民間のフリースクールなどで学ぶ不登校の子どもたちの学習の成果を、在籍校の成績に反映しようとする試みが長野県内の公立中学校で出てきた。専門家らは「生徒の自己肯定感を高め、社会的な自立につながる」と評価する。
【写真】生徒の学習計画などについてフリースクールの講師らと打ち合わせをする広陵中の教諭ら=塩尻市(広陵中学校提供)
松本市中心街のビルで、不登校の生徒らが通うフリースクール「プリマ」。塩尻市立広陵中学3年の男子生徒は、小学6年から平日は毎日、プリマに通っている。学校に行きづらくなったのは、小学1年の3学期のころだった。集団生活になじめない、と感じたのがきっかけだったという。
プリマは進学塾も経営しており、フリースクールでも学力の向上を重視している。男子生徒は大学進学を視野に、公立高校への進学を希望。外国人講師や教員免許を持つ講師らの個別指導を受けるが、中学2年までは学校の成績に反映されなかった。
■学力に問題ないのに受験失敗のケース度々
「成績という形で、がんばっている生徒を認めてあげたい気持ちはずっと持っていた」。広陵中の小松亨校長は言う。
同校は昨年、同市教育委員会と相談し、専門家らの助言などを参考に、学校独自で不登校の生徒に関わる学習評価のガイドラインを作った。今春から本格的に運用を始め、男子生徒の主要教科について、プリマでの学習成果を学校の成績として認めている。
ガイドラインは、学校からの課題への取り組みや自習ノートの記述を評価材料にできる、などと明記。プリマの講師らと学習計画について事前に話し合い、授業で使うプリントを解いたり、定期テストを受けたりしてもらう。実験が必須の理科では、男子生徒に実験の映像を見せるなどしてサポートしたという。
在籍校の成績が付かないと高校受験の内申点が得られず、「受験に不利になるのでは」との不安を感じる生徒も多い。プリマの滝沢昌登校長も「(プリマで)これまでにも学力に問題はないと思っていた生徒が、受験に失敗するケースが度々あった」としたうえで、「生徒の努力が認められ、自信や自立につながる。受験の精神的な負担もなくなる」と話す。
男子生徒は「励みになるし、勉強に専念できる。高校で学校生活を送り直し、部活動にも打ち込んでみたい」。プリマでは中信地方の別の中学に在籍する生徒も、今春から成績に反映されるようになったという。
朝日新聞社
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