日本では早くから意識されていた空気感染。効果的な換気方法をお伝えします(写真:sasaki106 / PIXTA)
“凪”のような状態が続く、新型コロナ感染の拡大状況。だが、こういう時期だからこそ第6波に向けて、どんな対策が必要かしっかり検証する必要がある。
今回、取り上げたいのは幼稚園や小学校、中学校などでの換気対策。話を聞いたのは、換気の専門家の倉渕隆さんだ。東京理科大学工学部教授、空気調和・衛生工学会副会長であり、シックハウス症候群の問題では審議会の専門委員として法律の制定にも関わった人物だ。
日本は早い段階で空気感染の可能性を意識
まず、倉渕さんに新型コロナの感染対策について意見を聞くと、開口一番、「日本は早い段階から空気感染の可能性について言及し、換気の重要性を訴えてきた。それは評価できる」と言う。
「2020年の初めに新型コロナの感染が拡大し始めた頃、WHO(世界保健機関)やアメリカのCDC(疾病対策センター)は、主要な感染経路は接触と飛沫であり、空気感染に関しては否定していました。しかし、日本の、当時の専門家会議は『換気の悪い密閉空間を避ける』と明言していた。これには驚きました」
実はあまり知られていないが、時期をほぼ同じくして、アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)、ヨーロッパ暖房換気空調協会(REHVA)といった世界の換気の専門家組織は、新型コロナ対策として換気を重視し、そのためのガイダンスを出していた。日本の空気調和・衛生工学会も同様の情報提供を行っている。
換気や空調の専門家らは、この時点ですでに空気感染の恐れがあることから「換気が有効な感染対策になる」ことを呼びかけていたのだ。このとき、感染症を扱う保健医療分野と、換気を扱う空調分野でかなりの温度差があったという。
倉渕さんが問題視するのは、ここからだ。
「厚生労働省や文部科学省は施設内での換気の指標を設けましたが、この基準が一般の人たちに十分に周知されていない。とくに幼稚園や保育園、学校などの教育現場ではその傾向が強いように思います」
国が設けた換気の指標の1つは厚生労働省が昨年3月に公表したものだ。「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法として、「機械換気(空気調和設備、機械換気設備)を適切に行うこと」と、「窓開けを行うこと」を挙げている。
そのうえで、「室内の二酸化炭素濃度を1000ppm(100万分の1000)以下にする」という目安を設けている。ちなみに、二酸化炭素濃度の測定に関して、二酸化炭素そのものは人体の健康に直接的な影響をもたらすわけではないが、室内の「空気の質」を評価する際に広く用いられている方法だ。
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