東大生が感動した「読みやすいのに、簡単に理科の知識が身につく本」ベスト3 – ニコニコニュース

東大生が感動した「読みやすいのに、簡単に理科の知識が身につく本」ベスト3-–-ニコニコニュース 花のつくりとはたらき

―[貧困東大生・布施川天馬]―

 現役東大生の布施川天馬と申します。学生生活の傍ら、ライターとして受験に関する情報発信などをしています。

◆実は身近なところにもたくさんある「理科」

 今年も、そろそろ紅葉が綺麗な季節となりました! 皆さんは紅葉狩りの名所といえば、どこを思い浮かべますか? 僕は東京からあまり出たことがないので、紅葉の名所というと高尾山や、昭和記念公園などが思い浮かびます。

 遠出はまだもう少し難しいかもしれませんが、それでも紅く染まった木々を見る楽しみは、やっぱりこの季節には欠かせません。例年通りの楽しみ方はできなくても、この季節を楽しみにしていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 ところで、皆さんは「どうして木々が紅葉するのか」をご存じでしょうか? 「そういうものだ」と思っていたかもしれませんが、夏には青々としていた葉が、いきなり赤や黄色になるなんて、よくよく考えると不思議です。信号機でもないのに、どうして色が変化するのでしょうか。

◆学校では習わなかった理科に関する知識

 葉が紅葉する理由は、「木々が冬支度をするから」です。葉っぱには「葉緑体」という、日光を受けてエネルギーを作るためのソーラーパネルのような役割をした部分があります。これが緑色をしているので、夏の葉っぱは緑に見えるのです。

 日差しが強い夏の間は、葉緑体がフル稼働しています。ですが、秋になって日差しが弱まってくると、木々は葉緑体をなくしていきます。冬に備えて、屋根に取り付けたソーラーパネルを取り外してしまうわけです。

 意外と知らなかったという方も、多いのではないでしょうか? こういった「身の回りの理科」って、一度調べてみると、「思ったより奥深くてビックリ!」なんてことも度々あります。

 今回は紅葉の季節に読みたい「身の回りの理科」を手軽に学べる3冊を紹介します!

◆○『身のまわりのありとあらゆるものを化学式で書いてみた』山口悟著

「いきなり一冊目から『化学式』なんて難しそうだな」と思われたかもしれません。ただ、この『身のまわりのありとあらゆるものを化学式で書いてみた』を読むうえでは、前提知識はそこまで必要ありません。H2OとかCO2とかいうとアレのこと、くらいの認識で大丈夫です。

 僕たちは、日常生活でも化学式を目にする機会は多いはずです。ニュースをつければ「地球温暖化のためにCO2削減を~」と言われていますし、コンビニで飲み物を買おうとすれば”H”と大きく書かれたパッケージ水素水が目に入るでしょう。

 とはいえ、水や二酸化炭素など以外の化学式は意外と目に入らないのではないでしょうか? 考える機会もあまりないかもしれません。

◆楽しく日常に結びつけながら化学式を学べる

 例えば、みなさんは塩と砂糖の化学式を知っていますか? それぞれ、塩は”NaCl”、砂糖(スクロース)は”C12H22O11”と表します。塩の化学式は中学校でも扱いますが、砂糖はあまり聞きませんよね。

 これらの化学式や、その構造を見ているだけでも「こんな形をしているのか!」とビックリさせられます。

 さらに、この本では化学式から発展してさまざまなことを学べます。たとえば、「塩と砂糖が水に溶けやすい理由」を知っているでしょうか? 両方とも、水に溶けやすい粉末ですが、溶けやすさの理由は塩と砂糖でそれぞれ違うんです。

 楽しく日常に結びつけながら化学式を学べます。この本を読んだら、台所やリビングにあるものが、違って見えるようになるかもしれませんよ。

◆○『眠れなくなるほどキモい生き物』大谷智通著、猫将軍

 皆さんは「寄生虫」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか? 僕は、昔見た映画で、人体に寄生する虫が出てくる作品が浮かびます。この作品がトラウマになっていて、いまでも寄生虫と聞くと足の裏あたりがゾワゾワするほどです。

 さて、世界広しと言えども、まさか現実に、人体へ寄生する虫は……いるんです。しかも、結構ヤバいやつがいます。

 たとえば、日本なら「日本住血吸虫」なんていう虫がいました。この100年ほどで、この虫による被害はなくなりましたが、もともとは「寄生されたらほぼ助からない」と恐れられたヤバすぎる寄生虫でした。

◆なぜか引き付けられてしまう「寄生虫」の世界

 この虫の一生は「ミヤイリガイ」という貝の中から始まります。この貝の中で卵が孵化し、育った幼虫は、やがて貝から出て水場に潜みます。この幼虫がいる水場に素足を突っ込むと、その瞬間! ……なんと、幼虫が皮膚を破って体内に侵入し、寄生するのです。

 寄生された人間は、まずは発熱から始まり、徐々に手足が細っていき、そして腹が異常なまでに膨れて死に至りました。腹の膨れ具合は1メートルほどにも及んだといいます。古くは武田信玄の家来もが感染したのではと言われるほどで、この地域では大変恐れられた病気でした。

 これが「日本住血吸虫」という虫の仕業だと判明し、それが「ミヤイリガイ」という貝の中で卵が孵化するということがわかったのが、いまから100年ほど昔のこと。そこから、地道にミヤイリガイの駆除を続け、ようやく1996年日本住血吸虫症の終息が宣言されたのです。

 この『眠れなくなるほどキモい生き物』には、このようなあらゆる寄生虫が、猫将軍氏による美麗かつ緻密なタッチの挿絵とともに紹介されています。まさに「眠れなくなる」こと請け合いです。それでも、この本を手に取るのは「寄生虫」たちに、不思議な魅力があるからではないでしょうか。

◆○『動物たちのすごいワザを物理で解く』マティン・ドラーニー、リズ・カローガー著 吉田三知世訳

 秋といえば、紅葉、読書、食欲、スポーツ以外にも、雨というイメージがあります。もうピークとなる時期は過ぎたかもしれませんが、台風が多い季節です。そもそも「秋雨」なんて言葉もあるように、秋といえば、やはり長い雨も珍しくありません。

 さて、やはりこちらもシーズン外れですが、蚊という虫がいます。夏に出てきて、耳元をプンプンと音を立てつつ飛び交っては血を盗んでいく、ニクい存在です。

 あの非常に小さくて、軽くて、ちっぽけな蚊。なぜあいつは、激しい雨が吹き付ける日にも、外を飛べるのでしょうか? どう考えても雨粒のほうが蚊よりも大きいというのに。

 普通に考えたら、風に吹き飛ばされ、雨粒にたたきつけられ、となるはずです。雨が降ったあと、道路に大量の小さい虫の死体が打ち付けられていても不思議ではありません。でも、そんな光景なんて、見たことありませんよね。

 しかし、実は雨の中を飛んでいる蚊は「雨粒に乗って一緒に落下している」のです。ひらひらと舞い落ちる落ち葉にキックを加えても、葉が壊れないのと原理は同じ。衝撃と同じ方向に移動しているので、ダメージを受けずに済んでいるのです。

◆必要なのは「実に面白い」と言える好奇心

 動物たちの暮らしには、こうした高度な物理的現象が作用しています。水に濡れた犬が水滴を振り払うために体を揺さぶるのも、アメンボが水上に浮いているのも、ネコがミルクをなめるときにピチャピチャと舌を細かく出し入れするのも、すべて物理的な視点から理由を説明できるのです。

 天才物理学者が主人公ドラマガリレオ』のような複雑な式計算は、この『動物たちのすごいワザを物理で解く』では必要とされません。「実に面白い」と言える好奇心だけあればいい。生き物好きなら、あなたにこそ間違いなくオススメできる作品です。

 今回、紹介した3冊は、どれも身のまわりの理科について手軽に学ぶことができる作品ばかりになります。

「計算はちょっと……」と思っていても大丈夫。難しい知識は抜きにして、まずは理科の一番面白いところから触れてみるのはいかがでしょうか。

【布施川天馬】


1997年
生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa

―[貧困東大生・布施川天馬]―

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