっておりますので,その感覚で,お話をさせてもらいたいと思います。
前半の話題にありました,高等学校における日本語教育の制度,あるいは通信制につきましても大変関心の深いところですが,喫緊の課題として認識している後半の部分について申し上げます。
今いただきましたように,児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導の諸課題というのは,正にこの40年間,私の経験の中でも大きく変わっております。幾つかありますが,やはり何といいましても,最後にありました自殺の問題が今,喫緊の課題として学校の現場では感じております。
今いただいた資料の中にも,文部科学省の対策として,枠で囲った中に書いてあるんですけれども,真ん中以降ですか,「このため,共通する施策として」ということでスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー,関係機関との連携ということで,教育相談体制というものが,確かに神奈川県でも県教委のお力があって,いろいろな形でスクールカウンセラーなども各学校に,毎日ではないですけれども,配置されまして,大変助かっております。ここは感謝申し上げるところです。
一方,我々教員の立場で,教員として何ができるのかと。本当に日夜,教員とも話し合っていますし,校長同士でも県教委とも何ができるのかということで葛藤しているところでございます。その中でも,事案が発生し早期対応,また,重大な事案に対しましてどうするかということももちろんですが,私としては,事前に,今日のテーマに書いてあったように未然防止,早期発見ということについてお話しさせてもらいたいと思います。
先ほど違うテーマで戸ヶ﨑委員のほうから,義務教育のほうでも専門性もあるが,児童に寄り添う姿勢が教員には必要だというお話がありましたけれども,実は高等学校でも全く同じでございまして,本校でも,いわゆる進学を目指す生徒が多い中で教科の指導力というのは大いに問われます。一方では,言わずもがなですけれども,高校生になると,残念ですが,自殺の事案が小中に比べ増えてきます。当然思春期になって自己肯定感,自我の揺らぎとでも言うのでしょうか,今グローバル社会,多様化社会と言われる一方で,高校生は学校であったり,社会であったり,家庭などの環境の中で,一方で社会が多様化され,多様性が求められる中において,ややもすると,生徒は物事を一面的に捉えてしまうことがあり,自我の揺らぎの中で,自己肯定感を持てずにいる生徒は少なくありません。この時期をうまく乗り越えてくれれば,卒業した生徒の中にも社会で活躍する人はいっぱいいるわけです。学校としては,この時期を彼らとともにどう一緒に乗り越えていくことができるかということが我々教員のテーマだと思っています。
その中で,今,「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会さんのほうではパブコメをしているそうで,私も読ませてもらいましたけれども,現場の校長としてなかなか発言する機会がありませんので,お話しさせてもらいますと,大きな諮問のテーマの日本型学校教育を担う教師の養成・採用・研修ということで,正に求められる教師像というものがあると思う中にあって,当然,大学の先生方も教育課程について,私が教員免許を取った頃とは随分変わりまして,いろいろな形で生徒指導や生徒理解についての対応とか授業をやっていると思いますが,私は,今後の教員の正に求められる教師像としては,ある意味,教科や専門性を超えて,真っ先にくるのは生徒理解であって,生徒指導という言葉で我々も言っていますけれども,指導なのか,支援なのかというのがありますが,やはり求められる教師像というのは子供たちを支援する姿勢,基本的には子供たちの成長を支援するのだという気持ちですけれども,教育の原点は,生徒の成長,伸長,変容のために支援することであって,その理念や方法論,それらを答申される際には,真っ先に記載すべきことであると思います。生徒を支援する,あらためて,今後の教師としての基盤だと思います。
あともう一つは,先ほど来,コロナのお話も出ていますけれども,これも巷間言われておりますように,コロナによって,実は学校行事というものがいかに大事かということが,私も先ほど申し上げたように40年も高校教員をやっていますけれども,身をもって去年感じました。簡単に言えば,例えば体育祭であったり,文化祭であったり,修学旅行であったり,合唱祭,あるいは入学式,卒業式,もろもろありますけれども,それらの行事の持つ目的,行事をとおしての子供たちの学びの重要性です。逆に言うと,日本型教育の中において,小学校のときから運動会とか学芸会とか,よくできた制度であると私は思いました。教科の勉強,本校では生徒たちはいわゆる受験勉強を一生懸命やりますが,3年生であっても,おのおの学校行事を通して,正に所属感であったり,自己肯定感とか協調性とか社会性とか,本当に学びます。行事を行った後に,逆に勉強する,いわゆる教科の学習する気持ちが上がってくるんですね。その意味では,新学習指導要領が高等学校において来年度から本校でも実施されますけれども,既にもうできていますけれども,是非初等中等教育分科会ということで,初中局さんには,改めて学校行事というか,特別活動というか,それがいかに子供たちの発達に大事かということ,これが私は,こういう問題行動のことを考えても,自己肯定感の涵養,さらには,自殺防止へも繋がる大切なことだと考えている次第です。
最後に,合田審議官のほうからも,これからの学びということで外部人材をどんどん入れていくというお話があって,もっともだと思っていますけれども,ソーシャルワーカーであったり,カウンセラーや,いろいろな形でお力を借りてやっていますけれども,基本的には教員が外部の方をどうコーディネートしていくかと,一緒にやっていくことの出来る受容性や柔軟性という力が益々重要だと思います。教師のあり方として,これができていないところがあります。ですので,繰り返しますけれども,改めて生徒理解,生徒支援のことであったり,特別活動を含めてそれがいかに大事かということであったり,また,コーディネートする力というものがこれからの教師においては現場の感覚でいうと必要だなと思っている次第でございます。
以上,感想でございますけれども,意見を述べさせてもらいました。ありがとうございました。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会の中間まとめ案が出ているわけでありますけれども,この件につきましては,ここで議論をしているわけではございませんが,私も関与しておりますので,今のお話は承らせていただきましたので,先生が御懸念のことにつきましては,いろいろと御意見も出ておりまして,そういったことも一定程度は現在でも盛り込んでいると承知しておりますが,改めてまた御意見いただきましたことをきちんと受け止めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【井坂委員】 ありがとうございました。
【荒瀬分科会長】 それでは,清原委員,お願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。
今回の調査結果を伺いまして,義本次官も御挨拶で言われましたように,コロナ禍の影響もあって子供たちの活動の制約や,あるいは制限が要因と思われる問題の発出が確認されたと思います。と同時に,いじめや暴力行為は減少ということもあり,それらを防ぐための教職員の皆様の御努力にも感謝したいと思います。
1点に絞って申し上げます。それはどういうことかと申しますと,いじめ,不登校,自殺については複合化している現状があると思いますので,教職員の皆様だけが抱え込まない自殺予防の取組などが不可欠と思います。それは,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活躍も,教職員だけが相談を受けるのではなくて,ほかに人がいるということだけにも子供たちも救われるという意味も含めて専門性を生かしていただくということがかけがえがないことと思うんですが,その先の受け止め方の場所として,やはり市区町村長のいわゆる市長部局と教育委員会の連携,さらには学校現場との連携ということも,さらに進めば望ましいのではないかと思います。
例えば,これまで教員の自殺ということが課題になったときに,市長部局がストレスチェックの協力をするとか,あるいはカウンセリングの協力をするとか,そうした教員に対する支援の体制のときに,いわゆる首長部局と教育委員会の連携というのも課題になりました。同様に児童生徒の命に関わる課題については,とりわけ首長部局の児童福祉,社会福祉,あるいは生活困窮者支援ですとか,就労支援ですとか,独り親の就労支援,あるいは生活支援なども重要な取組に関わってくると思います。したがいまして,「いじめ」のみならず,児童生徒の問題行動や,あるいは特に増加している自殺への対応,早期予防,そして適切な対応に向けては,総合教育会議の活用を含めて,是非教育委員会,学校現場と,そして,市区町村長の適切な支援体制との連携がさらに進むことを望んでいます。
そして,例えば医師会や歯科医師会,薬剤師会等々も学校医や学校歯科医,学校薬剤師として,あるいは要保護児童対策協議会のメンバーとして,学校と関係しながら虐待防止などにも御活躍をいただいてきた経過もあります。そうした専門家の地域の力との連携もさらに進む,そんな仕組みづくりを地域の実情に応じて進めていただければと,貴い命が自殺ということで失われないように切に願って,そうした地域の連携を強く提案したいと思います。よろしくお願いします。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
この後,御発言いただく皆さんの順番を申し上げます。次に,小林委員にお願いしたいと思っております。その後,渡辺弘司委員,貞廣委員,戸ヶ﨑委員,細田委員,八並委員,岩本委員,大字委員,今村委員,竹中委員,この順でお願いいたしたいと思います。大変恐縮ですが,あと30分余りとなっております。御発言は,非常に申し訳ありませんが,まとめていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
では,小林委員,お願いいたします。
【小林委員】 ありがとうございます。お願いします。
中学校の校長をしておりますので,中学校の現場から現状だけちょっとお伝えしたいと思っています。
コロナによる,いろいろな学校に影響がありまして,不登校についてなんですけれども,昨年度の3か月の全国的な学校休校ということは非常に影響が大きくて,休校によって休み慣れしてしまったとか,コロナへの恐怖があるとか,そういうことももちろんあると思うんですが,それ以上に私が中学校で感じていることは,入学時の丁寧なフォローができなかったこと,いわゆる中1ギャップを埋められないまま学校がスタートしてしまったということがすごく大きくて,今年度はそれを反省して,とにかく4月の中1ギャップをなくすということでフォローするという,ガイダンスをちゃんとしたり,個人的な懇談を丁寧にやったりということで,福井県でいうと,全体的に見てみますと,今年の中1生の不登校の数よりも,昨年度の中1生,いわゆる今の中学校2年生ですが,2年生の不登校の数がいまだに多いです。やはりそういうことが原因しているのではないかなと思っていて,コロナの状況は大分落ち着いてきましたけれども,失った3か月というものを学校の中で責任を持ってこれから先も考えていかないと,中2生の失われていたスタートした2か月間というのは,何らかの形で私たちが考え続けていかないといけないのではないかと思っています。
それから,いじめの認知についての話なんですけれども,少し減ってきたというようなお話だったのですが,実は原因として,SNSによることが非常に増えてきているのではないかなと。SNSのいじめについては非常に見つけにくい,伝わりにくいものなので,子供たち自身も友達にそれを話していたりしない場合も非常に多くて,教員側にいじめというのはなかなか見つかりにくいものなんですけれども,SNSによるものが増えてから,より一層分かりにくくなった。だから,この数の中に現れていない,隠されたSNSによるいじめみたいなものもあるのではないかと思っていて,それをどのように学校としてつかんでいくかということは大きな課題だなと思っています。
以上,現状だけはお伝えしておきます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。大変重要な情報をいただいたかと思います。
では,渡辺弘司委員,お願いいたします。
【渡辺(弘)委員】 日本医師会の渡辺でございます。
学校として,新型コロナウイルスの感染症の影響を危惧していたところ,この調査を見まして,やはり不登校と自殺が増えてきているということは大変憂慮すべきことだと思っております。
それから今,小林委員がおっしゃいましたように,いじめが減っているというのは,SNSのいじめというか,介入があることを考えた場合に,現在の調査方法が正確にいじめという形のものを把握できているかどうか考えるべきではないかと私も考えます。
資料の最後ですけれども,文部科学省が結果を踏まえた取組という形で事業を紹介されておられますけれども,これがこれまでの取組とどう改善されているかというのが分かりにくいです。1点だけ,「SNS等を活用した相談事業」というのが令和3年度からと書いてありますが,例えばソーシャルワーカーとかスクールカウンセラーを増やすことが実際に功を奏するのか。これまでの結果が十分ではないことを考えますと,新たな対策が必要ではないかと考えます。例えばスクールカウンセラーの方々の指導内容は,医療者と情報を共有できません。ですから,学校医とか主治医として介入する場合はスクールカウンセラーの方が何を話したかというのが分からないまま対応しなければいけないという点は改善すべきではないかと考えます。
また,このたびの文科省の取組を見ても,生徒をどう指導するかという視点が重視されているように考えます。それに対しまして,児童生徒に対して,例えば障害は体だけではなく精神,心にも生じるし,それを防ぐにはどうするか。どういう状況になれば,誰に相談したらいいかというような健康教育というか,教育というか分かりませんが,その視点からのアプローチ,つまり,予防的な視点が必要ではないかと考えます。
それから,いじめが暴力行為からネットというものに変わった現状に関しましては,ネット環境における対応として,情報モラルだけでなくて自己管理の教育,リテラシーとよく言いますけれども,そういったことが一層重要になってきているように思います。
先ほど清原委員もちょっとおっしゃいましたけれども,学校医の活用を考えるべきではないかと思います。特に小学校は小児科医が多いですけれども,小児科医は子供の心の研修を受けている医師が非常に多いです。また,内科校医だけでなく,以前から指摘されているように精神科医師の配属ということも学校として考えるべきではないかと思います。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。大変具体的なお話をいただきました。
江口課長には後ほどまとめた段階でお願いしたいと思います。
それでは,貞廣委員,お願いいたします。
【貞廣委員】 ありがとうございます。千葉大学の貞廣と申します。
冒頭,座長がおっしゃったように,こちらの調査は,考えるところ,思うところが多岐にわたっており,整理してお伝えできない部分もありますけれども,大きく2点申し上げたいと思います。
毎年この調査の結果に触れますと,本当に心が塞がれるような思いになるわけですけれども,今回は特に予想をしていた範囲も含めて,大変深刻な結果であると受け止めております。いじめの件数の減少が,実は子供同士の関わりが減少した結果であったり,または今の御指摘にあったようにネットベースで地下化したような結果であったりということ,さらに今回増加している不登校児童生徒ですけれども,学校の休校期間には,実はこれらの子供たちがとてもリラックスしてストレスフリーで過ごしていたということも聞き及んでおります。
このように考えますと,我々本会議も含めまして,現行の学校システムを前提にしたり,基本にしたりして,ではどのように対応できるのかということを考えているわけですが,そのこと自体を問い直す必要がある様にも思います。井坂委員がおっしゃったように,学校行事等を含めて,日本型の教育システムの良い部分もあります。ただ,この調査の結果を見ますと,または年々深刻度が増しているということに触れますと,対面,学年制をはじめ,ある一定期間,同年齢の子供たちが同じ学びを共有するという学校モデル自体がひずみを生んでいるということを共有するべきでもあると考えます。そういう段階にも来ているのではないでしょうか。
今日の御報告で,CSTIのほうでレイヤー構造の新しい学校モデルを検討されているということですけれども,例外や前提なく,経路依存を断ち切って新しい学校制度モデルを検討して頂きたいと考えます。
2点目でございます。自殺の問題です。これは本当にゼロにしていきたい。今回の調査の対象の期間というのは休校期間がありまして,例年の9月1日が複数回やってくるということで,自殺のリスクが高まるということは,昨年のこの会議でも今村委員をはじめ複数の委員が指摘されていたと記憶しております。学校や教員の方々,教育委員会の方々が十分な努力をしてくださっていたということは理解していますけれども,それでもほかにできる事前ケアはなかったのか,教訓にしていきたいと思います。
また,今後の対策として,今,画面共有してくださっているスライドナンバーの2ページ目のところにSOSの出し方に関する教育を推進するとありますけれども,プログラム的にこういうことを進めるのも大事なんですが,こうした援助を求める力というのは,日常的に助けられた成功体験に依存すると思うんです。そうすると,プログラム的な展開ももちろん必要なんですけれども,やはりきめ細やかに子供が先生や仲間や,その他のスタッフに助けてもらった,私は人に助けを求めたら,ちゃんと私を援助してくれる人がいるんだということを,そういう経験を小さいときから積むということが肝なんだと思います。その成功体験を積ませ,受援力を育てるということを強く意識していきたいと考えたところです。
以上でございます。ありがとうございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
非常に考えなければならない御指摘であろうかと思います。特に今の学校システムがもう十分に現状に対応できていない面があるのではないかという,この辺りについては,後手に回るといって焦っては駄目だと思うんですけれども,慎重に考えながら,初中分科会の本当に重要な課題といいますか,今後考えていかなければならない内容ではないかと思います。もちろん教育課程部会とも連携を取りながら,あるいは教員養成部会とも連携を取りながら,具体的にどういった学校の在り方が今の子供たちの状況に応じて必要なのか,あるいはこれからの社会において必要なのかということを,そういう視野を持ちながら考えていかなければならないなということをと強く思いました。ありがとうございました。
では,戸ヶ﨑委員,お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】
先程と同様,提出資料の参考資料5の4ページに基づき短くお話いたします。本市においても同様ですが,特に小学校の不登校児童の増加が大きな課題であり,中学校での更なる増加が懸念され,小学校段階で予防していくことが重要となります。
その対策として,中程,組織的・計画的支援に加え,才能や能力に応じ可能性を最大限伸ばせるようICTを活用した学習支援や企業等も含め様々な関係機関等の専門的知見を活用した社会的自立への支援を行う必要もあります。それらを総合的に総括する部局を超えた「不登校支援センター」の自治体での設立など,学校等の日々の取組を支援するための教育条件等の整備が急務と感じています。
また,中程から下,不登校,虐待,いじめ等の兆候や小さなサインを早い段階で見つけることが何よりも大切なわけですが,教師や保護者など経験や勘による観察だけでは限界があります。今後は「生徒指導を科学する」手法によって,エビデンスを基に様々な兆候等を見取っていくことが必要ではないかと思います。
最後にネットによる誹謗中傷,いやなことをされる件数が増えていることを憂慮しております。ルールを押しつけ活用を制限する「情報モラル教育」から,共にルールをつくり大いに活用する「デジタル・シティズンシップ教育」の推進が急務であると思います。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,細田委員,お願いいたします。
【細田委員】 細田でございます。よろしくお願いいたします。
手短に2点申し上げます。まず,1点目ですが,不登校児童生徒で学校内外の機関等で相談指導を受けている。つまり,どこかにつながっている子供たち,何とかつながっている子供たちが65.7%。つまり,全くつながっていない子供たち,3割とか4割くらいの子供たちへの手だてが大変重要になってくると考えております。
それで,今GIGAスクール構想で1人1台のデジタルデバイスがありますので,ICTを活用した子供たちへの支援,子供たちを何とかつながっていきたい。そして,できるならば学習サポートも進めていきたいと思って,本市でも様々な取組をしているわけですけれども,是非グッドプラクティスを共有していきたいと思います。ですから,何かそういう場があると大変うれしいなと思っていることが1点。
二つ目ですけれども,いじめの問題でございます。最近,いじめに対しまして把握できたもの,当事者,被害の子供や加害の子供,そのものへの不満とか,当事者同士の対応よりも,これが学校や教育委員会の対応への不満に移行することが大変多うございます。このことについて非常に憂慮しておりまして,まず,学校で発生したいじめ,とりわけ発達段階の幼いといいますか,小学校段階などによりますと,ある意味,他者への心身の痛みや,そのことを理解するために教育的なアプローチが必要である場合があります。
当然,まずは命に関わるようなことがない,そこを重要にしていくわけですけれども,その次の段階で,教育的なアプローチが大変必要であり,そこにスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーのお力も借りて対応しているんですけれども,早い段階からそれぞれが,被害,加害,それぞれの保護者が弁護士などをつけて弁護士が介入することも大変多くなっております。
そこで,是非スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと併せてスクールロイヤーの存在が大変重要になってくる場合が近頃頻発しております。学校教育の法化現象が進む中で,是非スクールロイヤーの方々について人員を増やすとか,アプローチしやすくしていくことも肝要かと最近強く考えているところです。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,八並委員,お願いいたします。
【八並委員】 私は,現在,日本生徒指導学会の会長をしております,東京理科大学の八並です。よろしくお願いします。
幾つか提案とお願いがあります。文部科学省のほうでも,各教育委員会のほうでもいいです。一つは特にいじめの問題で,各学校が学校いじめ防止基本方針を策定して公開しています。これはいじめ防止対策推進法でもマストになっているわけです。その学校いじめ防止基本方針の周知ということです。
学校いじめ防止基本方針に関しては,平成29年に文部科学省が出した「いじめの防止等のための基本的な方針」というのがあります。その25ページの中で,自校で作成した学校いじめ防止基本方針に関しては,必ず入学時または各年度の開始時に児童生徒,保護者,関係機関等に説明しなさいとなっています。ところが,恐らく多くの学校ではそれをやられていないわけです。いじめの未然防止において,そもそもいじめ防止対策推進法を学校の授業等で子供たちに周知していない,あるいは保護者に周知していない。さらに,一番肝腎なる学校いじめ防止基本方針の周知が徹底されていないのではないかと思います。この点に関しては,文部科学省か教育委員会で,調査していただければなと思っています。つまり,基本中の基本が教員にも,あるいは子供たちにも保護者にも理解されていない。そのところは,少し検討したほうがいいのではないかと。
それからもう一つ,既に毎年調査でいじめの解消率が出てきます。大体77%ぐらいが解消しています。解消の判断基準の要件が二つあって,一つはいじめ行為自体が大体目安で3か月以上,要するに最低3か月はそういったいじめ行為がない。もう一つは,いじめ被害児童生徒本人や保護者に面談等で,「大丈夫か」ということを確認しなさいとなっています。
ふと思うのは,この77%の解消に関して,各学校で,その二つの要件を本当に満たしているということを文書化しているかということです。文書としてきちんと,聞き取り日はいつで,例えば被害児童生徒本人が,あるいは保護者が自署するなりして,確かに二つの要件を満たしたという書を作成して保管しているのか。その点も,調査したほうがいいのではないかと思っています。先ほどの委員もおっしゃったように,今,特に重大事態になった場合は,こういった記録文書が非常に重要になってきます。いつ,誰が,どういった方法で確認したか。その確認に関する証拠は,残っているかということです。そういう意味で,学校いじめ防止基本方針の周知といじめの解消に関して,文部科学省,あるいは教育委員会で調査されてはどうかと思います。
また,暴力行為が減った減ったと言われますけれども,実は小学校の暴力行為に関して言うと,児童生徒1,000人当たりで見ると6.5件,中学校は6.6件です。小・中を1,000人当たりで見ると,ほぼ同数なわけです。その点から言うと,やはり小学校段階での暴力行為の予防が必要だろうと思います。
最後に,自死の問題です。高校生が73%ぐらい占めています。その背後に,女子高校生の場合は,鬱などの精神疾患も多いというデータもあります。メンタルヘルスという点から,鬱防止教育も小学校段階から始めておかないと,ちょっと遅過ぎるのではないかと思います。
長くなりましたが,井坂先生が言われたように,生徒指導やキャリア教育の要というのは,私は特別活動と思っています。つまり,生徒指導とかキャリア教育を具現化する場として,特別活動は重要だろうと思っています。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
岩本委員,お願いいたします。
【岩本委員】 岩本です。よろしくお願いします。
簡潔に。私も自殺,自死の問題についてです。1年半前のコロナのときにも,正にこのリスクというのがここの場でも言われた話が,このような結果に今回なってしまっているという,非常に悲しく思っているところです。ここに関して何ができるのかというのを考えるに当たって,なぜこれが増えているのかとか,その要因の分析とか,データとか含めて,また,その対応も何が本当に効果が,未然防止も含めてあるのかということ,国内外の事例とか,そういったものも含めながら,改めて本質的かつ総合的な検討も必要なのではないかというようなことを思った次第です。
その上で,一つ観点としては,子供たちの心身や社会的な健康性というか,いわゆるウェルビーイングみたいなところ,こういったところを,正に子供たち自身が自分で自分の健康だとか,ウェルビーイングを守っていけるというような教育も必要だと思いますし,もっと言うと,個人だけの問題ではなくて,子供同士の関係性や,子供や教員を含めて,環境や関係性の中で助け合うだとか,お互いに支援し合うような,そういった風土や関係性をどう学校の中でもつくっていけるのかというようなところが非常に重要になってくるのではないかと思います。
最後,そうした中でも,私,井坂先生のお言葉でもありましたけれども,生徒指導なのか,支援なのかというところは,正にそうだなと思って聞いていました。生徒指導の本来的な意味とか目的はすごく高尚であると思うんですけど,これからは生徒指導部とか,生徒指導というよりも生徒支援部じゃないですけれども,支援というような感覚を学校ももって,生徒指導というと何かちょっと,急にその言葉のイメージから,本質は違うけれども,イメージからこうなってしまうようなところを,一人一人の子供たちをちゃんと支援していくというところで,名称とかも含めて,在り方を根底から変えていくというようなところも今後必要ではないのかなと思っているところです。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
大字委員,お願いいたします。
【大字委員】 全国連合小学校長会の大字でございます。
本調査結果を見ると,るる様々思うところがございます。今回は不登校のところに絞って,現場を預かる者として思うところを少しお話しさせていただきたいと思います。まず,小学校の出現率が1.0と非常に大きな数字になっています。大変重く受け止めています。小学生にとって学校は楽しいところ,わくわくしながら通うところでありたいなと,この思いは常に持っておりますので,改正に向けて,全国の校長とまた様々知恵を絞っていきたいと思っています。
その中で,低学年からの不登校の増加というものが大きな課題であると認識しています。改めて幼児教育と小学校教育の接続・連携の重要性を思うところでありますが,小学校長に調査をかけると,保幼小の連携・接続の重要性についての優先順位が大変低いというのが現状です。ほかの課題が上位に来て,この部分がなかなか進んでいないという現状があります。改めて保幼小の連携・接続について,しっかりと進めていかなければならないと考えています。
もう1点は,本調査とは違うんですけれども,令和3年度に2年ぶりに全国学力・学習状況調査が実施されて,児童への質問紙調査の中で,「学校に行くのが楽しいと思うか」という項目に当てはまると回答した児童が以前の調査より6ポイントも減少しています。また,「将来の夢や目標を持っているか」についても同様に5.7ポイント減少している。私たちはコロナ対策で児童の生命・安全を最優先に全力で教職員は当たってきたのは間違いないと思うんですけれども,このような調査を見ながら,改めて振り返ったときに,教育活動そのものが子供の視点に立ったものになっていたのか。また,真に子供の心に寄り添ったものになっていたのかということを改めて考えて,感染対策と今後の教育活動の両立について見直さなければいけない,そのように考えているところです。
私からは以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
あと,今村委員と神野委員に御発言をいただきます。今日は,御発言はここまでとさせていただきたいと思います。最後に,今までいろいろと御意見,あるいは御質問もあったかと思いますが,江口児童生徒課長から御発言いただきたいと考えております。
では,今村委員,どうぞ。
【今村委員】 ありがとうございます。
私からは,江口さんに質問させていただきたいと思っています。今回,調査の結果を拝見しまして,コロナ起因での不登校とコロナ起因での長期欠席者を,コロナではない長期欠席者と分けて明記していただいたので,なるほどコロナで不登校が増えたということではないんだなととても驚きました。不登校が1万5,000人ほど純増しているということは,もちろん関連した,つながっている課題だとは思うんですけれども,完全に違う母集団として明記されているので,これは新型コロナウイルス回避の自主休校者と把握できている人たちを紫色にしたということでよろしいでしょうかということが1点。
あと私たちも不登校の子供たちの支援をしていて,回避の大きな理由が疾患を患っているという理由の子がとても多いんですけれども,病気という緑色の欄は別であるので,疾患を患っていないけど回避している子がこれだけいるということなのかということ,また,経済的理由が30人,これは例年いるという形なんですが,これは一体どういうことなのか。この内訳について,もう少し詳細を教えていただけたら理解がしやすいなと思いました。これは質問です。
そして,これは意見なんですけれども,先ほどから先生方がおっしゃっているとおり,この調査の名前が,「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題」というふうに明記されていますけれども,これは不登校・いじめ等児童生徒の支援が必要な行動調査とか,支援が必要な子たちなんだと,何らかの支援の手だてがなかったから,結果としていじめや不登校になっているんだという,問題行動があるから取り締まらなければいけないというメッセージには聞こえない言い方に次回から変える必要があるなと思いました。
皆さんおっしゃっているとおり,17ページを見ると明確なんですけれども,不登校の要因はいじめと友人関係を除く学校のところ,全て学校で何らか変化しなければいけないところが12%と,いじめや友人関係,合わせて10.8%よりも多いというのは,今の学校に対する明確なフィードバックだと受け止めていいと思うんです。学業の不振というのは子供自身の問題じゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれないんですけど,例えば,今私たちが関わっている子で,掛け算はできるんだけど,あの九九の読み方を立って言わされるのができなくて,おしっこ漏らしてしまって,学校にあれから行けなくなったんだとか,何か一律のやり方というのは,やっぱり変えていかなければいけないところがあるというメッセージだと受け止めていくべきだと思います。ということで,ごめんなさい,さきの質問のほうは後ほど江口さんにお答えいただけたらと思います。
私からは以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では最後に,神野委員,お願いいたします。
【神野委員】 手短にお話しさせていただきます。
今,実は私は宮崎市のほうに来ていまして,本日,宮崎市教育CIOという立場で,宮崎市のPTA全員の方々に集まっていただいたところで講演させていただきます。
その中でも実はお話に上がっていたのが,町田の件も含めて,デジタルというものと子供たちというものを今後どのように捉えていいのか,どれだけタブレットというものを子供たちに使わせていいですかというようなことが,実は講演の中心テーマで話してくださいということも言われていて,それくらい今回のGIGAスクール構想も含めて変化していった,また,コロナもあって変化していったときの保護者の方々の不安ということも結構感じていることが日々あったりもします。
そういう中で,戸ヶ﨑先生もおっしゃられていましたが,デジタル・シティズンシップ教育みたいなところは,ある意味,子供たちを取り巻く大人たちが結構同じような声かけで,ちゃんと子供たちに対してデジタルとの付き合い方ということを教えられるようになっていく必要があるのかなと思っていまして,そういった意味の教育委員会,学校とPTAというのが協働しながら,どのようにデジタル・シティズンシップ教育を考えていくのかということも今後は議論していくべきなのではないかなと思っています。すいません,手短になります。
以上になります。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。御講演,しっかりとよろしくお願いいたします。
それでは,御協力いただきまして,ありがとうございました。御発言がいただけていない委員の皆様につきましては,先ほど申しましたようにメール等で事務局のほうにお願いしたいと思います。
では,今出ましたことにつきまして,江口児童生徒課長,よろしくお願いいたします。
【江口児童生徒課長】 大変貴重な御意見,多数いただきましてありがとうございます。
それぞれごもっともというようなお話が多くございまして,しっかりと受け止めさせていただきたいと思ったところでございます。まず,全体といたしましては,いろいろ御指摘いただきましたけれども,やはり一番大事なのは未然防止,早期発見の力を上げていくこと,さらにそれに適切に対応すること。その上では組織的な対応,あるいは専門家,あるいは外部の方も含めての連携をしていくということ,そういうことが非常に大事と思っております。
たくさんいただいておりますけれども,まず,井坂先生からの御意見をいただいておりますけれども,正に自己肯定感,体験的な部分,この重要性ということはございます。また,今,ちょうど生徒指導の在り方の基本書であります生徒指導提要の改訂作業も進めてございます。こちらの中でもこの辺りの御議論をいただいていると認識してございます。
また,清原先生からも,正に首長部局も含めての連携というお話をいただいたところでございます。既にいろいろ総合教育会議という話もございますし,要保護児童対策地域協議会という仕組みもございます。あとはこれらをいかに現場といいますか,市町村まで,あるいは学校まできちんとワークさせていくかというのが大きな課題と認識しているところでございます。
それから,小林先生からは現状を御紹介いただきました。また,ネットでのいじめで見えていない部分もあるのではないかというところはございます。ネット時代ということでございます。ほっといても子供はネットを見てしまっているというところもございますので,その辺を謙虚に受け止めて,しっかり関係機関とも連携しながら,きちんと対応していく必要があるかなと思っております。
それから,渡辺先生からも御指摘がございました。新たな対策ということでございますが,大きな柱は,正直大きくは変わらないところですけれども,それぞれの充実を図っているというところがございます。また,学校医の先生をもっと活用すべきではないかということは,正に御意見というふうに思っております。いずれにいたしましても,非常に対応すべき事案も多くなっておりますし,専門性も非常に重要ということになってございますので,その辺も今後考えていきたいと思っております。
また,貞廣先生からは自殺の関係ということでございまして,日常的な体験が重要ということは,正にごもっともでございます。先ほど御指摘いただきました自殺予防教育,こちらの中でも,実は前提条件といいますか,同時に日常的な実感,こういうものも大事ということも併せて進めているところでございます。
それから,戸ヶ﨑先生からもいじめ関係,不登校関係ということで,デジタルの関係も含めての御意見をいただきました。この辺り正に外部人材も活用しながらということも非常に大事かと思っておりますので,引き続き対応してまいりたいと思います。
それから,細田先生からはスクールロイヤーの活用というお話もございました。こちらについても,現在も現場で使っていただけるようにということで進めてまいりたいと思っております。
八並先生からも幾つか御提言をいただきました。学校の現場できちんと法,あるいはガイドライン,基本的な方針をきちんとどこまでやっているのかというお話かと思います。この辺りにつきましては,私ども毎年毎年,教育委員会,あるいは学校向けに研修をやっておりまして,その場でも私自身も申し上げているところでございますけれども,その辺の状況の把握につきまして,今後検討していきたいと思っているところでございます。
それから,岩本先生からは自死の関係ということでございまして,原因,背景分析等というお話がございました。こちらにつきましても必要なことかと思っております。また,厚生労働省,あるいは関係する団体等とも連携を深めながら,どういう方法があり得るかということにつきまして検討を深めてまいりたいと思っております。
また,科学的な見極めという部分につきましては,調査研究という形ですけれども,ストレスチェックなり,スクリーニングということも調査研究では進めているところでございます。こういうものが広く使えるものになるよう,あるいは広がりますようにいろいろと施策を進めてまいりたいと思っております。
それから,不登校の関係でございます。不登校の関係につきましては,別途こちらもまた検討会を有識者の方に御協力いただきながらやっているところでございます。こちらにつきましては,最後のページにもありますけれども,学校での取組,それから教育委員会での取組,あるいは民間での取組等々を総合して進める必要があるということでございます。こちらにつきましても着実に進めてまいりたいと思いますし,また,具体的なありようにつきましては,検討会で検討を進めてまいりたいと思っております。
それから,今村先生からの御質問でございます。長期欠席のカウント方法,区分ですけれども,こちらにつきましてはおっしゃるとおりでございまして,基本的に病気ということで学校に来れていない子はこちらに入っている。不登校ということの場合にはこちら,感染回避ということで,慎重な御判断ということで学校に来なかったというのがそれぞれということでございます。ただ,コロナということでございますので,もちろんコロナが不登校に影響した部分もあるというふうには見てございますが,カウント上はこの不登校に入っている部分もあるということでございますが,すみません,繰り返しになりますけれども,それぞれおっしゃるとおりの区分になっているということでございます。
以上でございます。
【今村委員】 すいません,経済ってどういう意味でしょうか。経済的理由というのは,義務教育は無料で学校に行ける前提ですよね。
【荒瀬分科会長】 今村委員,大変申し訳ありません。時間が超過しておりまして,この件,江口課長に必ずお答えいただくようにということをお願いしておきますので,今,調べていらっしゃいますので,すみません,後ほどよろしくお願いして……,いいですか。
【江口児童生徒課長】 後ほど御回答します。
【荒瀬分科会長】 後ほどお願いいたします。
進行がまずくて,また時間が延びてしまいました。大変失礼いたしました。延びているにもかかわらず,ちょっと私も申し上げたいことがございまして,先ほど大字委員から幼保小の連携・接続の重要性という御指摘がございました。これは今までも当然そうだということが言われていたと私は思うんですけれども,しかしながら,実際はどうだったかというと,それが十分に行われていなかったということが非常によく分かってまいりました。こんなふうにして,私たちの国の教育が,特に学校教育が,何ができてきていて,何かできていないのか。子供たちのこれからにとって必要な教育は一体どうすればいいのか。それを丁寧に進めるにはどういう方法があるのか。それを進めていく上では,どんなことに気をつけなければいけないのか。そういったことを,今後また皆さんと一緒に議論していきたいと思います。
名称変更のお話,これは何人かの委員の方からもございましたが,例えばある高校では生徒指導部というのをやめて,学校生活部というふうに名前を変えたというようなところもあります。ただ,本当に大事なのは,生徒指導部であれ,生徒支援部であれ,学校生活部であれ,その中身がどうかということではないかと思います。その中身を私たちがしっかりと考えていって共有を図って,具体に子供たちにとって日々が良い時間になるということを提供していくような形の議論を今後もまた進めていきたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
最後に,戸ヶ﨑委員から,共にルールをつくっていくという,生徒とともにやっていくということ,子供たちとともにやっていくということの重要性をおっしゃいました。最後の御発言の神野委員のデジタル・シティズンシップ教育が大事だということですけど,これも大人が子供たちにこれ大事だからこれやれ,あれやれではなくて,子供たちとともにデジタル・シティズンとして生きていくということについて考えて,具体化を図っていくということが本当に重要ではないかと思った次第です。
最後に余計なことを申しました。時間をさらに延長してしまって申し訳ございません。本日はこの辺りにしたいと思います。
では最後に,次回の予定につきまして,白井教育制度改革室長からお願いいたします。
【白井教育制度改革室長】 次回の分科会の日時につきましては,また,追って事務局から連絡をさせていただきます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは,本日はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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