覚えることがたくさんな日本史の勉強。四苦八苦している受験生も多いと思います。スタディサプリで社会科講師を務める伊藤賀一さんと、早稲田大学の現役学生で「早慶勉強法」チャンネルを運営するYouTuberのおくらさんが9月下旬に開催されたオンラインセミナー(講談社主催)に登壇。日本史の勉強法や効率の良い記憶法、講談社の学習まんが「日本の歴史」を使った入試対策法など、難関私大入試対策のコツを伝授してくれました。(文・高槻官汰 写真・講談社提供)
日本史は流れで覚える
―おくらさんが受験生だったときの日本史勉強法を教えてください。
おくら 暗記するために「全てを書かない」ということを実践していました。まとめが書いてある参考書を見たり、赤シートを使って隠しながら確認したりする方が効率的だと思っていましたね。
おくらさん
―どんな点を意識していましたか?
おくら 大きく2つのことを意識して日本史を勉強していました。
1つ目は「流れで覚えること」です。単に歴史上の出来事を羅列するだけでなく、出来事と出来事の間にある因果関係を理解することも、流れで覚える上では大切です。
2つ目は、「時代を超えて、似ている事項や流れをセットで覚えてしまう」ということです。この方法を実践すると、独立して覚えることが減らせます。「Aと来ればB」というように、独立して覚えたこと同士を結びつけ、頭の中で連想ゲームができる状態を目指していました。
覚えたこと同士を結び付けて理解
―日本史は単純な暗記になりがちですが、コツがあるのですね。
おくら 独立して覚えるのが「点」の理解だとすると、覚えたこと同士を結びつけることで「点」の理解が「線」の理解に変わっていきます。日本史の勉強というのは「点」を「線」に変える作業だと考えています。
伊藤 大変分かりやすいお話ですね。
例えば、講談社の最寄り駅は東京メトロ有楽町線の護国寺駅ですが、護国寺駅の他にも有楽町線には多くの駅があります。その一つ一つを「江戸川橋」とか「飯田橋」というように切り離して覚えては、それぞれの関係性が見えてきません。単なる「点」の理解に留まっているのです。
伊藤賀一さん
しかし、一つ一つの駅名を結びつけていくことで、初めて「有楽町線の駅」というひとくくりのグループになる。これが「点」の理解から「線」の理解への転換なのです。
おくら 分かりやすい例えでまとめていただき、ありがとうございます。
講談社さんにてまんが「日本の歴史」のウェビナーにゲストとして出演させていただきました!またまた伊藤先生とご一緒させていただけて嬉しいです!ありがとうございます😊
著書『笑う日本史』もいただきました!楽しみに読ませていただきます🙇♀️✨
参加くださった方ありがとうございました! pic.twitter.com/JPnR76ILoE
— おくら@受験生応援するYouTuber (@okura_channel) September 29, 2021
あらゆる手段でアウトプットを
―日本史の勉強で大切なことってなんでしょうか?
伊藤 やったつもりでも、知識が抜けてしまうことがあります。だからこそ、問題集を解く・模試を受ける・定期テストや大学入試の過去問にチャレンジするなど、あらゆる手段を使ってアウトプットをしていくことが大切です。暗記は、どの科目を勉強するにしても大切です。
―暗記はつらいと考える高校生は多いです。
伊藤 中国では、今も暗記重視の入試が行われ「受験戦争」と称されています。日本の共通テストより受験率は高いです。もし暗記重視の教育がマイナスならば、中国のGDPの伸びや国力の発展はどう説明すれば良いのでしょう。
受験生の皆さんには、思い込みで「暗記は嫌い」とか「暗記をするのは意味がない」などと割り切らないでほしいですね。
おくら 暗記は、一番点数につながる可能性のある勉強法です。日本史であれば、暗記していたことを試験の場で思い出せたら点数に直結しますからね。
まんがを使えば暗記しやすい
―まんが「日本の歴史」は、入試対策にどう役立つのでしょうか?
おくら まんが「日本の歴史」を読んで初めて気づいたのですが、歴史上の出来事が起こった背景には、当時の人の感情が影響していることが珍しくありません。
学習まんが「日本の歴史」(講談社)
地租改正を例に取ると、受験生は「地租が地価の何%になった」と暗記しがちだと思います。しかし、まんが「日本の歴史」を読むと、感情描写がしっかりしているため、単純に暗記するよりも内容が頭に入りやすいと感じました。
まんがだけでなく、表やコラムも充実しているため、歴史上の出来事同士のつながりも分かりやすくなっていると思います。
―伊藤先生がおすすめするまんがの活用法を教えてください。
伊藤 まんが「日本の歴史」は、授業だと時間の都合で少ししか言及できないような箇所も詳しく書かれていますし、細かな箇所に受験が意識されているのが見て取れます。
大学受験のみならず、高校受験、中学受験への対応力も高く、「守備範囲」が広いと感じています。例えば小学生の段階では、まんがだけを読み、高校受験対策として史料のページを読み出し、大学受験対策として欄外の豆知識を読むというふうにしても、効果が現れてくるのではないかと思います。
歴史を学ぶ意味は?「“人は間違う”を知り、他人に寛容になれる」
―近年「STEAM教育」(科学・技術・工学・数学・芸術を統合した教育)という言葉が、メディア等で取り上げられています。その中で、いま歴史を学ぶ意味を教えてください。
伊藤 歴史を学ぶことで、私たちは大きく3つのことを認識することができます。
まず、「現在の常識は絶対に正しいわけではない」ということ。現在当たり前とされていることは、江戸時代では当たり前でなかったかもしれません。「常識は絶対的なものではない」と知っているか否かが、社会人となった際に大きな違いをもたらすと私は考えます。
次に、人は必ず間違いを犯すということ。どんなに優秀な人物でも間違えることがあります。
最後に、人の人生は1回きりであるということ。織田信長のような有名人でも、一般の人でも、平等に人生は1回きりです。
上記3点が認識できていれば、「他人に寛容になることができる」のではないかと思います。この点に歴史を学ぶ意味があると感じています。
―学生さんの立場だとどう思いますか?
おくら 正直に言うと、受験生の頃は、受験に使うから歴史を学んでいたというのが本音です。しかし、今の伊藤先生のお話を聞いて「私も歴史を学んでいる中で無意識に幅広い視点を身につけていたのかな」と感じています。
技術やアートに触れるにしても、歴史の知識を持ち合わせていれば、感じ方や見方が変わってくるのではないかと思います。
志望校の各教科の配点を把握して
―日本史を勉強している受験生へアドバイスをお願いします。
伊藤 受験勉強をしていると、部活などの物理的な制約から、時間が足りなくなることがあります。だからこそ、効率良い方法で勉強しなければなりません。勉強時間を配分する中で一番大切なのは、「志望校の入試での各教科の配点をしっかりと把握しておくこと」です。
日本史という科目は、他の科目と比べて暗記要素が強いです。物事を順序よく覚えているか、整理できているかということが問われます。覚えるべき基本的な事項を覚えないと、歴史上の出来事の前後関係が把握できなくなります。
―「暗記」とどう向き合うかがカギになりそうですね。
日本史の中にも、政治史や文化史などの分野があり、受験する大学・学部によって重視されている分野は異なります。受験生には、その点を意識して勉強してほしいですね。
まんが「日本の歴史」は、おくらさんが注目されたように感情描写がしっかりとしていますし、それに加えて図版も豊富に掲載されています。ビジュアルを駆使して日本史を学び、文章で書いてある入試問題を見た際に、ビジュアルが思い浮かべばしめたものです。最終的には、暗記ではなく、試験本番で知識を思い出せることが重要です。
まんが「日本の歴史」15巻
―おくらさん、受験生たちに熱いメッセージを!
おくら 最後に、まんが「日本の歴史」の中で福沢諭吉が学びの必要性を説いている場面を紹介します。
「人はみな平等である。だが、実際はどうだろう」。なぜ実際には平等ではないのか、福沢諭吉はこう続けます。「それは学ぶか学ばないかだ」
大学受験で身につけた勉強法は、社会に出てからも応用可能です。受験が近い方も、そうでない方も、日々頑張っていきましょう!
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講談社 学習まんが「日本の歴史」
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