突然ですが皆さん、いたずらは好きですか?私は大好きです(笑)


いたずら好きな皆さんにピッタリの実験教室「いたずらインクをつくろう」を開催しました。

どんな実験をしたのか、順番に説明していきます。


まず、写真のような青いインクを作ります。

これを白いハンカチなどにかけちゃいます。インクがかかった部分は青くなってしまいますので、これは大変!と思いきや・・・、しばらくすると色が消えてしまいます。相手をびっくりさせるいたずら大成功、というわけです。

でも、なぜ色が消えてしまったのでしょうか。

今回は「pH指示薬」と「変色域」についてのお話です。

小学校の理科の授業で使ったリトマス紙を覚えていますか?


液体の性質を調べるもので、青色と赤色の2種類があります。

リトマス紙

液体をつけた青色リトマス紙が赤色に変わると、その液体は酸性、赤色リトマス紙が青色に変わるとアルカリ性、どちらも変わらないと中性ということになります。


下の写真をごらんください。


レモン汁、アンモニア水をつけたときのリトマス紙の色の変化の様子です。

このリトマス紙のように、液体の性質(酸性かアルカリ性か)で色が変わる特徴をもつものを「指示薬」といいます。他にはBTB溶液やフェノールフタレイン溶液などがあります。2つとも有名な指示薬ですので、中学校や高校の科学実験で扱うことがあるかもしれません。薬品でなくても、ムラサキキャベツやブルーベリーなどに含まれるアントシアニンという色素にも指示薬指示薬の働きがあります。

指示薬には、それぞれ「変色域」というものがあります。変色域とは、指示薬の色が変化する範囲のことで、指示薬によって範囲が異なります。例えば、リトマス紙の変色域は次の図の通りです。

目盛りに書かれた「pH」は、酸性やアルカリ性の強さを数値で表したもので、0~14までの範囲で示されます。pHが7より小さいほど酸性が強く、7より大きくなるほどアルカリ性が強くなります。7は中性です。


リトマス紙にレモン汁をつけたとします。レモン汁のpHはおよそ2です。


先ほどの図を見ると、赤色リトマス紙のpH2の所は赤、青色リトマス紙のpH2の所も赤です。つまり、青色リトマス紙が赤に変わったことから、レモン汁は酸性であることが分かります。

他の指示薬のBTB溶液やフェノールフタレイン溶液の変色域も見てみましょう。

BTB溶液は酸性だと黄色、中性では緑色、アルカリ性では青色と3色に変化します。一方、フェノールフタレイン溶液はアルカリ性の時だけピンク色になります。これらの指示薬にpH2のレモン汁を入れてみます。


写真をごらんください。

BTB溶液に、レモン汁を入れると黄色く変化します

フェノールフタレイン溶液に、レモン汁を入れても色は変わりません。

このように、指示薬によって変色域や示す色も様々です。

ここまで丁寧に読んでくださった皆さんは、もうお気づきかと思いますが、「いたずらインクをつくろう」で行った実験でも指示薬を使いました。使ったのは「チモールフタレイン」という指示薬です。チモールフタレインの変色域を見てみましょう。

pH9以上の強いアルカリ性だと青色、中性から酸性にかけては無色になることが分かります。いたずらインクには水酸化ナトリウムを少し混ぜ、pHは9に合わせました。つまりアルカリ性のインクです。

いたずらインクの青い色が消えた理由、分かりましたか?

ハンカチに「いたずらインク」をかけると、空気に触れます。空気の中には二酸化炭素が含まれており、二酸化炭素は酸性です。つまり、空気に触れたことにより、いたずらインクのpHが9から8、7・・へと変化していき、無色透明になります。

これが「いたずらインク」のトリックです。

このような指示薬の性質を利用したものが身近にもあります。例えば、スティックのりです。スティックのりには塗ったところが分かりやすいように青くなるものがあります。これもしばらくすると色が消えていきます。仕組みは今回の「いたずらインク」と全く同じです。