- 株式会社日建設計
- 2021年12月01日
- 12:20
日本有数の寒暖差の激しい地域でコロナ禍の影響を受けながらも、生徒が楽しみながら省エネ実践する“瑞浪北モデル”で高いZEB成果を達成
岐阜県瑞浪市と株式会社日建設計(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大松敦)は、同社が設計し文部科学省のスーパーエコスクール実証事業に認証されている瑞浪市立瑞浪北中学校が、初年の101% Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル、以下、ZEB)(※)達成に引き続き、2年目である2020年9月から2021年8月までの1年間で、97%のエネルギー消費量削減を達成したことを発表します。
※ZEB(読み方:ゼブ):
快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと(環境省HPより)
スーパーエコスクール実証事業は、公立学校施設で、省エネ、創エネ、蓄エネ等の技術を用いて、年間のエネルギー消費量を実質上ゼロとするゼロエネルギー化を推進するための実証事業で、全国7校で実施されています(2021年11月現在)。2019年4月に開校した瑞浪北中学校は、初年(2019年9月から2020年8月)に7校で初めてZEBを達成し、コロナ禍となった2年目もZEBに向けて高い成果をあげました。
■97%エネルギー消費量削減とコロナ禍の影響(実測期間:2020年9月~2021年8月)
一般的な中学校のエネルギー消費量364MJ/㎡に対し、様々な省エネルギー手法の効果により44%削減、また創エネルギーである太陽光発電の発電量を学校内で消費することにより71%削減しています。学校内で消費しきれず余った電力は、電力会社に売電することにより学校外のオフサイトで使われ、地域の省エネルギーに寄与しています。この効果も加味して、97%の省エネ実績を達成することができました。(右図)
瑞浪市は、夏は暑く冬は寒い寒暖差の激しい気候ですが、2020年12月~2021年1月の冬の時期に、新型コロナウィルス感染対策のため窓を開放してエアコンを運転させており、前年同時期に比べて買電量が多かったことが、100%達成に届かなかった要因と考えていますが、仮にコロナ禍でなかったとしても、一般的に97%は十分な達成率であると言えます。
■ZEB達成に向けた設計上のポイント
<生徒の自発的な省エネルギー行動を促す設計>
同中学校は、生徒による省エネ活動分も込みでゼロエネルギーを達成する想定で設計されています。各教室にある「エコモニター」は、学校全体のリアルタイムの環境条件、教室内の温湿度や二酸化炭素濃度などを見て、操作をすることができます。
例えば、教室とクールトレンチ内の温度を見比べて、自身の教室内に空気を取り入れるかどうかを生徒自身が判断するという仕組みです。
ほかの教室と比較した「省エネランキング」も表示されるため、生徒の省エネに対するモチベーション向上にもつながっています。
<瑞浪らしい校舎の設計そのものが、自然な省エネに>
同中学校は、校舎の設計そのもので、空気の温度や流れを調節できるよう作られています。冷暖房をなるべく使わなくても快適に過ごせるよう、周囲の地形を考慮しながら校舎の配置パターンと風の流れをシミュレーションし、最適な形状で校舎を配置しています。取り込まれた風は、クールトレンチ(校舎下の地下溝)を通り、夏季には冷えた空気が各教室まで循環する仕組みになっています。
学校ならではの画期的な換気アイテムが、教室にある「クールウォームロッカー」です。教室の後ろ側の壁が、ロッカーと自然換気、空調設備が一体化したユニットになっています。ロッカーの上部にある涼風温風吹き出しスリットのほか、左右にはクールトレンチからの冷えた空気を循環させるファンと、教室の壁で太陽集熱した温風を吹き出すファンがあり、効率の高い換気アイテムが自然なデザインにより教室に溶け込んでいます。
その他、クールトレンチ内の空気の温度や流れが見えるガラス床、断熱材の効果を手で触れて実感できる壁、ライトシェルフからの自然光の反射で太陽高度が分かる定規のような理科室の天井サインなど、校舎全体が環境学習の教材になっています。
階段ホールを南北に長く連続させる断面形状に設計し、最上部で排気する仕組みをつくることで、暖かい空気を上昇させる重力換気を行い、校舎内の自然換気を促しています。これは、焼物のまちである瑞浪市の「登り窯」の仕組みを参考にしたアイデアです。
できるだけ照明を使わずに自然採光で明るさを確保できることも設計上のポイントです。全ての学年の教室を最も眺望の良い最上階とし、北から南に下がる木造の勾配屋根を架けています。この形状により自然光だけで学校としての標準的な机上面照度の500lxを確保できています。
さらに、教室の腰壁や体育館の屋根を鋼板製の「太陽集熱パネル」とし、冬季に太陽熱で空気をあたためて暖房に利用しています。
設計段階から、先生と設計者が共に環境学習についてのワークショップを行っていたほか、開校後は日建設計の設計者が「学校の使い方」について出前授業を定期的に行うなど、ZEBの継続を支援しています。
■“五感で育む環境体験”を通して、生徒の環境への意識が向上
アンケート調査によると、初年は8割以上、学校運営がコロナ禍の対応に追われた本年も、半数以上の生徒がエコモニターにより、「環境のことを意識するようになった」と回答。また、自由回答の中では、エコモニターで情報取得し、さらに、換気などの行動に絡めて考えることのできる生徒もいることが分かりました。自分で考えて環境条件を操作する“五感で育む環境体験”を通して、次世代の環境への意識変容にもつながっています。
<環境への意識について>
スーパーエコスクール実証事業は、脱炭素社会の実現を推進させる大きな取り組みです。瑞浪市および日建設計は、瑞浪北中学校のZEB達成を通じて、ここで学習した子どもたちが、将来、日本全国、さらには、世界中で活躍し、地球環境配慮の意識を広げる担い手になれるよう、教育、建築設計の両面から支援し、社会の課題解決や社会環境向上に貢献していきます。
■瑞浪北中学校について
瑞浪北中学校は、瑞浪市内公立中学校の統合再編に伴って誕生した中学校で、2019年4月に新築校としては全国で初めて開校した「スーパーエコスクール」です。スーパーエコスクールとは、省エネを徹底して消費電力を抑え、創エネ・蓄エネの技術やさまざまな工夫でエネルギー消費を実質ゼロにする学校のことです。 全国的に公立学校施設の老朽化が進む中、環境負荷を減らし、環境教育の推進や環境保全への取り組みが求められることから、文部科学省は「スーパーエコスクール実証事業」を実施、同校はこの実証事業で認証された7校目となります。
■日建設計について
日建設計は、建築の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を行うプロフェッショナル・サービス・ファームです。「価値ある仕事によって社会に貢献する」という基本理念を尊重し、1900年の創業以来、120年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、よりよい社会環境づくりに取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東でさまざまなプロジェクトに携わり、近年はインド、ロシア、欧州にも展開しています。URL:https://www.nikken.jp/ja/
- 本件に関するお問合わせ先
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株式会社日建設計 広報室
Tel. 03-5226-3030(代表)
e-mail:webmaster@nikken.jp日建設計広報事務局(株式会社プラップジャパン):八重樫、加納、西
Tel. 03-4580-9107
FAX. 03-4580-9133
E-Mail:nikken-pr@prap.co.jp
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