教員に1人1台の指導者用端末 補正予算案を閣議決定 – 教育新聞

花のつくりとはたらき

 政府は11月26日夕、臨時閣議を開き、経済対策を盛り込んだ一般会計総額35兆9895億円の今年度補正予算案を閣議決定した。文科省関連は総額1兆5487億円。学校関連では、GIGAスクール構想をさらに推し進めるために215億円を計上し、都道府県単位で市町村教委や学校現場への技術的なサポートを担うGIGAスクール運営支援センターの整備を年度内に前倒しするほか、小中学校や特別支援学校などで授業を受け持つ全ての教員に1人1台の指導者用端末を整備する。新型コロナウイルス感染症対策の保健衛生用品の購入や消毒業務の外部委託、特別支援学校のスクールバスに対する感染リスクの低減などに331億円を積んだ。岸田政権が打ち出した看護や介護、保育の現場で働く人たちの待遇改善に合わせた幼稚園教諭の給与引き上げや、コロナ禍で厳しい状況にある大学生らに1人10万円を支給する緊急給付金も計上した。

 今回の補正予算案について、政府・与党は12月6日にも召集される臨時国会で審議を行い、2週間程度での成立を目指している。来年度予算概算要求に計上されている施策のうち、緊急性の高いものが一部前倒しで盛り込まれており、予算成立後は来年度予算と合わせて切れ目のない予算執行を見込んでいる。

 GIGAスクール運営支援センターの整備も、そうした前倒し施策の一つで、来年度予算概算要求に新規要求として64億円計上したうち、55億円分を今年度補正予算案に前倒しした。同センターの運営は都道府県が民間事業者に業務委託する形を想定しており、国が費用の2分の1を補助する。これまで学校現場には、日常的な教職員の業務支援、学習支援などを行うICT支援員が配置されてきたが、同センターではネットワークアセスメントやヘルプデスクの開設など、市町村教委や学校からの依頼に応じて、より専門性の高い技術的支援をワンストップで安定的に提供することを目指す。

 文科省では「1人1台端末が整備され、実際に授業での活用が始まってきたが、校内ネットワークの速度が遅かったり、インターネットへの同時接続がスムーズに行かなかったりして困っている学校現場の声が聞こえてきている。そうしたネットワークの技術的な問題に対し、市町村教委や各学校では対応できる人材が十分に確保できない、との訴えもある。これらの悩みについて、いつでもサポートを受けられる窓口を都道府県にそれぞれ確保するのが狙い。都道府県が少しでも早く体制作りができるように、補正予算に前倒しで計上した。今後はネットワークの定期的な健康診断のような、全国一斉点検や応急対応にも役立てていきたい」(初等中等教育局修学支援・教材課)と話している。

 また、指導者用端末やオンライン教育推進機器の整備による授業環境の高度化を図るとして82億円を計上した。これまで、子供たちを指導する教員の端末については、普通教室の数に合わせて予算を確保してきたが、地方財政措置として自治体に交付したため、整備するかどうかは自治体任せだった。このため学校によっては「子供たちには1人1台端末が整備されたのに、教員には必要な端末がない」という状況が起きていた。今回の補正予算では、クラス担任の教員だけではなく、授業を受け持つ教員全員を対象に指導者用の1人1台端末を整備。必要な費用の2分の1について、予算の使途を限定した補助金のかたちで国が負担する。ただ、学校管理職が使う端末は、国費補助の対象にはならない。

 オンライン教育推進機器の整備では、同時双方向のオンライン授業に必要な高機能カメラやマイク、大型モニターなどに必要な費用を補助する。

 デジタル教科書については、2024年度の本格導入に向け、今年度に小学校5・6年生と中学生を対象に、4割の小中学校で少なくとも1教科で活用する試みが始まっており、来年度にはこの試みを全ての小中学校に広げることを目指している。今回の補正予算では35億円を計上し、紙とデジタルの役割分担の在り方を検証することを念頭に、さらに踏み込んだスキームを盛り込んだ。

 具体的には、教科書発行者に業務委託し、3つのメニューで各教科の実証を行う。それぞれのメニューは、①外国語(英語)で実施=朗読音声を用いた外国語によるコミュニケーションを図る②算数・数学、理科のうち、いずれか1教科で実施=動画や図形等のデジタル教科書と一体的な教材の活用により、基礎的・基本的な概念や性質の理解、見通しをもって観察、実験を行う③音楽、図画工作・美術、技術、家庭、体育・保健体育のうち、いずれか1教科で実施=各教科における見方・考え方を働かせ、よりよい生活の実現に向けて工夫する--となっている。

 学校などの新型コロナウイルス感染症対策では331億円を積んだ。内訳は、保健衛生用品の購入や消毒業務の外部委託など学校の支援事業に254億円、特別支援学校のスクールバスに対する感染リスクを減らすためスクールバスの増便などの支援に51億円などを計上した。

 幼稚園に対しては、保健衛生用品の購入費として24億円、オンラインによる教員研修や保育参観、保育動画の配信、アプリを利用した家庭との連絡など幼稚園のICT環境整備支援に13億円を盛り込んだ。

 さらに、幼稚園の教育体制支援として36億円を計上。岸田政権が掲げる分配戦略の柱として、看護や介護、保育で働く人たちの待遇改善を打ち出したことを受け、幼稚園教諭の給与を月額9000円程度引き上げる。文科省によると、「幼稚園を運営する法人にもよるが、2月か3月に引き上げられることを想定している」(高等教育局私学助成課)と説明している。文科省の補正予算に計上されたのは、私立幼稚園への補助金と国立幼稚園の経費分で、公立幼稚園について各自治体が対応する。幼稚園関連の総額は73億円に積み上がった。

 コロナ禍でアルバイトなどができなくなり、困窮している大学生らへの支援では、学びを継続するための緊急給付金として675億円を計上。約67万人を対象に、1人当たり10万を支給する。支給対象となるのは、高等教育の修学支援新制度の利用者約33万人と、自宅外で生活していたり、家庭の収入減少などで追加の仕送りが期待できなかったりしていて、大学が推薦した学生約33万人。コロナ禍を理由とした大学・大学院の中退者は今年4月から8月までに701人(昨年の同期間は385人)、休学者は4418人(同じく2677人)と、コロナ禍によって大学や大学院での就学を続けられなくなっている学生が増えている。文科省では、緊急給付金によって、経済的困窮を理由とした退学者や休学者の減少を図りたい、としている。

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