正月恒例の箱根駅伝に参加する資格獲得のための予選会が10月23日に行われた。
「前年大会で10位以内に入るとシード権が得られますが、それ以外の大学は予選会突破が条件。20キロコースを各校12名が一斉に走り、上位10チームが本戦に進みます」(スポーツ紙記者)
【写真】“31歳の4年生”、中学生の教え子と並んだ“陸上部顧問時代”の一枚
今年の予選会で最も注目されたのは8位通過で駅伝初出場校となった駿河台大学だろう。
「特に話題になったのは、4年生の今井隆生選手。彼は今年31歳で、6年前まで埼玉の中学校教師でした。駅伝チームには彼の教え子も在籍しています」(同・スポーツ紙記者)
現役教師ランナーは前代未聞
箱根駅伝の出場資格に年齢制限はないようで、
「ランナー自身や所属している学校が、出場停止などの処分を受けてなく、関東学生陸上競技連盟に加盟している大学に在籍している学生であれば誰でも参加資格があります。最年長の記録では’39年に33歳で走った選手がいますが、現役教師というのは前代未聞ですね」(同・スポーツ紙記者)
異色の経歴だが、いったい何者なのか。
「彼は高校時代に箱根駅伝を目指していましたが、途中で挫折してトライアスロンに転向。日本体育大学卒業後は実業団チームに所属する傍ら’15年から埼玉県の越生中学校の保健体育の臨時教員となりました」(越生中学校の教頭)
ずっとスポーツ漬けだった今井にとって、体育教師は天職だったようで――。
「朝6時から学校のプールで泳いで体力づくり。そのあとは顧問だった陸上部の朝練に参加して、夕方まで体育の授業。夜も部活と、やっぱり運動中心の生活を送っていましたね。長距離走の授業では、必ず生徒たちと一緒に走るため、1日に合計20km近くも走っていたこともあります。トライアスロンで鍛えた底知らずのスタミナはまさに鉄人でしたね」(同僚の教師)
教員採用試験に合格し’17年からは別の中学校で正規の教員となるが、’20年に大胆な決断をする。
「突然 “休業制度”を活用して再び大学に行きました。この制度は先生の籍を置いたまま修学できるのですが、給与などは発生しません。彼はすでに結婚して子どももいましたからとても驚きましたよ」(前出・中学校の教頭)
この決心には教師としての挫折があった。
「不登校の生徒の力になれなかったことを悔やんだ彼は、大学で心理学を学んで、より生徒に寄り添える先生になろうとしたそうです」(前出・スポーツ紙記者)
再勉強への熱意とともに、かつてあきらめた駅伝への思いも燃え上がらせた今井は、駅伝部に入部することも決心。しかし、自身が駅伝選手として走ることに最後まで迷いはあったようだ。前出の同僚教師はこう振り返る。
「大学編入前に“勉強と駅伝の両立できるだろうか”と相談されました。 さらには“自分が生徒と一緒に走っていいのか” “もしも、箱根の歴史で現役教師が走ったら伝統に傷がつかないだろうか”と不安を打ち明けてくれました。そんな葛藤を乗り越えて今回結果を残せたのですから、嬉しい限りです」
来春、再び教壇に立つ予定の今井。彼が走りを通して得た経験は、教育の現場で生かされるに違いない。
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